広済堂ホールディングスの年収は73人の平均|有報が開示する事業会社3社の実額と評判
※本記事にはプロモーションを含みます。
この記事の結論
- 年収:有報の654.8万円は持株会社73人の値。事業会社は555.5万〜583.2万円
- 正体:印刷が祖業、利益の柱は東京博善が担う火葬・葬祭事業
- 資本:2026年3月にR&Lホールディングスが21.78%の筆頭株主に
- 業績:2026年3月期は営業利益18.8%減、5つのうち2セグメントが赤字
広済堂ホールディングス(東証プライム・7868)を調べると、年収・株主構成・火葬料など、性格の異なる情報が同時に出てきます。この記事は、そのどれについても評価や断定を加えず、第62期(2026年3月期)有価証券報告書と会社の公表資料に書かれている事実だけを、転職検討者が読む順番に並べ直したものです。とくに中心に据えたのは年収です。この会社の有報に載る平均年間給与654.8万円は、グループ1,002人の平均ではなく、持株会社に所属する73人の平均です。そしてこの会社は珍しく、有報のなかで事業会社2社の平均年間給与まで開示しています。「有報の年収は嘘ではないが、あなたが入る会社の数字ではない」ということを、一次情報だけで確かめられる稀なケースとして読み進めてください。
広済堂ホールディングスの公式データ一覧(有価証券報告書ベース)
まず、本記事で扱う数値の出どころを一覧にします。すべて公式情報(第62期=2025年4月1日〜2026年3月31日の有価証券報告書、2026年6月26日提出)に記載のある実額です。平均年間給与の欄が3段になっている点が、この会社を読むうえでの出発点になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商号 | 株式会社広済堂ホールディングス(KOSAIDO Holdings Co., Ltd.) |
| 証券コード・市場 | 7868/東京証券取引所プライム市場(業種:その他製品)。1997年8月5日上場 |
| 本社 | 東京都港区芝浦一丁目2番3号 シーバンスS館13階 |
| 創業・設立 | 創業1949年1月(桜井謄写堂)/会社設立1964年6月24日/2021年10月1日に持株会社体制へ移行 |
| 代表者 | 代表取締役会長CEO 羅 怡文 氏/代表取締役社長COO 常盤 誠 氏 |
| 平均年間給与(提出会社) | 6,548千円(654.8万円)/前事業年度比6.1%減。対象は持株会社単体の従業員73人 |
| 平均年間給与(広済堂ネクスト) | 5,555千円(555.5万円)/前期比4.1%増。従業員362人 |
| 平均年間給与(東京博善) | 5,832千円(583.2万円)/前期比0.4%減。従業員269人 |
| 平均年齢 | 45.3歳(提出会社)/広済堂ネクスト44.9歳/東京博善45.1歳 |
| 平均勤続年数 | 11.8年(提出会社)/広済堂ネクスト11.8年/東京博善11.1年 |
| 従業員数 | 連結1,002人[臨時従業員 年間平均176人]/提出会社73人[同1人](2026年3月31日現在) |
| 売上高 | 連結362億28百万円(前期比5.4%減)/2026年3月期 |
| 営業利益 | 連結67億40百万円(前期比18.8%減)。経常利益65億71百万円、親会社株主に帰属する当期純利益47億38百万円 |
| 資本金・発行済株式 | 32億61百万円/164,340,045株(うち自己株式16,470,200株=10.02%) |
| 財政状態 | 総資産719億66百万円、純資産495億29百万円、自己資本比率68.5%(前期60.8%) |
| 出典 | 第62期 有価証券報告書(EDINET提出・2026年6月26日)/公式IR資料 |
離職率・職種別年収・年間休日といった項目は、有価証券報告書では開示されていないため、本記事では数値を示していません。ただし人的資本のKPIとして「主要4社依願離職率を11.0%から9.5%へ」という目標値が有報に記載されており、これは後述します。
広済堂ホールディングスとはどんな会社か|祖業は印刷、利益を稼ぐのは火葬・葬祭
この会社の正体を一文で言うと、グループ21社を統括する純粋持株会社であり、上場企業としてはほぼ唯一に近い「火葬場のオペレーター」を抱えるグループです。社名から想像される印刷会社という像と、実際の収益構造は一致しません。有価証券報告書によると、事業は次の5セグメントで構成されています。
- 葬祭公益:火葬事業。東京博善株式会社が運営する火葬炉での火葬業務が中心
- 葬祭収益:火葬場併設の総合斎場運営、葬儀サービス「東京博善のお葬式」、納骨堂
- 情報:株式会社広済堂ネクストによる出版・商業印刷、BPO、IT関連
- 人材:株式会社広済堂ビジネスサポート等による人材派遣、外国人材紹介「KosaidoGlobal」、ベトナム子会社3社
- 資産コンサルティング:株式会社広済堂ファイナンスの金融サービス、相続相談、不動産仲介
中核子会社の東京博善株式会社は1887年創業の火葬場事業者で、2020年3月に株式取得により広済堂の100%子会社となりました。有価証券報告書の記載によれば、同社は東京23区内で火葬場を併設した総合斎場6か所を運営し、23区内の火葬の約7割を担っています。斎場の個別名称(落合斎場・四ツ木斎場・堀ノ内斎場・お花茶屋会館など)での検索が持株会社名よりはるかに多いのも、生活者との接点が事業会社側にあるためです。
沿革|謄写堂から始まり、2021年に持株会社へ
1949年1月に東京都新宿区で「桜井謄写堂」として創業したのが起点です。1954年に廣済堂へ組織変更し、1999年10月に東西の廣済堂が合併して「株式会社廣済堂」となり、2021年10月1日の持株会社体制移行にあわせて現社名の「株式会社広済堂ホールディングス」に商号変更しました。転職会議やOpenWorkの企業ページに「旧:廣済堂」と併記されているのはこの経緯によるもので、口コミの投稿時期によって在籍していた会社の実体(持株会社なのか事業会社なのか)が異なる点は、口コミを読むうえで実務的に効いてきます。
ゴルフ場は2013年に譲渡済み|旧事業由来の情報に注意
広済堂という社名では、現在の事業とは異なる領域の語が検索候補として残っていることがあります。事実として押さえておきたいのは、ゴルフ場運営事業は2013年に譲渡済みであり、現在の5セグメントには含まれていないことです。同様に、直近の有価証券報告書に記載されている事業内容は上記5セグメントであり、それ以外の事業を現在も自社で運営しているという記載は見当たりませんでした。会社の現状を確認するときは、社名から連想される過去の姿ではなく、最新の有報のセグメント記載を起点にするのが確実です。
平均年収654.8万円は「持株会社73人」の数字|有報が開示する事業会社別の実額
この記事の核心です。結論から言うと、求人票や年収サイトで見る「広済堂ホールディングスの平均年収654.8万円」は、グループ1,002人のうち73人だけの平均です。そしてこの会社は、多くの持株会社が開示しない事業会社側の実額まで有報に載せているため、乖離を推定ではなく一次情報で確認できます。
①有報の654.8万円が指している範囲
有価証券報告書によると、第62期の提出会社(=株式会社広済堂ホールディングス単体)の平均年間給与は6,548千円で、前事業年度比6.1%減です。対象となる従業員数は73人[臨時従業員 年間平均1人]、平均年齢45.3歳、平均勤続年数11.8年。持株会社の従業員はグループ経営管理・経営企画・財務・人事・法務といったコーポレート機能が中心になるため、この数値はグループ本社に所属する管理系人材の平均という性格を持ちます。母数が73人と小さいため、数名の入退社や役職構成の変化でも平均は動きます。前期比6.1%減という振れ幅も、この母数の小ささを前提に読む必要があります。
②有報「最大人員会社の状況」に載る事業会社2社の実額
第62期有価証券報告書は、提出会社の数値に加えて「最大人員会社の状況」として事業会社の平均年間給与を開示しています。これは持株会社としては珍しい開示で、求職者にとっては最も実用的な数字です。
| 区分 | 従業員数 | 平均年間給与 | 前期比 | 平均年齢 | 平均勤続年数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 提出会社(広済堂ホールディングス=持株会社) | 73人 | 654.8万円 | 6.1%減 | 45.3歳 | 11.8年 |
| 株式会社広済堂ネクスト(情報セグメント) | 362人 | 555.5万円 | 4.1%増 | 44.9歳 | 11.8年 |
| 東京博善株式会社(葬祭セグメント) | 269人 | 583.2万円 | 0.4%減 | 45.1歳 | 11.1年 |
読み取れる事実は3点です。第一に、持株会社と事業会社の差は約70万〜100万円で、平均年齢はいずれも45歳前後とほぼ揃っています。つまり年齢構成の違いではなく、所属会社と職務の違いが差になっています。第二に、前期比の方向が逆です。持株会社が6.1%減、東京博善が0.4%減であるのに対し、広済堂ネクストは4.1%増と伸びています。第三に、平均勤続年数はいずれも11年台で、この規模の企業として短くはありません。入社後に長く在籍する人が一定数いる会社であることは、有報の数値から言えます。
③口コミベースの平均年収は504万円|グループ全体の体感に近い可能性
口コミ傾向として、OpenWorkの「広済堂ホールディングス」ページ(2026年8月閲覧時点)に掲載されている回答者ベースの平均年収は504万円です。正社員31人の回答にもとづき、レンジは250万円〜1,100万円と幅があります。有報の提出会社単体654.8万円より約150万円低い水準ですが、口コミサイトの企業ページは持株会社・事業会社の在籍者が混在して投稿する構造になっているため、推定情報としては、この504万円のほうがグループ全体の体感値に近い可能性があります。有報の事業会社実額(555.5万円・583.2万円)と口コミの504万円、そして持株会社単体の654.8万円という3つの数字は、どれも誤りではなく「誰の平均か」が違うだけです。

求人サイトに出ている「平均年収654万円」を基準に年収交渉して大丈夫でしょうか?
基準にすべきは、応募先の会社が持株会社なのか事業会社なのかです。求人が広済堂ネクストや東京博善など事業会社名義であれば、有報上の対応する数値は555.5万円または583.2万円です。オファー面談では、社名(雇用契約の相手方)・想定年収の内訳(基本給/賞与/固定残業代の有無)を労働条件通知書で確認するのが確実です。
男女賃金差異は法的義務がない範囲まで開示されている
有価証券報告書によると、男女の賃金差異は提出会社で全労働者72.7%(正規73.3%/パート・有期47.8%)、東京博善64.1%、広済堂ネクスト75.4%と会社別に開示されています。あわせて女性管理職比率は提出会社15.4%、東京博善22.7%、広済堂ネクスト7.0%、男性育児休業取得率は提出会社100%、東京博善50%、広済堂ネクスト100%と記載されています。数値の高低の評価は本記事では行いませんが、会社ごとに数値が大きく異なるという事実は、グループを一括りに語れないことを示しています。
従業員73人と連結1,002人|どのセグメントに人がいるのか
年収と同じく、人員も持株会社と連結で桁が違います。有価証券報告書によると、2026年3月31日現在の連結従業員数は1,002人[臨時従業員 年間平均176人]、提出会社は73人[同1人]です。セグメント別の内訳は次のとおりです。
| セグメント | 従業員数 | 臨時従業員(年間平均) |
|---|---|---|
| 葬祭公益+葬祭収益 | 368人 | 77人 |
| 情報 | 429人 | 26人 |
| 人材 | 127人 | 71人 |
| 資産コンサルティング | 5人 | 1人 |
| 全社(共通・持株会社分) | 73人 | 1人 |
主要事業会社の人員は、株式会社広済堂ネクスト362人[臨時24人]、東京博善株式会社269人[同67人]、株式会社横濱聖苑17人[同3人]です。人数だけを見ると最大の受け皿は情報セグメント(429人)で、次いで葬祭(368人)、人材(127人)と続きます。資産コンサルティングは5人と、事業セグメントとしては極端に小さい人員規模です。
連結従業員数は直近5期で減少に転じている
連結従業員数の推移は、第58期1,063人 → 第59期1,101人 → 第60期1,100人 → 第61期1,083人 → 第62期1,002人です。第62期は前期から81人減っています。有価証券報告書では、この期に求人媒体事業を株式会社中広へ譲渡したこと、新聞印刷事業からの撤退を進めたことなどが記載されており、事業ポートフォリオの入れ替えが人員数に反映された形です。同じ期に横濱聖苑(納骨堂)とセレモライフ(葬儀)を買収しているため、減っている領域と増やしている領域が同時に存在する点は、応募先セグメントを選ぶ際の判断材料になります。
2026年3月期の業績|売上の柱と利益の柱が別事業という構造
結論として、この会社の損益は「売上が最も大きいのは印刷(情報)、利益を稼いでいるのは葬祭」という二重構造になっています。有価証券報告書および決算資料によると、2026年3月期の連結売上高は362億28百万円(前期比5.4%減)、連結営業利益は67億40百万円(同18.8%減)、経常利益65億71百万円(同18.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益47億38百万円(同6.2%増)です。営業利益が2割近く減る一方で純利益が増えている点は、営業外・特別損益の影響を含むためで、本業の稼ぐ力は前期を下回っています。
| セグメント | 売上高(2026年3月期) | 前期比 | セグメント利益 | 前期比 |
|---|---|---|---|---|
| 情報 | 149億72百万円 | 1.2%増 | 6億55百万円 | 66.0%増 |
| 葬祭収益 | 104億90百万円 | 0.5%増 | 36億28百万円 | 15.4%減 |
| 葬祭公益 | 54億28百万円 | 9.3%減 | 11億91百万円 | 4.7%減 |
| 人材 | 50億48百万円 | 4.4%減 | 損失71百万円 | 前期も損失1億58百万円 |
| 資産コンサルティング | 2億88百万円 | 83.9%減 | 損失56百万円 | 前期は利益14億47百万円 |
表から分かる事実を整理します。売上では情報セグメントが149億72百万円と最大ですが、セグメント利益は6億55百万円です。これに対し葬祭2セグメントは売上合計159億18百万円に対して利益合計47億19百万円で、連結営業利益の大半をここで稼いでいます。多角化持株会社にありがちな構造ですが、この会社では差が特に大きく出ています。
2セグメントが赤字|要因も有報に記載がある
人材セグメントはセグメント損失71百万円(前期も損失1億58百万円)で2期連続の赤字、資産コンサルティングはセグメント損失56百万円で、前期の利益14億47百万円からの赤字転落です。有価証券報告書では、人材はハウスキーピング事業が投資段階にあること、資産コンサルティングは大型貸付案件の終了が影響したことが要因として説明されています。資産コンサルティングは売上が83.9%減と振れ幅が極端に大きく、案件依存の性格が数値に表れています。
2026年4月に通期純利益予想を下方修正、2027年3月期は増益計画
会社は2026年4月に、通期の純利益予想を53億8,000万円から47億4,000万円へ下方修正しています。一方で2027年3月期の会社予想は売上高394億円(8.8%増)、営業利益71億円(5.3%増)と増収増益計画です。直近は減益局面にあり、翌期に回復を見込む計画が置かれている——これが2026年8月時点で公表されている事実です。財政状態は総資産719億66百万円、純資産495億29百万円、自己資本比率68.5%(前期60.8%)、現金及び現金同等物224億23百万円(前期比91.8%増)で、営業キャッシュ・フローは208億52百万円のプラス(前期は84億53百万円のマイナス)となっています。
検索で目にしやすい3つの論点を、開示されている事実だけで整理する
この会社を調べると、資本構成・株主・火葬料に関する情報が数多く出てきます。ここでは「誰が・いつ・何を・何%」という開示事実だけを並べます。是非や動機、思惑についての評価・推測は本記事では一切行いません。判断材料として事実を確認し、評価は読者ご自身で行ってください。
①筆頭株主の異動|R&Lホールディングスが21.78%を保有
有価証券報告書(p.32-34)に記載されている事実は次のとおりです。
- 2026年3月9日:代表取締役会長CEOの羅怡文氏(ラオックスホールディングス代表取締役会長兼社長CEOを兼任)が、同氏が実質的支配権を持つR&Lホールディングス株式会社へ新株予約権10,000個を譲渡
- 2026年3月25日:新株予約権の行使が完了し、新株2,000万株が発行される
- この結果、R&Lホールディングス株式会社が持株比率21.78%の筆頭株主となり、その他の関係会社に該当
- 2025年12月30日:会社はToSTNeT-3により自己株式13,439,200株・62億62百万円を取得
2026年3月31日現在の大株主上位は、R&Lホールディングス株式会社21.78%、グローバルワーカー派遣株式会社13.30%、株式会社麻生9.13%、SBIホールディングス株式会社7.38%、日本マスタートラスト信託銀行(信託口)3.56%、ポールスター株式会社2.71%、GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL 2.25%、日本カストディ銀行(学研HD退職給付信託口)1.98%、光通信KK投資事業有限責任組合1.68%、増渕栄一氏1.57%で、上位10名の合計は65.33%です(いずれも自己株式を除く比率)。資本金は新株予約権の行使により前期の4億29百万円から28億22百万円増加し、32億61百万円となっています。
②「株式会社麻生」という法人の主要株主入りと離脱
開示資料に記載されているのは、株式会社麻生という法人の異動です。事実関係は、2025年12月30日に主要株主となり、2026年3月25日に主要株主から離脱した、というものです。2026年3月31日現在の大株主一覧には9.13%の保有として引き続き記載されています。記事として答えられるのは「開示されているのは株式会社麻生という法人の株主異動である」という点までで、それ以上の関係性についての推測は本記事では行いません。
③火葬料の改定と特別区区民葬の取扱い終了
会社は2025年8月1日に「特別区区民葬儀の取扱い終了と火葬料金の改訂について」を公表しています。公表されている事実は2点です。
- 特別区区民葬儀の取扱いを、2026年3月31日火葬分をもって終了する
- 2026年4月1日火葬分から、普通炉の火葬料を90,000円から87,000円に改定する
つまり直近の改定は、金額としては引き下げです。火葬料の水準は都議会などでも取り上げられ報道の多い領域ですが、本記事では会社が公表した内容と日付のみを扱い、料金水準や事業の集中度についての評価・是非の判断は行いません。なお2026年3月期の葬祭公益セグメントが9.3%減収となった要因について、有価証券報告書は東京都内の死亡者数減少により火葬件数が大幅に減少したと説明しています。
2019年の2つのTOBはいずれも不成立に終わった
経営権をめぐる過去の経緯も、開示されている事実として押さえておく価値があります。2019年、米ベインキャピタル傘下のBCJ-34によるMBO目的の公開買付け(当初1株610円、その後700円へ引き上げ)と、旧村上ファンド系のレノ・南青山不動産による対抗公開買付け(1株750円)が同時に進行しました。結果は両方とも不成立です。上場企業で対抗TOBが同時に持ち込まれ、そのいずれも成立しなかったケースは多くありません。
また代表者に関しては、羅怡文氏が2019年11月に創業家の櫻井美江氏から株式を取得して大株主となった経緯が公表されており、2026年3月に同氏が実質的支配権を持つR&Lホールディングスが筆頭株主となっています。現在の代表者体制は、代表取締役会長CEOが羅怡文氏、代表取締役社長COOが常盤誠氏(2025年就任、2026年2月27日および3月の適時開示文書に代表取締役社長として記名)です。「社長」とだけ呼ぶと2名のどちらを指すか曖昧になるため、応募書類や面接の場では役職名まで正確に扱うのが無難です。ここでも、これらの経緯についての動機や思惑の推測は行いません。
有報が記す構造上の制約|財務制限条項・債務超過子会社・労働組合
転職判断に直結しにくい項目ですが、会社の輪郭を正確に捉えるうえで重要な記載が有報にあります。いずれも公式情報です。
銀行借入の財務制限条項に「東京博善の100%保有維持」が明記されている
有価証券報告書(p.27)によると、銀行借入の財務制限条項には「東京博善株式会社を連結子会社として維持すること」「東京博善への出資比率を100%維持すること」「東京博善株式の売却・担保設定・処分をしてはならないこと」が明記されています。これは事実として、グループが葬祭事業を切り離せない資本構造にあることを意味します。東京博善株式会社の単体業績は売上130億88百万円、経常利益46億67百万円、純利益32億10百万円、純資産371億26百万円、総資産389億58百万円で、東京博善の帳簿価額合計は260億67百万円と記載されています。
債務超過の子会社が4社ある
有価証券報告書の注記によると、ベトナム・ハノイに置く人材関連の3社(KOSAIDO HR VIETNAM、NHAT LINH TRAINING AND TRADING、ZEN CO.,LTD.)はいずれも債務超過です。加えて株式会社広済堂エンジニアリングも債務超過9百万円と記載されています。ベトナム3社は「KosaidoGlobal」ブランドでの海外人材紹介・日本語教育・ハウスキーピングを担う位置づけで、人材セグメントが2期連続のセグメント損失であることと整合する記載です。海外人材事業に関わるポジションを検討する場合、投資段階にある事業であるという事実は前提として押さえておくべき情報です。
労働組合は持株会社にはなく、一部の連結子会社にのみ存在する
有価証券報告書には、労働組合は提出会社(持株会社)には存在せず、一部の連結子会社にのみ存在すると明記されています。労使関係については特記すべき事項はない旨も記載されています。所属会社によって労働条件の交渉チャネルが異なるという事実は、グループ内で処遇の見え方が揃わない一因として理解できます。
口コミ傾向は「持株会社側」と「東京博善側」を分けて読む
この会社の口コミを読むときの最大の注意点は、持株会社・印刷側の投稿と、斎場・葬祭側の投稿が別ページに分かれていることです。混ぜて読むと実態を取り違えます。以下はいずれも口コミ傾向であり、断定ではありません(2026年8月閲覧時点の掲載値)。
| 参照先 | 総合評価 | 件数・回答者 | 掲載されている働き方数値 |
|---|---|---|---|
| OpenWork「広済堂ホールディングス」 | 2.86 | クチコミ575件/回答者115人 | 残業23.9時間/月、有給消化率56.0%、回答者平均年収504万円(正社員31人回答) |
| OpenWork「東京博善」 | 2.97 | 回答者2人 | 残業24.2時間/月、有給消化率26.1% |
| エン カイシャの評判「東京博善」 | 3.5 | 口コミ75件 | — |
まず東京博善のOpenWork評価2.97は回答者2人であり、統計として扱える母数ではありません。数値の高低を論じることはできません。一方でエン カイシャの評判では東京博善に75件の口コミがあり、こちらは件数として一定の厚みがあります。参照先によって母数が大きく違うため、点数の単純比較は避けるべきです。
持株会社・印刷側の投稿傾向|「コンプラは固いが処遇と評価に不満」
OpenWorkの広済堂ホールディングスのページでは、項目別スコアに明確な偏りがあります。
- 高い項目:法令順守意識3.8が突出
- 低い項目:待遇面の満足度2.5、社員の士気2.4、人材の長期育成2.4、人事評価の適正感2.4
投稿傾向としては、コンプライアンス面の厳格さは評価される一方、処遇・評価・育成に対する不満が集まりやすい分布です。老舗企業かつ持株会社という組織形態では珍しくない分布でもあり、推定情報としては、事業会社の実務と持株会社の管理業務のあいだで評価軸が揃いにくいことが背景にある可能性があります。なお転職会議には旧社名時代を含む585件、就活会議には538件(うち退職理由に関するもの74件)の口コミが掲載されており、母数としては十分にあります。
葬祭・斎場側の傾向|安定性と、有給の取りにくさ
東京博善側の口コミ傾向としては、未経験からの入社がしやすいこと、事業自体の安定性が高いことが挙げられる一方、有給休暇が取りにくいという投稿が見られます。OpenWork掲載の有給消化率26.1%という数値は回答者2人ベースであり参考値にすぎませんが、斎場が365日稼働し、火葬・葬儀という日時を動かせない業務であることを踏まえると、推定情報として、シフト調整の難しさが休暇取得の体感に影響している可能性はあります。実際の運用は面接時に確認すべき項目です。
入口はどこにあるか|持株会社73人の枠と、東京博善の未経験求人
結論として、このグループへの現実的な入口は、持株会社ではなく事業会社側にあります。理由は単純で、持株会社の従業員は73人しかいないためです。求職者にとっての選択肢を、開示情報と求人媒体の掲載内容から整理します。
| 入口 | 人員規模 | 職務の性格 | 参照できる年収データ |
|---|---|---|---|
| 株式会社広済堂ホールディングス(持株会社) | 73人 | グループ経営管理、経営企画、財務、人事、法務などコーポレート機能 | 有報:654.8万円(45.3歳・勤続11.8年) |
| 株式会社広済堂ネクスト(情報) | 362人 | 出版・商業印刷、BPO、IT。グループ最大の人員 | 有報:555.5万円(44.9歳・勤続11.8年) |
| 東京博善株式会社(葬祭) | 269人 | 総合斎場の運営、火葬業務、葬儀サービス、ご遺族対応 | 有報:583.2万円(45.1歳・勤続11.1年) |
| 人材系子会社(広済堂ビジネスサポート等) | 127人 | 人材派遣、外国人材紹介、ハウスキーピング | 有価証券報告書では会社別の開示なし |
東京博善の斎場職は「未経験歓迎」で募集されている
求人媒体(マイナビ転職など)への掲載内容によると、東京博善は斎場スタッフを未経験歓迎・月給30万円級の条件で継続的に募集しています。掲載条件は時期により変わるため、応募時点の求人票で必ず確認してください(掲載内容は一次情報ではなく、推定情報として扱うべき範囲です)。職務の性格として、次の点は事前に理解しておく価値があります。
- ご遺体の取り扱いと、ご遺族への応対が業務の中心にある
- 斎場は暦に関わらず稼働するため、シフト勤務・土日祝の稼働が前提になる
- やり直しのきかない場面が多く、手順の正確さが強く求められる
- 景気変動より人口動態の影響を受ける事業であり、需要の振れ方が一般的な業種と異なる
葬祭業界のキャリアとしては、斎場運営から施設マネジメント、葬儀サービスの企画・営業、納骨堂など周辺サービスへと横に広がる道筋があります。同社は2026年3月期に横濱聖苑(納骨堂)とセレモライフ(葬儀)を買収し、2026年4月1日付で葬儀サービス事業の中間持株会社である株式会社広済堂ライフパートナーズを新設分割で設立しており、葬祭領域の組織が広がっている局面であることは事実として確認できます。
情報セグメント(印刷・BPO)の位置づけ
人員最大の情報セグメント(429人)は、出版・商業印刷にBPOとITを組み合わせた事業です。印刷業界全体では、資材価格の高騰、人材確保、デジタル印刷への移行、AI活用といったテーマが共通の経営課題として挙げられており、単純な印刷受注よりも原価と歩留まりを動かせる職種や、業務プロセスごと請け負うBPO型のサービスに軸足が移っています。広済堂ネクストのセグメント利益が6億55百万円と66.0%増になった一方、新聞印刷事業からの撤退が進められているのは、この構造変化と整合する動きです。この領域を志望する場合、印刷オペレーションそのものより、BPO・IT・業務設計の経験が評価されやすい可能性があります(推定情報)。
将来性を左右する変数|人口動態、設備投資、人的資本KPI
この会社の将来性を考えるうえで特徴的なのは、主力事業の需要が景気ではなく死亡者数に直結することです。有価証券報告書は、東京都の死亡者数が2040年から2060年頃にかけてピークを迎えるとしたうえで、2026年3月期については都内死亡者数の減少により火葬件数が大幅に減少し、葬祭公益セグメントが9.3%の減収となったと説明しています。長期のトレンドと単年の実績が逆方向に動いた期だった、というのが第62期の事実関係です。
設備面では、2026年3月期の設備投資総額は34億円で、主に葬祭収益セグメントの式場増設に充てられています。具体的には桐ケ谷斎場で増設式場の提供を開始し、四ツ木斎場では増床に着手しています。火葬(葬祭公益)が減収となる一方で、式場・葬儀サービス側(葬祭収益)の容量を増やす投資が続いている構図です。
人的資本については、有価証券報告書に具体的な数値目標が記載されています。
- 管理職女性比率:3年後に25%以上、5年後に30%以上
- 部長職女性比率:3年後に5%以上、5年後に10%以上
- 主要4社の依願離職率:11.0%から9.5%へ
離職率そのものは有報で単年の実績値として開示されていませんが、KPIとして11.0%という現状値と9.5%という目標値が示されている点は、応募時に「その後どう推移したか」を質問する具体的な足がかりになります。あわせて、持株会社と事業会社で役割・処遇・キャリアの見え方が異なるという構造は、グループ全体を一つの企業として評価しにくくさせています。応募先が持株会社なのか事業会社なのか、評価制度と昇給テーブルはどちらの基準なのかを確認することが、この会社では特に重要です。
比較の視点|同じ業界・同じ持株会社構造の企業と何が違うか
比較対象は「葬祭業界としての比較」と「持株会社構造としての比較」の2軸で見ると整理しやすくなります。各社の平均年収は各社の有価証券報告書で確認できる数値であり、本記事では未確認の推定値を並べることは避け、比較の観点を示します。
| 企業名 | 市場・主な事業 | 広済堂HDと比べる観点 |
|---|---|---|
| 燦ホールディングス(9628) | 東証プライム/公益社などを傘下に持つ葬祭専業の上場持株会社 | 葬儀サービス専業との比較。広済堂HDは火葬場運営を持つ点が構造的に異なる |
| ティア(2485) | 東証プライム/名古屋発の葬儀会館チェーン | 会館運営型の葬儀社としての現場職の働き方・店舗展開モデルの比較 |
| 鎌倉新書(6184) | 東証プライム/「いい葬儀」等の終活ポータル運営 | 葬祭業界のIT・メディア側。ホワイトカラー志望者にとっての別ルート |
| 日本創発グループ(3939) | 東証スタンダード/印刷を祖業とする多角化持株会社 | 同じ「印刷系持株会社」構造。持株会社単体の給与と現場給与が乖離する論点が共通 |
とくに日本創発グループとの比較は、この記事の核と直結します。持株会社の有報に載る平均年間給与が本社機能の人員のみを対象にしている、という現象は上場持株会社に広く見られるもので、フジシールインターナショナル、ウイルコホールディングス、トランザクション、バンダイナムコホールディングス、エステールホールディングスなど、単体従業員数が数十人規模の持株会社では同じ読み替えが必要になります。広済堂ホールディングスが特異なのは、有報が事業会社2社の平均年間給与まで開示しているため、その読み替えを推定ではなく一次情報で完結できる点です。
広済堂ホールディングスに関するよくある質問(FAQ)
検索されている疑問のうち、開示資料で事実として答えられるものに限って回答します。開示資料に記載のない事柄については、その旨をそのまま記載します。
広済堂ホールディングスの平均年収はいくらですか?
公式情報として、第62期有価証券報告書に記載された提出会社の平均年間給与は654.8万円(前事業年度比6.1%減)です。ただし対象は持株会社単体の従業員73人で、平均年齢45.3歳・平均勤続年数11.8年。同じ有報には事業会社の実額として、株式会社広済堂ネクスト555.5万円(362人)、東京博善株式会社583.2万円(269人)が記載されています。応募先の会社名によって参照すべき数値が変わります。
東京博善は広済堂ホールディングスの子会社ですか?
はい。東京博善株式会社は広済堂ホールディングスの100%子会社です(2020年3月に株式取得)。有価証券報告書には、銀行借入の財務制限条項として東京博善を連結子会社として維持すること、出資比率100%を維持すること、株式の売却・担保設定・処分を行わないことが明記されています。
筆頭株主は誰ですか?
2026年3月31日現在の筆頭株主はR&Lホールディングス株式会社(21.78%)です。2026年3月9日に代表取締役会長CEOの羅怡文氏が同社へ新株予約権10,000個を譲渡し、3月25日の行使完了により新株2,000万株が発行された結果です。以下、グローバルワーカー派遣株式会社13.30%、株式会社麻生9.13%、SBIホールディングス株式会社7.38%と続きます。本記事は資本構成についての評価・是非の判断は行いません。
「株式会社麻生」との関係について、開示されている事実は何ですか?
開示資料に記載されているのは、株式会社麻生という法人が2025年12月30日に主要株主となり、2026年3月25日に主要株主から離脱したという事実、および2026年3月31日現在の大株主一覧に9.13%の保有として記載されているという事実です。記事として答えられるのはここまでで、これ以上の関係性については開示資料に記載がないため触れません。
火葬料は値上げされたのですか?
会社が2025年8月1日に公表した内容によると、2026年4月1日火葬分から普通炉の火葬料は90,000円から87,000円へ改定(引き下げ)されています。あわせて特別区区民葬儀の取扱いは2026年3月31日火葬分をもって終了しました。料金水準そのものの妥当性についての評価は本記事では行いません。
未経験でも入社できる可能性はありますか?
持株会社本体は従業員73人と枠が限られるため、現実的な入口は事業会社側です。東京博善は求人媒体で斎場スタッフを未経験歓迎の条件で継続的に募集しています(掲載条件は時期により変動)。一方でご遺体の取り扱い・ご遺族対応・シフト勤務という職務特性があるため、業務内容を正確に理解したうえでの応募が前提になります。
不祥事や行政処分の情報はありますか?
本記事の調査範囲(第62期有価証券報告書の「事業等のリスク」、公式プレスリリース、公開情報の検索)では、具体的な事案を確認できなかったというのが結論です。存在しないことの証明ではありませんが、確認できた事実がない以上、本記事ではその旨のみを記載します。
事実の整理まとめ|何が確認でき、何を判断しないか
最後に、本記事で扱った論点を「開示資料で確認できる事実」と「本記事が判断しないこと」に分けて整理します。転職判断そのものは、この事実の上で読者ご自身が行うべきものです。
| 論点 | 開示資料で確認できる事実 | 本記事が判断しないこと |
|---|---|---|
| 年収 | 提出会社654.8万円(73人)/広済堂ネクスト555.5万円(362人)/東京博善583.2万円(269人)。口コミ回答者ベースは504万円 | この水準が高いか低いかの評価 |
| 事業構造 | 5セグメント。売上最大は情報149億72百万円、利益最大は葬祭2セグメント合計47億19百万円 | 多角化の是非、事業ポートフォリオの巧拙 |
| 業績 | 売上362億28百万円(5.4%減)、営業利益67億40百万円(18.8%減)。人材・資産コンサルの2セグメントが赤字。2026年4月に純利益予想を下方修正 | 今後の株価・業績見通しの推測 |
| 資本構成 | R&Lホールディングス21.78%の筆頭株主化(2026年3月25日)。自己株式取得62億62百万円(2025年12月30日) | 資本の国籍・支配関係に関する評価、動機・思惑の推測 |
| 株主異動 | 株式会社麻生の主要株主入り(2025年12月30日)と離脱(2026年3月25日) | 法人以外との関係性についての言及 |
| 火葬料 | 90,000円→87,000円(2026年4月1日火葬分から)、区民葬は2026年3月31日火葬分で終了 | 料金改定の是非、事業集中度の是非 |
| 雇用の入口 | 持株会社73人/広済堂ネクスト362人/東京博善269人/人材127人。東京博善は未経験歓迎の募集あり | 個々の応募者の合否可能性 |
| コンプライアンス | 調査範囲では不祥事・行政処分・係争の具体的事案を確認できなかった | 存在の有無の断定、示唆 |
面接や条件確認の場では、次の4点を押さえると認識のズレが起きにくくなります。第一に雇用契約の相手方となる会社名。第二に、その会社の賃金テーブルと評価制度がどこの基準か。第三に、配属予定セグメントの直近の損益(人材・資産コンサルティングは赤字、葬祭・情報は黒字)。第四に、人的資本KPIとして掲げられた依願離職率11.0%→9.5%の進捗です。いずれも有報に根拠のある質問なので、事実にもとづく確認として自然に切り出せます。
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この記事の編集方針・情報の確認について
この記事は、公式公開情報(有価証券報告書・IR資料)、求人情報、口コミ傾向をそれぞれ分けて整理し、転職・就職判断に役立つよう編集しています。年収・平均年齢・従業員数などの中核データは第62期有価証券報告書「従業員の状況」を一次情報として確認し、口コミ・推定情報とは明確に区別しています。とくに本記事は、資本構成・株主異動・火葬料といった社会的関心の高い論点について、開示されている事実(誰が・いつ・何を・何%)のみを記載し、是非や動機の評価は行わない方針で執筆しています。記載内容は最終更新時点の公開情報にもとづきます。最新の正確な数値は各公式IRページでご確認ください。
