ブラック企業の見分け方|有報の3つの数字で判定する

※本記事にはプロモーションを含みます。

求人票の「アットホームな職場」や面接官の態度で見分ける方法は、あちこちに書かれています。この記事では別のやり方を書きます。上場企業なら、有価証券報告書に載っている3つの数字を並べるだけで、その会社で何が起きているかがかなりの精度でわかります。 口コミを100件読むより速く、しかも書いた人の主観が入りません。

結論|見るのは「年収・勤続年数・従業員数」の3つの推移

1年分の数字を見ても意味がありません。3〜5年分を並べて、3つが同時にどう動いたかを見ます。組み合わせで意味が変わるからです。

年収 勤続年数 従業員数 読み取れること
↑ ↓ ↑ 採用拡大。中途・新卒の流入が平均を押し下げている。成長局面の典型
↑ ↓ → or ↓ 入れ替わりが起きている。人が抜けた分を採用で埋めている可能性。要警戒
↓ ↓ ↓ 縮小局面。事業の見直しや人員削減が進んでいる可能性
→ ↑ → 安定・年功型。動きが少なく、昇給ペースも緩やかなことが多い
↑ ↑ ↓ 採用を絞っている。退職者を補充しないと勤続年数と平均年齢が自然に伸びる。残った人の待遇は保たれるが、入口は狭い
↑ ↑ ↑ もっとも健全。ただし該当する会社は少ない

勤続年数が短くなっている=危ない、ではありません。 ここを取り違えると判断を誤ります。従業員数が増えていれば、それは人が辞めたのではなく入ってきたということです。

この記事では、この3つの数字の取り方と、数字だけでは見えない部分を埋める4つの手順を書きます。

年収・勤続年数・従業員数の推移の組み合わせから会社の状態を判定するマトリクス図

手順の全体像

  1. 有価証券報告書で3つの数字を5年分ならべる(上場企業のみ。所要5分)
  2. 7つの数値ラインに当てはめる(残業・離職率・有給取得率など)
  3. 口コミを「重なり」で読む(単体では根拠にしない)
  4. 求人票の法定記載事項で、書かれていないことを見る

上場していない会社は1が使えないため、2〜4で判断します。

手順1|有価証券報告書の3つの数字

どこに載っているか

有価証券報告書の「第1 企業の概況」→「従業員の状況」→「提出会社の状況」です。ここに、次の4つが1行で並んでいます。

  • 従業員数(名)
  • 平均年齢(歳)
  • 平均勤続年数(年)
  • 平均年間給与(円)

金額は「7,487,679円」のように1円単位で載っています。丸めた推定値ではありません。入手先は EDINET(金融庁の電子開示システム)か、企業のIRページの「有価証券報告書」です。 どちらも無料で、登録も要りません。

実際にやるとこう見える

当サイトで検証した実例を挙げます。ある素材メーカーの5期分です。

決算期 平均年間給与 平均勤続年数 従業員数
1期前 6,685,176円 18.7年 783名
2期前 6,726,126円 18.5年 787名
3期前 6,726,038円 18.0年 793名
4期前 7,188,300円 17.1年 825名
直近 7,487,679円 15.8年 867名

年収は4年で約80万円(12.0%)上がり、勤続年数は2.9年短くなり、従業員は84名増えました。勤続年数だけを見れば「人が辞めている」と読めますが、従業員数が増えているので違います。 中途採用の流入が平均を押し下げた形です。

この会社の詳しい検証は日東紡はやばい?平均年収748万円と勤続15.8年で読む実態にまとめています。

「有価証券報告書の年収はあてにならない」と言われる理由

よく指摘される点なので、先に整理します。あてにならないのではなく、何の数字かを知らずに使うとズレます。 注意点は4つです。

  1. 提出会社(単体)の数字であって、グループ全体ではない。 子会社の給与水準は含まれません。持株会社の場合、載っているのは本社機能の数十人だけということもあります
  2. 管理職を含む全社平均。 若手の実感とは当然ずれます。平均年齢とセットで見てください
  3. 賞与と基準外賃金(残業代など)を含む。 「平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含んでおります」という注記が付いているのが通常です。残業が多い会社ほど、この数字は高く出ます
  4. 正社員の数字。 契約社員・パートは通常含まれません

つまり有報の平均年収は「その会社の正社員の、管理職込みの、残業代込みの平均」です。そう理解して使えば、口コミの推定値よりはるかに正確です。

上場していない会社の場合

有価証券報告書は上場企業などが提出するものなので、非上場企業では使えません。その場合は次の手順2以降で判断します。ただし、親会社が上場していれば、そのグループの有報に子会社の従業員数がセグメント別に載っていることがあります。

手順2|7つの数値ライン

当サイトが企業を評価するときに機械的に警戒するラインを公開します。該当したら即アウトという意味ではありません。 ただし該当する場合、応募前に必ず確認すべき点として扱います。

  1. 月45時間を超える残業が常態化している(36協定の原則上限が月45時間。これを恒常的に超える働き方を「普通」と考えない)
  2. みなし残業40時間以上を含んだ給与表示(額面の見かけを膨らませる設計)
  3. 3年以内離職率が業界平均を大きく上回る
  4. 有給取得率が5割を下回る
  5. 副業禁止(収入源・成長機会・将来の選択肢を制限するため、当サイトは評価を下げます)
  6. 1年中ずっと同じ求人が出続けている(人が定着していない可能性のサイン)
  7. 複数の口コミサイトで、同じ悪評が長期間繰り返されている

3・4は、新卒採用を行う企業なら青少年雇用情報として開示が求められています。求人票や採用ページに載っていないときは、応募先に直接聞いて構いません。聞いて不機嫌になる会社なら、それ自体が情報です。

手順3|口コミは「重なり」で読む

口コミは必ず確認します。火のないところに煙は立ちません。 ただし口コミ1件を根拠に判断してはいけません。個人差・部署差・職種差・上司差・時期差があるからです。

次の条件が重なったときにだけ、重大な懸念として扱います。

  • 複数の口コミサイトで同じ指摘がある
  • 同じ内容の悪評が長期間にわたって投稿されている
  • 残業・離職・ハラスメント・評価制度などの指摘が繰り返されている
  • 公式情報と口コミの内容に大きな乖離がある
  • 客観的な数値とも悪評が一致している

とくに4つ目が効きます。有報では平均年収が高いのに、口コミでは「給与が低い」が並ぶ会社があります。そういうときは、管理職と一般社員の差が大きいか、残業代が平均を押し上げているかのどちらかであることが多いです。数字と口コミが食い違ったときこそ、その食い違いに情報があります。

手順4|求人票で「書かれていないこと」を見る

求人票は広告ではなく、法律で記載事項が決まっている書類です。募集時の労働条件明示は職業安定法5条の3第1項が義務づけており、明示すべき事項は同条4項の委任を受けた職業安定法施行規則4条の2第3項に列挙されています。

2024年4月からは、次の2つに「変更の範囲」を含めることが必要になりました。

  • 従事すべき業務の内容(業務内容の変更の範囲を含む/施行規則4条の2第3項1号)
  • 就業の場所(就業場所の変更の範囲を含む/同3号)

つまり、入社後にどこまで職種を変えられるか、どこまで転勤させられるかが、求人票に書いてあるはずということです。ここが曖昧な求人票、あるいは「変更の範囲:会社の定める場所」としか書いていない求人票は、実質的に無限定と読めます。

そのほか、同項が定める記載事項には契約期間・試用期間・始業終業時刻・所定労働時間を超える労働の有無・休憩・休日・賃金・社会保険の適用・受動喫煙防止措置などがあります。載っているべきものが載っていない求人票は、それ自体がサインです。

私が採用側で見ていたこと

採用する側として、延べ100人以上の中途採用面接を担当してきました。その立場から1つだけ書いておきます。

求人票と面接で説明される内容がずれる会社は、入社後もずれます。 これは意地悪ではなく、単に社内で情報が揃っていないだけのことが多い。求人票を作った人事と、現場の管理職と、面接に出てくる役員で言うことが違う会社は、入ってからも「聞いていた話と違う」が起き続けます。

だから面接では、同じ質問を違う人に聞いてください。 残業時間でも、評価の仕組みでも、配属先でもいい。答えが揃わない会社は、数字がどれだけ良くても慎重に考えたほうがいいというのが私の実感です。

実際に判定した企業の記事

当サイトでは、この手順で個別企業を検証しています。判定の実例として参考にしてください。

このディレクトリには、ほかにも多数の企業の検証記事があります。

よくある質問

ブラック企業かどうかは口コミサイトだけでわかりますか

わかりません。口コミには個人差・部署差・時期差があるため、単体では根拠になりません。複数のサイトで同じ指摘が長期間繰り返されており、かつ公開データとも一致する場合にのみ、重大な懸念として扱ってください。

有価証券報告書はどこで見られますか

金融庁のEDINET、または企業のIRページの「有価証券報告書」から誰でも無料で閲覧できます。会員登録は不要です。見るのは「第1 企業の概況」の「従業員の状況」です。

平均勤続年数が短い会社は避けるべきですか

一概には言えません。同じ期間に従業員数が増えているなら、採用拡大によって平均が下がっただけの可能性があります。従業員数の推移とセットで見てください。

非上場企業はどう調べればいいですか

有価証券報告書が使えないため、本記事の手順2〜4(数値ライン・口コミの重なり・求人票の記載事項)で判断します。新卒採用を行っている企業であれば、青少年雇用情報として離職率などの開示が求められています。

「みなし残業」があると危ないですか

みなし残業(固定残業代)そのものが違法なわけではありません。問題は時間数です。40時間以上が組み込まれている場合、その時間まで働く前提の設計になっている可能性があるため、実際の平均残業時間を確認してください。

まとめ

  • 上場企業なら、有価証券報告書の「平均年間給与・平均勤続年数・従業員数」を5年分ならべるのが最速
  • 3つの組み合わせで意味が変わる。勤続年数の短縮だけを見て「離職が多い」と決めない
  • 有報の平均年収は「単体・管理職込み・残業代込み・正社員のみ」の数字。そう理解して使えば正確
  • 7つの数値ラインに当てはめ、該当したら応募前の確認事項にする
  • 口コミは単体で根拠にせず、複数サイト・長期間・公開データとの一致が重なったときだけ重く見る
  • 求人票は法定記載事項のある書類。**業務内容と就業場所の「変更の範囲」**が書かれているかを見る

数字で判定できるようになると、口コミを読む時間が一気に減ります。まずは気になっている会社の有価証券報告書を1社分だけ開いてみてください。5分で終わります。

※本記事は一般的な情報であり、特定の企業を「ブラック企業」と判定するものではありません。労働条件や法令の適用について個別の判断が必要な場合は、労働基準監督署・都道府県労働局・社会保険労務士などの専門家・公的機関にご確認ください。
※法令の記述は2026年8月時点の内容です。

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参考・出典

企業の評判・年収の記事一覧

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