阿波製紙の評判と年収522万円|製紙会社ではない機能材メーカーの実像
※本記事にはプロモーションを含みます。
この記事の結論
- 正体:業種分類は「パルプ・紙」だが、売上の約92%は自動車濾材と水処理膜支持体
- 年収:有価証券報告書の平均年間給与は522.6万円(第112期・提出会社)
- 業績:売上は過去最高の184.9億円だが、2期連続の経常赤字・2期連続無配
- 勤務地:国内の生産拠点は全て徳島県内。新工場向けに1年で47名を採用
阿波製紙株式会社(証券コード3896・東証スタンダード市場)は、社名だけを見ると「紙をつくる会社」に見えます。しかし実際に稼いでいるのは、自動車エンジン用の濾材と、逆浸透膜(RO膜)に使う分離膜支持体という2つの機能材です。この記事では、第112期(2026年3月期)有価証券報告書の実額をもとに、年収・勤務地・業績・将来性を「公式情報」「口コミ傾向」「推定情報」に分けて整理します。売上が過去最高を更新しながら経常赤字になっている理由まで、数字の中身に踏み込んで解説します。
阿波製紙は「製紙会社」ではない|売上の約92%を占める2本柱
まず押さえるべき結論は、阿波製紙を「紙の会社」だと思って選考に進むと、入社後のイメージが大きくずれるということです。東証33業種の分類は「パルプ・紙」ですが、有価証券報告書によると第112期(2026年3月期)の連結売上高184億94百万円の内訳は、水処理関連資材87億99百万円(47.6%)、自動車関連資材81億89百万円(44.3%)、一般産業用資材15億06百万円(8.1%)です(公式情報)。上位2品目だけで売上の約92%を占め、いわゆる印刷用紙・包装用紙の販売はここに含まれません。実質的には自動車部品のTier2サプライヤーであり、同時に水処理インフラの素材メーカーでもある、という二重の顔を持つ会社です。

「製紙会社」だと思って応募しても大丈夫でしょうか?
水処理関連資材87億99百万円|RO膜支持体という縁の下の素材
売上構成で最大になったのが水処理関連資材です。中身は、海水淡水化プラントや工業用純水装置に使われる逆浸透膜(RO膜)モジュールの内部で、膜を支える「分離膜支持体用不織布」が中心です。膜そのものを作る会社ではなく、膜を成立させる土台側を担うポジションになります。有価証券報告書によると、阿波製紙がこの分野に参入したのは1983年で、40年以上の実績があります(公式情報)。転職検討者にとって重要なのは、この領域が水不足・水資源インフラという長期的な需要に支えられており、自動車のように動力方式の転換で需要構造が変わるリスクが相対的に小さい点です。第5次中期経営計画では2029年3月期に水処理関連を売上の約55%まで引き上げる方針が示されています。
自動車関連資材81億89百万円|エンジン濾材とクラッチ板摩擦材
もう一方の柱が自動車関連資材です。エンジンの吸気・潤滑油・燃料それぞれのフィルターに使う濾材、AT(自動変速機)のクラッチ板に使う摩擦材原紙、鉛蓄電池用のセパレータ原紙などが該当します。1961年に自動車エンジン用濾紙の販売を開始して以来、60年以上にわたって同社の主力を担ってきた分野です。クチコミによれば、社員の間では「自動車用濾紙は日本一」「RO膜支持体のシェアが大きい」という技術・シェアへの誇りが語られています(口コミ傾向)。ただしこれは社員の主観的な評価であり、市場シェアの具体的な順位・比率を公式資料から特定できる形では開示されていないため、本記事では数値を断定しません。
2026年3月期に主力が初めて逆転した意味
転職判断で見逃せないのが、60年以上主力だった自動車関連を、水処理関連が第112期に初めて上回ったという事実です。この逆転は、2025年3月に竣工した新小松島工場でRO膜支持体の生産能力を増強したことと連動しています。設備投資計画にも、新小松島工場の紙加工設備666百万円をRO膜用支持体の増強に充てる旨が記載されています(2025年12月着手・2027年6月完了予定)。推定情報として言えば、いま入社する人は「主力事業が入れ替わる途中の会社」に入ることになります。自動車側で培った濾材技術の応用が効く一方、社内の投資配分・人員配置が水処理側へ寄っていく可能性があり、どちらの部門に配属されるかでキャリアの伸び方が変わりやすい局面です。なお、有価証券報告書は自動車のEV化により、エンジン用濾材やクラッチ板摩擦材の中長期需要が縮小する方向にあることを事業ポートフォリオのリスクとして自ら記載しています。
阿波製紙の公式データ一覧(有価証券報告書ベース)
本記事で扱う公式数値を一覧で確認できます。すべて第112期(2025年4月1日〜2026年3月31日)の有価証券報告書(2026年6月25日提出)に基づく公式情報です。最新の正確な数値は公式IRページで再確認してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商号 | 阿波製紙株式会社(AWA PAPER & TECHNOLOGICAL COMPANY, Inc.) |
| 証券コード/市場 | 3896/東京証券取引所スタンダード市場 |
| 設立 | 1916年(大正5年)2月 |
| 代表者 | 代表取締役会長兼社長 三木康弘 |
| 本社 | 徳島県徳島市南矢三町三丁目10番18号(本社・徳島工場) |
| 平均年間給与 | 5,226,285円(約522.6万円/提出会社・前期比+0.9%) |
| 平均年齢 | 40.3歳(前期40.7歳) |
| 平均勤続年数 | 16.5年(前期17.7年) |
| 従業員数 | 連結691名(臨時雇用者23名は外数)/提出会社480名(同13名) |
| 売上高 | 連結184億94百万円(前期比+8.0%)/提出会社144億36百万円 |
| 営業利益 | 連結58百万円(前期432百万円/▲86.4%) |
| 経常損益 | 連結△95百万円の経常損失(前期は+279百万円) |
| 当期純利益 | 753百万円(補助金収入15億円を特別利益に計上したことによる) |
| 自己資本比率 | 21.9%(総資産289億97百万円/純資産88億99百万円) |
| 配当 | 第111期・第112期とも無配 |
| 労働組合 | 阿波製紙労働組合(上部団体非加盟)・組合員238名 |
| 出典 | 第112期 有価証券報告書(2026年6月25日提出)/公式IR資料 |
阿波製紙の年収は平均522.6万円|勤続年数が1.2年縮んだ理由
年収を知りたい人にとっての結論は、有価証券報告書の平均年間給与5,226,285円(約522.6万円)が唯一の一次情報だということです。ネット上には日本経済新聞の企業情報で523万円、求人ボックス給料ナビで509万円といった数値も掲載されていますが、これらは集計基準の異なる二次情報です。本記事では有価証券報告書の実額を主値として扱います(公式情報)。
有報が示す2期分の実額と、その読み方
第111期と第112期を並べると、給与そのものより人員構成の変化が読み取れます。
| 項目 | 第111期(2025年3月期) | 第112期(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 平均年間給与 | 5,181,042円 | 5,226,285円(+0.9%) |
| 平均年齢 | 40.7歳 | 40.3歳 |
| 平均勤続年数 | 17.7年 | 16.5年 |
| 提出会社の従業員数 | 433名 | 480名 |
平均給与の伸びは+0.9%にとどまりました。ただしこれを「昇給が止まっている」と読むのは正確ではありません。有価証券報告書は、2025年3月に竣工した新小松島工場向けに1年で47名を新規採用したことを、平均勤続年数が17.7年から16.5年へ短縮した要因として明記しています(公式情報)。つまり、勤続の浅い新規採用者が1年で1割以上流入したことで平均値が押し下げられており、既存社員の昇給率がそのまま+0.9%というわけではない、という構造です。平均年齢も40.7歳から40.3歳へ若返っています。推定情報として、この47名の採用は継続的な人員拡大というより新工場立ち上げに紐づく一時的な増員である可能性があり、同じペースの採用が続くかは慎重に見るべきです。
クチコミが語る「基本給+手当」という給与構造
実額の裏にある内訳は、口コミからある程度うかがえます。クチコミによれば、「毎年昇給するが3,000円程度」「基本給は高くなく、交代手当・残業手当・深夜手当で稼ぐ」「徳島という土地柄では平均的」といった声が目立ちます(口コミ傾向/OpenWork・エン カイシャの評判)。ここから読み取れるのは、製造現場では交替勤務に伴う手当が年収の相当部分を構成しているという傾向です。これは推定情報ですが、日勤のみの職種と交替勤務のある職種で、同じ等級でも年収に差が出やすい構造だと考えられます。求人票を見る際は、基本給と手当の内訳、交替勤務の有無、深夜勤務の頻度を必ず確認したいところです。なお、これらの口コミはOpenWorkで回答者8名規模のスコアを含むため、統計的な信頼性は高くありません。
職種別の年収目安(推定情報)
以下は有価証券報告書の平均522.6万円と口コミの傾向から逆算した推定情報であり、公式に開示されたレンジではありません。
- 製造オペレーター(交替勤務あり):380万〜520万円程度。手当の比重が大きい
- 生産技術・設備保全:450万〜600万円程度。新小松島工場の立ち上げ経験が評価されやすい
- 研究開発(機能材開発):450万〜620万円程度。不織布・抄紙技術の知見が中心
- 国内営業・海外営業:450万〜650万円程度。顧客が少数の大口に集中する営業スタイル
- 管理職層:650万〜850万円程度
年収の絶対水準を全国平均と比べるのではなく、徳島県内の製造業水準と比較したうえで、住居費・通勤時間を含めた実質的な可処分所得で判断するのが現実的です。
この522.6万円は誰の年収か|連結691名と単体480名、勤務地は徳島県内
先に示した522.6万円は提出会社(阿波製紙単体)480名の数字であり、連結691名の平均ではありません。この差を理解しないと、求人票と有報の数字がかみ合わなくなります。
差の211名はタイ子会社がほぼそのまま該当
有価証券報告書によると、連結従業員691名と提出会社480名の差である211名は、連結子会社であるThai United Awa Paper Co.,Ltd.(タイ・サムットプラカーン県/カビンブリ工場、従業員211名)にほぼ一致します(公式情報)。同社は第112期に売上5,476百万円・経常利益500百万円・当期純利益434百万円を計上しており、連結業績のなかで安定して利益を出している拠点です。議決権比率は48.7%ですが実質支配により連結子会社かつ特定子会社に位置づけられています。ほかに中国・安徽省の滁州市国豊阿波濾材有限公司(出資比率25.0%)が持分法適用関連会社としてあります。日本で採用される場合の待遇はあくまで提出会社基準であり、タイ拠点の給与水準は別物である点に注意が必要です。
国内の勤務地は徳島市・阿南市・小松島市に集中
求職者の検索で最も多いのが勤務地に関する内容です。有価証券報告書の従業員内訳によると、国内の主な事業所別人員は本社155名、阿南事業所166名、徳島工場70名、新小松島工場47名、小松島工場24名です(公式情報)。本社・徳島工場は徳島県徳島市南矢三町三丁目10番18号にあり、東京都中央区日本橋三丁目12番1号の東京支店は営業拠点です。国内の生産拠点は全て徳島県内にあり、有価証券報告書はこの地理的集中を南海トラフ地震・津波のリスクとして自ら明記しています。転職者にとっては、勤務地が徳島市・小松島市・阿南市のいずれかにほぼ限定されることを意味します。全国転勤型のキャリアを望む人には合わない一方、徳島県内で腰を据えて働きたい人には、この集中はむしろメリットになります。
新小松島工場が持つ意味と、設備の重心
2025年3月竣工の新小松島工場は、日本製紙が小松島市に保有する社有地内に立地しており、土地は年間900万円で賃借しています。設備の帳簿価額を見ると、新小松島工場9,439百万円、阿南事業所3,425百万円、本社872百万円、徳島工場787百万円、小松島工場252百万円で、新工場だけで国内設備の大半を占めるという重心の偏りが分かります(公式情報)。一方で、第111期に18百万円、第112期に88百万円と、徳島事業所(徳島工場・小松島工場)の機械装置で2期連続の減損損失が計上されています。新しい設備に投資しつつ、旧設備の収益性低下が続いているという状況です。推定情報として、生産技術・設備保全の職種では、新工場の立ち上げ・安定稼働と旧設備の運用という性格の異なる2種類の仕事が並存していると考えられます。
業績を直視する|売上は過去最高、それでも2期連続の経常赤字
ここは避けずに書きます。結論として、阿波製紙は売上を伸ばしながら利益が消えている状態にあります。ただし第112期の有価証券報告書に、継続企業の前提に関する注記および重要事象等の記載はありません(監査報告書の記載も定型のものです)。事実として数字を押さえ、そのうえで判断するのが適切です。
売上は5期で+23%、営業利益は▲86.4%
連結売上高の推移は、第108期150億23百万円→第109期173億09百万円→第110期161億15百万円→第111期171億24百万円→第112期184億94百万円で、5期で約23%増加しています(公式情報)。地域別(顧客所在地基準)では日本137億13百万円、タイ24億91百万円、アジア(タイ・中国除く)14億29百万円、中国4億13百万円、米国3億63百万円、その他0億83百万円で、海外売上比率は約25.9%です。一方で利益は逆方向に動きました。
| 項目 | 第111期 | 第112期 |
|---|---|---|
| 連結売上高 | 171億24百万円 | 184億94百万円(+8.0%) |
| 連結営業利益 | 432百万円 | 58百万円(▲86.4%) |
| 連結経常損益 | +279百万円 | △95百万円(経常損失) |
| 単体経常損益 | △194百万円 | △509百万円 |
| 配当 | 無配 | 無配 |
特に重要なのは、提出会社単体では第111期・第112期と2期連続の経常赤字である点です。連結では タイ子会社の利益が下支えしていた第111期に対し、第112期は連結ベースでも経常損失に転じました。ROAは△0.3%です。増収なのに利益が出ない主因としては、新工場稼働に伴う減価償却費・固定費の増加と、旧設備の稼働効率の問題が重なっていることが考えられます(推定情報)。
純利益7.5億円の中身は補助金15億円という一過性要因
第112期の親会社株主に帰属する当期純利益は753,816千円で、前期比21.5倍です。この数字だけを見ると急回復に見えますが、実態は異なります。有価証券報告書によると、これは新小松島工場建設に係る徳島県企業立地補助事業の補助金収入15億円を特別利益に計上したことによるもので、会社自身が「当期の最終利益は一過性要因を含むもの」と明記しています(公式情報)。実際、特別損失側には減損損失88,326千円、投資事業組合評価損64,803千円、そして在外子会社における送金詐欺損失35,123千円が計上されています。送金詐欺の損失計上は、海外子会社のガバナンス面で実損が発生した事例として珍しく具体的です(詳細な経緯は開示から特定できる形では記載されていません)。会社予想でも2027年3月期の純利益は1.5億円(前期比▲80.1%)とされており、補助金剥落を織り込んだ数字になっています。
自己資本比率21.9%・2期連続無配をどう読むか
財務面では、自己資本比率が第109期の30.1%から第112期21.9%まで低下しています。総資産289億97百万円に対し純資産88億99百万円という構成で、新工場投資により総資産が5期で約155億円から約290億円へ膨らみ、第112期も長期借入2,300百万円を実行しています。配当は第111期・第112期と2期連続で無配です。株価指標は二次ソース(IR BANK)の2026年8月時点でPER26.54倍・PBR0.62倍・配当利回り0%とされています。これらは公式情報としての有報数値と、二次情報としての株価指標を区別して見る必要があります。転職判断としては、推定情報ながら、賞与原資や昇給幅が業績に連動する部分については当面慎重に見積もっておくのが安全です。一方で、2027年3月期の会社予想は売上206億円(+11.4%)・営業利益6.9億円・経常利益5.5億円と大幅な改善を見込んでおり、新工場が償却負担を上回る稼働に乗せられるかが分岐点になります。
阿波製紙の評判・口コミ傾向|残業18.5時間と人事評価2.4のギャップ
口コミの結論を先に述べると、働き方の定量指標は良好で、評価・処遇の納得感が課題という分布です。ただし前提として、OpenWorkの総合評価2.82は回答者8名・口コミ46件、エン カイシャの評判は総合3.0前後で口コミ75〜85件と母数が小さく、回答者が1桁台のスコアも含まれます。統計的な信頼性は高くないため、以下はすべて口コミ傾向として読んでください。
相対的に高い評価|残業月18.5時間・有給消化率83.1%
OpenWorkの定量指標では、月間平均残業18.5時間、有給消化率83.1%と、製造業として良好な数字が出ています。項目別スコアでも「社員の相互尊重3.3」「法令順守意識3.2」が相対的に高く、ワークライフバランスに関する評価は総じてプラスです。公式の人的資本指標でも男性育休取得率92.3%、健康経営優良法人4年連続認定という実績があり(公式情報)、口コミの傾向と方向性が一致しています。紙器・パッケージを含む素材産業では工場配属の交替勤務や繁忙期の残業が懸念材料になりやすいのですが、少なくとも全社平均の残業時間は抑えられているとみられます。
低い評価|人事評価の適正感2.4、待遇面2.6
一方、OpenWorkの項目別で低いのは「人事評価の適正感2.4」「待遇面の満足度2.6」「社員の士気2.6」「20代成長環境2.6」です。経営者への提言としては、目標シートの運用や教育制度の見直しが挙がっています。給与面の「毎年昇給するが3,000円程度」という声とあわせると、推定情報として、成果や貢献が処遇に反映される実感が持ちにくい人事運用になっている可能性があります。ここは面接の逆質問で「評価制度の運用サイクル」「等級ごとの昇給レンジ」「中途入社者の昇格実績」を具体的に確認しておきたいポイントです。公式の人的資本指標では管理的地位にある女性比率7.4%、男女の賃金差異は全労働者84.0%(正規雇用83.8%、パート・有期65.1%)となっており、キャリア形成の男女差については応募前に確認する価値があります。
配属で働き方が大きく変わるという指摘
複数の口コミに共通して見られるのが、研究開発部・営業部・製造現場のどこに配属されるかで働き方の難易度が大きく変わるという指摘です(口コミ傾向)。480名規模の会社で、研究開発・生産技術・製造・営業・管理が同居しているため、部門ごとの文化差が平均値に埋もれやすい構造だと考えられます(推定情報)。転職では「阿波製紙という会社の評判」より「配属予定部門の実態」を確認するほうが、判断精度が上がります。
阿波製紙の将来性|第5次中計と、EV化・顧客集中という向かい風
将来性の結論は、水処理へのシフトが計画通り進むかどうかに集約されるということです。抽象的な期待ではなく、公表されている計画値とリスク記載で見ていきます。
第5次中期経営計画(2026〜2028年度)の数字
阿波製紙は第4次中期経営計画(2024年4月〜2026年3月)を売上・利益とも未達で終えたうえで、第5次中期経営計画をスタートさせています。掲げるテーマは「超品質の実現〜世界一のブランドの確立〜」で、2029年3月期に売上220億円・営業利益7.1億円(営業利益率3.2%)、水処理関連を売上の約55%まで引き上げる目標です(公式情報)。第112期実績の184.9億円から220億円は年率6%前後の成長を要する水準で、達成すれば新工場の投資回収が進む計算になります。ただし第4次中計が未達だった経緯を踏まえると、計画値をそのまま前提にはできません(推定情報)。なお、新小松島工場の紙加工設備投資は当初10億円から6.66億円へ減額され、完了時期も半年後ろ倒しされています。この修正をどう読むかは、面接で経営方針を聞く際の良い切り口になります。
EV化で縮む領域と、水不足で伸びる領域
自動車関連資材の中核であるエンジン用濾材とAT用クラッチ板摩擦材は、電動化が進むほど搭載機会が減る部品群です。有価証券報告書もこれを事業ポートフォリオのリスクとして記載しています(公式情報)。一方、水処理関連は海水淡水化・工業用水再利用の需要拡大が追い風になります。ただし阿波製紙は第111期の有価証券報告書で、水処理側についても「新規参入企業や既存競合他社からの販売攻勢により市場シェアが大きく減少する可能性」を明記しており、伸びる市場だから安泰という単純な図式ではありません。推定情報として、転職者のキャリアという観点では、EV化の影響を受けにくい水処理側の技術・営業経験のほうが、社外でも通用しやすいと考えられます。
顧客集中・同族経営という構造的な論点
もう一つ、事業構造として押さえておくべき論点があります。有価証券報告書によると、第112期の主要な販売先は株式会社サンコーが売上の34.5%、旭洋株式会社が11.7%で、上位2社で46.2%を占めます。しかもサンコー比率は前期の26.4%から1年で約8ポイント上昇しています(公式情報)。特定顧客への依存度が高い状態は、価格交渉力や受注変動の面でリスクとなり得ます。また株主構成では、株式会社徳応舎20.20%、三木産業株式会社9.96%、株式会社日伸8.00%、三木富士彦4.31%、三木康弘3.05%、株式会社阿波銀行2.97%、東京濾器株式会社2.88%、三木悠太郎2.51%などで上位10位計57.89%となっており、三木家関連と取引先の持ち合いが中心の同族経営です。代表取締役会長兼社長の三木康弘氏と、その実子である代表取締役副社長の三木悠太郎氏という体制も有価証券報告書に明記されています。2025年6月には監査等委員会設置会社へ移行しました。推定情報として、意思決定が速い反面、経営陣の交代による方針転換は起きにくい構造だと考えられます。
阿波製紙と比較検討されやすい機能材・特殊紙メーカー
「機能材にシフトした紙系メーカー」という軸で見ると、比較対象になりやすいのは以下の各社です。年収レンジは各社の開示状況が異なるため本表では扱わず、事業の重なりとキャリアの見え方で整理します(各社の評価は推定情報を含みます)。
| 企業名(コード) | 主力領域 | 阿波製紙との重なり | 比較時に見るべき点 |
|---|---|---|---|
| 阿波製紙(3896) | RO膜支持体・自動車濾材・摩擦材原紙 | — | 売上184.9億円。徳島集中。2期連続経常赤字と新工場投資の回収 |
| ニッポン高度紙工業(3891) | 電解コンデンサ用・リチウム電池用セパレータ | 四国発・機能紙特化・小型株という条件が最も近い | 電子部品市況の影響度。高知が主拠点 |
| 三菱製紙(3864) | 機能材・不織布・印刷用紙 | 子会社の廣瀬製紙が分離膜支持体用不織布で直接競合 | 規模が大きく事業が多角。紙事業の比重 |
| 特種東海製紙(3708) | 特殊機能紙・産業素材・板紙 | 「紙から機能材へ」という転換の先行事例 | 財務の安定度と、機能材比率の実際 |
| ダイニック(3778) | 不織布・機能製品・情報記録材 | 売上200億円前後・東証スタンダードと規模感が近い | 事業ポートフォリオの分散度合い |
この5社を並べると、阿波製紙の位置づけがはっきりします。規模ではニッポン高度紙工業やダイニックと近く、技術の方向性ではニッポン高度紙工業と最も似ています。一方、三菱製紙や特種東海製紙は規模も事業の幅も大きく、勤務地の選択肢も広がります。「徳島で機能材の技術を深める」か「規模の大きい会社で選択肢を広げる」かという軸で比較すると、判断がしやすくなります。
阿波製紙への転職が向いている人・向いていない人
これまでの公式情報・口コミ傾向をふまえ、適性を整理します(推定情報を含みます)。
| 向いている人 | 向いていない人 |
|---|---|
| 徳島県内(徳島市・小松島市・阿南市)で長く働きたい人 | 全国転勤や首都圏勤務でキャリアを広げたい人 |
| BtoBの素材・機能材の技術を一つの分野で深めたい人 | 消費者向けブランドに関わる仕事がしたい人 |
| 残業月18.5時間・有給消化率83.1%という働き方を重視する人 | 成果に応じた大きな昇給・賞与の変動を求める人 |
| 新工場の立ち上げや設備の安定稼働にやりがいを感じる人 | 整備された教育制度のもとで育てられたい人 |
| 業績の波を理解したうえで事業の転換期に関わりたい人 | 安定した配当や右肩上がりの利益を前提に判断したい人 |
| 少数精鋭で職種横断的に動くことを楽しめる人 | 大企業の分業された環境で専門性だけを追いたい人 |
阿波製紙への転職|編集部の見解
編集部の見解として、阿波製紙は「働き方の条件と、財務の現状を天秤にかける会社」だと考えられます。残業月18.5時間・有給消化率83.1%・男性育休取得率92.3%という働き方の指標は、同規模の地方メーカーとしては明確に良い部類です。RO膜支持体と自動車濾材という、生活インフラを支えるニッチな技術領域を持っている点も、キャリアの独自性という意味では価値があります。一方で、2期連続の経常赤字(単体)、2期連続無配、自己資本比率21.9%という数字は事実として存在し、純利益7.5億円が補助金15億円という一過性要因によるものであることは会社自身が明言しています。総合すると、徳島県内で腰を据えて機能材の技術に関わりたい人にはおすすめできる一方、短期的な処遇改善や安定した業績を前提に転職先を選びたい人には、慎重な確認が必要と考えられます。判断の分かれ目は、2027年3月期の会社予想(売上206億円・営業利益6.9億円)が達成される道筋を、面接で自分なりに納得できるかどうかです。
阿波製紙に関するよくある質問(FAQ)
阿波製紙への転職・就職を検討する人から多い質問と、公式情報にもとづく回答をまとめました。
阿波製紙は何の会社ですか?
業種分類は「パルプ・紙」ですが、実質は機能材メーカーです。第112期の連結売上184億94百万円の内訳は水処理関連資材87億99百万円(47.6%)、自動車関連資材81億89百万円(44.3%)、一般産業用資材15億06百万円(8.1%)で、逆浸透膜(RO膜)の分離膜支持体用不織布と、自動車エンジン用濾材・クラッチ板摩擦材原紙が2本柱です(公式情報)。1916年に徳島県内初の機械抄き和紙メーカーとして創業し、1956年に和紙製造から転換した歴史があります。
阿波製紙の平均年収はいくらですか?
第112期の有価証券報告書によると、提出会社の平均年間給与は5,226,285円(約522.6万円)、平均年齢40.3歳、平均勤続年数16.5年です(公式情報)。これは提出会社480名の数字で、連結691名(うちタイ子会社211名)の平均ではありません。年収まとめサイトには509万円・523万円といった数値も掲載されていますが、集計基準の異なる二次情報です。
阿波製紙は赤字なのですか?
第112期の連結経常損益は△95百万円の経常損失で、提出会社単体では第111期△194百万円・第112期△509百万円と2期連続の経常赤字です(公式情報)。ただし当期純利益は補助金収入15億円の特別利益計上により753百万円の黒字で、会社は有価証券報告書で「一過性要因を含む」と説明しています。なお第112期の有価証券報告書に、継続企業の前提に関する注記および重要事象等の記載はありません。
新小松島工場ではどんな採用が行われていますか?
2025年3月竣工の新小松島工場向けに、1年で47名が新規採用され、提出会社の従業員数は433名から480名へ増えました(公式情報)。同工場の第112期末の従業員数は47名です。推定情報として、新工場の立ち上げに伴う製造オペレーター・生産技術系の採用が中心だったと考えられます。ただし立ち上げ期の増員である可能性が高く、同じ規模の採用が継続するかは求人情報で都度確認するのが確実です。
勤務地はどこになりますか。転勤はありますか?
国内の生産拠点は本社・徳島工場(徳島市南矢三町三丁目10番18号)、阿南事業所、小松島工場、新小松島工場と、すべて徳島県内にあります。営業拠点として東京都中央区日本橋に東京支店があります(公式情報)。推定情報として、製造・技術系は徳島県内の事業所間異動、営業系は東京支店を含む異動の可能性があると考えられます。海外はタイの連結子会社があり、駐在の機会があるかは面接で確認するのが確実です。
配当が無配ですが、待遇への影響はありますか?
第111期・第112期と2期連続で無配です(公式情報)。配当と従業員の賃金は別の意思決定ですが、平均年間給与の伸びが前期比+0.9%にとどまっていることも事実です。推定情報として、賞与原資が業績に連動する部分については当面の変動を見込んでおくのが安全です。内定時には労働条件通知書で、賞与の算定方法と過去の支給月数を確認することをおすすめします。
阿波製紙への転職判断まとめ
ここまでの内容を、判断軸ごとに整理します。最終的な判断は、求人票だけでなく自分の経験・適性も含めて確認しましょう。
| 判断軸 | 評価 |
|---|---|
| 事業の実態 | 「パルプ・紙」分類だが、売上の約92%は水処理膜支持体と自動車濾材。RO膜支持体が第112期に初めて主力に(公式情報) |
| 年収水準 | 有報の平均年間給与522.6万円・平均年齢40.3歳。伸びは前期比+0.9%(公式情報) |
| 働き方 | 残業月18.5時間・有給消化率83.1%と良好。男性育休取得率92.3%(口コミ傾向・公式情報) |
| 評価・処遇の納得感 | 人事評価の適正感2.4・待遇面2.6と低め。ただし回答者8名規模で信頼性は限定的(口コミ傾向) |
| 業績・財務 | 売上は5期で+23%だが2期連続経常赤字(単体)、自己資本比率21.9%、2期連続無配(公式情報) |
| 将来性 | 第5次中計で2029年3月期売上220億円・水処理比率約55%を目標。EV化と顧客集中がリスク(公式情報・推定情報) |
| 勤務地 | 国内生産拠点は全て徳島県内。全国転勤型ではない(公式情報) |
| おすすめできる人 | 徳島で機能材の技術を深めたい人。業績の波を理解したうえで転換期に関わりたい人(推定情報) |
どのサービスを使えばいいか決められないとき
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本記事の出典・参考情報
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免責事項:本記事の数値・評価は公式情報・口コミ集計・市場推定の3分類で示しており、口コミ傾向や推定情報は断定ではなく傾向・可能性として表現しています。株価指標(PER・PBR等)は二次情報にもとづく参考値です。最終判断は読者自身で公式IRおよび内定時の労働条件通知書で確認してください。
この記事の編集方針・情報の確認について
この記事は、公式公開情報(有価証券報告書・IR資料)、求人情報、口コミ傾向をそれぞれ分けて整理し、転職・就職判断に役立つよう編集しています。年収・平均年齢・平均勤続年数・従業員数などの中核データは、第112期 有価証券報告書「従業員の状況」を一次情報として確認し、口コミ・推定情報とは明確に区別しています。口コミスコアは媒体名と回答者数を併記し、母数が小さい場合はその旨を明示しています。記載内容は最終更新時点の公開情報にもとづきます。最新の正確な数値は各公式IRページでご確認ください。
