企業

ヤシマキザイの年収636万円と評判|eNPS△74.8を開示する鉄道商社の実像

コロ助

※本記事にはプロモーションを含みます。

この記事の結論

  • 年収:有価証券報告書の平均年間給与は636.6万円、平均勤続15.2年
  • 統制:2023年の不適切な会計処理を経て、内部統制は2025年6月に「有効」へ復帰
  • 社内の空気:会社開示のeNPSは△74.8。改善傾向だが水準は低い
  • 事業構造:仕入の51.6%が日立製作所、売上の約46%がJR3社

株式会社ヤシマキザイ(証券コード7677・東証スタンダード)は、鉄道車両向けの部品・機器を扱う専門商社です。転職検討者がこの会社を調べるとき、本当に知りたいのは「平均年収がいくらか」だけではありません。2023年に公表された不適切な会計処理とその後の是正がどこまで進んだのか、そして社員が会社をどう見ているのか——この2点は、求人票にも転職サイトにも書かれていない情報です。この記事では、第82期(2026年3月期)有価証券報告書という一次情報を軸に、会計処理を巡る問題の時系列、会社自身が公表するエンゲージメント指標、そして仕入・販売の両側で取引先が極端に絞られた事業構造を整理します。口コミと公式数値のどちらか一方に寄りかからず、両方を突き合わせて判断できる状態を目指します。

株式会社ヤシマキザイとは|日立製作所の商権を預かる鉄道部品の専門商社

最初に会社の輪郭を押さえます。転職検討者にとって重要なのは「何を売っている会社か」ではなく、誰から仕入れて、誰に売っているかです。ヤシマキザイはその両側が極端に絞られており、これが年収・働き方・将来性のすべてに影響しています。

同社は1948年10月に「八洲器材株式会社」として設立されました(発起人7名・資本金25万円)。創業時の事業は鉄道・船舶・鉱山・土木・農業用機械器具の製作、販売、修理です。旧国鉄(現在のJR各社)との取引を基盤に全国11拠点へ展開し、2013年12月に商号を「株式会社ヤシマキザイ」へ変更しました。検索候補に出る「ヤシマ機材」「八洲機材」「八洲器材株式会社」は、いずれも旧社名またはその表記ゆれで、同一の企業を指します。社名の響きが似た別企業(ザイマックス、ヤマシタなど)とは資本関係のない、まったく別の会社です。

本社は東京都中央区日本橋兜町6番5号で、2013年11月に現在地へ移転しています。2019年6月に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2022年4月の市場区分見直しでスタンダード市場へ移行しました。資本金は99,900千円(約1億円)、発行済株式総数は2,880,000株です。

事業セグメントは「鉄道事業」と「一般事業」の2つ

有価証券報告書によると、第82期(2026年3月期)の連結売上高33,864,554千円のうち、鉄道事業が31,362,256千円(全体の92.6%)、一般事業が2,502,297千円(同7.4%)です。会社の実態はほぼ鉄道一本と理解して差し支えありません。

  • 鉄道事業:インバーター・モーター等の電気用品、ブレーキ・ドア開閉装置・座席・空調・パンタグラフ部品等の車体用品、ディーゼル機関車向け内燃用品、発変電設備、運行管理・旅客案内システム、車両基地の検修設備、鉄道用コネクタなど
  • 一般事業:産業機械向け・自動車向けのコネクタや電子部品

商社としての付加価値は「安く仕入れて高く売る」ことではありません。常時4,000点以上を在庫として保有するストック機能、納期調整、車両トラブル時の即応対応が価値の源泉です。鉄道車両は数十年単位で使われるため、生産終了品の確保や代替品の提案といった、カタログ販売では成立しない仕事が中心になります。海外は中国(上海)、インド(デリー、ムンバイ、ベンガルールの合弁)、フィリピン、ベトナム、インドネシア等に拠点を持ち、ODAによる鉄道インフラ案件にも参画しています。

「ヤシマキザイ 日立」が検索される理由

サジェストに「ヤシマキザイ 日立」が挙がるのは、同社が日立製作所の販売代理店だからです。1965年に旧国鉄向けの販売代理店となり、1983年に総合特約店へ昇格した歴史があります。後述するとおり第82期の連結仕入高に占める日立製作所の比率は51.6%で、有価証券報告書自身がこれをリスク要因の筆頭に記載しています。転職者の実務に引き直せば、「日立の鉄道関連製品の商権を預かり、それをJR各社や私鉄に届ける仕事」が職務の中心になると考えられます(推定情報を含みます)。

株式会社ヤシマキザイの公式データ一覧(有価証券報告書ベース)

本記事で扱う公式数値を一覧で確認できます。すべて第82期(2026年3月期)有価証券報告書に基づく公式情報です。最新の正確な数値は公式IRページで再確認してください。

項目内容
商号株式会社ヤシマキザイ(旧商号:八洲器材株式会社)
証券コード/市場7677/東京証券取引所スタンダード市場
本社所在地東京都中央区日本橋兜町6番5号
設立1948年10月(2013年12月に現商号へ変更)
代表者代表取締役社長執行役員 関 正一郎(2026年4月1日就任)
平均年間給与約636.6万円(6,366千円/提出会社・前事業年度比+4.6%)
平均年齢43.7歳(提出会社)
平均勤続年数15.2年(提出会社)
従業員数連結268名(ほか平均臨時雇用人員17名)/提出会社246名
売上高338億6,455万円(連結・前期比+16.6%)
営業利益7億2,764万円(連結/前期は4,401万円の営業損失)
経常利益7億5,856万円(連結/前期は5億1,197万円の経常損失)
当期純利益5億238万円(親会社株主帰属/前期は5億963万円の純損失)
自己資本比率/ROE37.1%/5.1%
労働組合八洲器材労働組合(1974年7月6日結成・組合員130名)
初任給・年収レンジ有価証券報告書では開示されていない項目(公式採用ページの募集要項は外部採用管理システムへのリンク)
離職率・中途採用比率有価証券報告書では開示されていない項目
出典第82期(2026年3月期)有価証券報告書(2026年6月25日 関東財務局提出/EDINETコードE34499)

公式データ欄の数値はすべて有価証券報告書の実額です。一方で、初任給・職種別の年収レンジ・残業代の支給実態・離職率・中途採用比率は有価証券報告書では開示されていない項目であり、本記事でも推測値は示しません。この4項目は面接や労働条件通知書で直接確認すべき論点です。

ヤシマキザイの年収|有報636.6万円と口コミ484〜489万円の差をどう読むか

結論から書きます。公式の平均年間給与は636.6万円、口コミサイトの回答者平均は484〜489万円で、約150万円の差があります。この差は「どちらかが間違っている」のではなく、回答者の年齢層が会社全体より10歳以上若いことで説明できる可能性が高く、つまり同社の年功カーブの存在を示す材料になります。順を追って見ていきます。

公式の平均年間給与と4期推移

有価証券報告書「従業員の状況」によると、提出会社の平均年間給与は以下のとおり推移しています(賞与および基準外賃金を含む、公式情報)。

決算期平均年間給与前期比
第79期(2023年3月期)約610万円—
第80期(2024年3月期)約575万円約▲35万円
第81期(2025年3月期)約608万円約+33万円
第82期(2026年3月期)約636.6万円+4.6%(約+28万円)

4期を並べると、610万円→575万円→608万円→636.6万円と一度大きく落ちてから戻す動きになっています。第80期に下がり、第82期に過去4期で最高となる動きは、業績(第81期は最終赤字、第82期はV字回復)とおおむね連動しており、賞与の変動が平均給与に反映されやすい構造だと考えられます(推定情報)。固定給が毎年着実に積み上がるというより、業績連動部分が年収を上下させる会社と見るのが実態に近いでしょう。

あわせて重要なのが、平均年齢43.7歳・平均勤続15.2年という数字です。上場企業の平均勤続年数は12〜13年前後とされるため、同社は明確に長期定着型です。有価証券報告書には男女間賃金差異72%(女性は男性の72%水準)も開示されています。

口コミの平均年収484〜489万円との差

口コミ傾向として、OpenWorkでは回答者ベースの平均年収489万円(レンジ350〜700万円、回答者23人)、エン カイシャの評判では平均年収484万円(正社員24人回答、回答者の平均年齢31歳)と集計されています。有価証券報告書の636.6万円との差は約150万円です。

求職者
求職者

公式は636万円なのに、口コミだと484万円。どっちを信じればいいの?

この差の最大の要因は、回答者の平均年齢が31歳前後で、会社全体の平均年齢43.7歳より12歳ほど若いことにあると考えられます(推定情報)。平均勤続15.2年という定着の長さを踏まえると、20代〜30代前半の水準が480万円前後、40代以降が平均を押し上げて全体で636.6万円になる——という年功カーブが働いている可能性が高いといえます。口コミに「年功序列が強く昇給額が少ない」という投稿傾向があることとも方向性が一致します。

したがって、30代前半で転職する人が入社直後に636万円を得られると読むのは適切ではありません。逆に、長く在籍するほど平均に近づく設計であるとも読めます。どちらを魅力と感じるかは、キャリアの時間軸をどう置くかによって変わります。

転職時に確認すべき待遇の論点

公式に開示されていない部分は、選考の中で自分で埋める必要があります。有価証券報告書と口コミから逆算すると、確認の優先順位は次のようになります。

  • 賞与の変動幅:4期の平均給与が575万〜636.6万円で振れている以上、賞与が業績でどこまで動くのかを実額で確認したい
  • 昇給の刻み:年功色が強い設計であれば、入社時の等級・号俸が10年後の年収を決める。初回提示額の交渉余地が大きい
  • 残業代の支給実態:有価証券報告書では開示されていない項目。みなし残業の有無と時間数を労働条件通知書で確認する
  • 部署による繁閑差:後述のとおり、口コミでは部署による残業量の差が大きいという投稿傾向がある。配属予定部署の実態を面接で聞く

会計処理を巡る問題と、その後の是正|2023年から2025年までの時系列

同社を検討するうえで避けて通れないのが、2023年に公表された会計処理の問題です。ここは事実と、事実でないものを厳密に分けて整理します。先に結論を述べると、社内調査で認定されたのは「原価の付け替え」と「売上の先行計上」という2類型の不適切な会計処理であり、行政処分(課徴金納付命令等)や上場廃止措置が公表された事実は見当たりません。そして内部統制の評価は、3期にわたる「重要な不備」を経て2025年6月に「有効」へ復帰しています。

公表資料から追える時系列

会社の適時開示および有価証券報告書に基づく公式情報として、経緯は次のとおりです。

時期公表・記載された内容
2023年2月13日社内調査チームおよび弁護士による調査委員会を設置
2023年2月14日第3四半期決算発表の延期を公表
2023年3月31日調査報告書を受領。営業担当者による「原価の付け替え」と「売上の先行計上」の2類型の不適切な会計処理が、複数事業年度にわたり行われていたと認定
2023年4月4日「財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備に関するお知らせ」を開示(2022年3月期の内部統制報告書が対象)
2024年6月28日同趣旨の開示。2024年3月期(第80期)は「前年度に識別された重要な不備の一部が是正されていない」として、内部統制は有効でない旨を記載
2025年6月26日第81期の内部統制報告書で「有効」へ復帰
第82期(2026年3月期)会計監査人が有限責任監査法人トーマツから有限責任パートナーズ綜合監査法人へ異動

整理すると、2022年3月期・2023年3月期・2024年3月期の3期分の内部統制報告書で「開示すべき重要な不備」が記載され、4期目にあたる2025年6月提出分でようやく「有効」に戻ったという流れです。是正に3年近くを要したという事実は重く、同時に「戻したという事実がすでに存在する」ことも同じ重さで扱う必要があります。なお会計監査人の異動について、会社は「専門性・独立性・規模・品質管理体制・監査費用の相当性」を理由として説明しています。

会社が挙げた原因は、組織の質を測る一次データになる

転職検討者にとって価値があるのは、事案そのものより会社が自ら公表した「なぜ起きたか」のほうです。開示資料で挙げられた原因は次の3点です。

  • 赤字案件の計上回避と、業績目標達成への意識が現場に働いていたこと
  • 管理職が営業担当者を兼ねる場合に、自己承認が可能な承認経路が存在していたこと
  • 内部監査で一部が検出されていたものの、軽微と判断され経営陣へ伝達されなかったこと

この3点は、そのまま「組織の意思決定と統制の質」を測る材料になります。数字目標が現場の判断を歪める圧力になっていたこと、承認プロセスに構造的な穴があったこと、そして例外情報が上に上がらない伝達経路だったこと——いずれも、入社後に自分が置かれる環境を想像するうえで直接的な意味を持ちます。面接では「承認経路がどう変わったか」「内部監査で検出された事項が現在どう扱われているか」を確認する価値があります(推定情報を含む助言です)。

なお本記事では、会社の開示に登場する関係者を個人としても役職としても特定しません。公表資料で述べられているのは当時の経営管理部門の統制機能に関する評価であり、特定の人物の資質を論じることは転職判断に必要な情報ではないためです。

中国子会社の取引と、上場維持基準の推移

調査の過程では、連結子会社である亜西瑪(上海)貿易有限公司において、仕入先と得意先が実質的に一体であり取引実在性に疑義のある取引が識別されました。当該売上は取り消され、2023年6月に取引が停止されています。第82期末時点でも、流動の貸倒引当金134,400千円・固定の貸倒引当金96,708千円を計上して債権回収が続いている状態です。海外子会社のガバナンスが引き続き論点として残っていることを示す数字といえます。

上場維持基準についても記載があります。2023年3月末時点で流通株式比率が基準(25%以上)を下回り、2023年6月14日に「上場維持基準の適合に向けた計画書」を東京証券取引所へ提出しました。第82期有価証券報告書の「事業等のリスク」によると、2024年3月31日以降は全項目で基準を充足しています。背景には株主構成の特殊性があり、筆頭株主である創業家を委託者兼受益者とする管理信託(受託者はSMBC信託銀行)が31.32%、第2位のHSBCシンガポール・プライベートバンキング名義が27.29%(実質保有者は香港のGLOBAL MANAGEMENT PARTNERS LIMITEDで、純投資目的として大量保有報告)を占め、上位10名で84.16%という構造です。2026年9月時点で、TOBや非公開化が公表された事実は見当たりません。

会社が公表するeNPS△74.8|口コミの低評価と一次データが一致している

この記事で最も注目すべきデータがここです。ヤシマキザイは有価証券報告書のサステナビリティ項目で、eNPS(職場推奨度=従業員が自社を知人に勧めたいかを示す指数)を自ら開示しています。上場企業でも開示例が多いとはいえない指標を、しかも極めて低い値のまま公表している点は、それ自体が同社の情報開示姿勢を表しています。

eNPSの3年推移は「低いが、改善している」

有価証券報告書によると、eNPSの推移は次のとおりです(公式情報)。

年度eNPS(職場推奨度)前年からの変化
2023年度△81.3—
2024年度△78.3+3.0ポイント
2025年度△74.8+3.5ポイント

eNPSは推奨者の割合から批判者の割合を引いた指標で、理論上は△100〜+100の範囲を取ります。△74.8は「勧めない」と答えた層が圧倒的多数を占める水準です。ただし、この数値の読み方は2通りあります。

  • ネガティブに読む:現時点の社員満足度は相当に低い水準にあり、入社後に同じ不満を抱く可能性は否定できない
  • ポジティブに読む:3年連続で改善しており、しかも都合の悪い数値を隠さず開示し続けている。不適切な会計処理の反省が開示姿勢に反映されているとも解釈できる

編集部の見解として、この2つは両立します。数値の絶対水準は転職判断のリスク材料であり、公表を継続している事実は評価材料です。少なくとも、入社してみたら社内の空気がまったく違った、という事態は起こりにくい会社だといえるでしょう。

口コミの評価項目は「風通し3.7/人事評価2.5」に割れている

会社が公表するeNPSと、社外の口コミは方向性が一致します。口コミ傾向として、OpenWorkの総合評価は2.85/5.0(回答者23人)、エン カイシャの評判の総合評価は3.1(正社員24人回答・口コミ総数137件)です。項目別に見ると評価がはっきり割れています。

評価が高い項目評価が低い項目
風通しの良さ 3.7(OpenWork)人材の長期育成 2.5(OpenWork)
仕事を通じた社会貢献 3.4(エン)人事評価の適正感 2.5(OpenWork)
有給消化率 77.6%(OpenWork)社員の士気 2.5(OpenWork)
月間残業 17.6時間(OpenWork)/月平均20時間(エン)会社の成長性・将来性 2.7、実力主義 2.6(エン)

投稿の傾向をまとめると、ネガティブ側は「昭和的で古い体質」「年功序列が強く昇給額が少ない」「人事評価が不透明」「部署による残業量の差が大きい」に集中しています。特に残業については、まったく残業がない部署と多い部署が併存するという投稿傾向がある点に注意が必要です。平均17.6時間という数字は、部署差を均した結果である可能性があります。

一方でポジティブ側は「風通しは良い」「鉄道インフラを支える社会貢献性がある」「残業は総じて多くない」「有給は取りやすい」という声です。待遇や評価制度への不満が中心で、労働時間や人間関係への不満が中心ではない——という分布は、eNPSの低さが「働き詰めでつらい」型ではなく「処遇と成長実感が満たされない」型である可能性を示唆します(推定情報)。ただし回答者は20名台であり、母数が小さい点は割り引いて読む必要があります。

女性管理職2.4%・男性育休50%という人的資本KPI

有価証券報告書には、提出会社の人的資本KPIも開示されています(公式情報)。

  • 女性管理職割合 2.4%(前年2.6%から低下/目標7.0%以上)
  • 女性労働者割合 28.9%、女性総合職割合 29.2%
  • 育児休業取得率 女性100%/男性50%(前年66.7%から低下/目標100%)
  • 男女間賃金差異 72%
  • コンプライアンス研修受講率 100%

注目すべきは、入口(女性労働者28.9%・女性総合職29.2%)は開いているのに、管理職が2.4%にとどまるという構造です。総合職として約3割の女性が在籍しながら管理職比率が一桁前半という状態は、目標値7.0%との距離も含めて、登用のパイプラインに課題が残っていることを示します。男性育休取得率も前年66.7%から50%へ低下しており、目標100%との差は大きいままです。これらは会社が自ら目標未達として開示している数値であり、面接で改善の具体策を尋ねる根拠になります。

事業構造の核心|仕入の51.6%が日立、売上の46%がJR3社

ヤシマキザイという会社を一言で表すなら、川上も川下も極端に絞られた商社です。この構造は安定と脆さの両方を同時に生みます。転職判断では、この二面性をどう評価するかが分かれ目になります。

川上:連結仕入高の51.6%が日立製作所1社

有価証券報告書によると、第82期の連結仕入高に占める日立製作所の比率は51.6%です。会社はこれを「特定仕入先への依存によるリスク」として事業等のリスクの筆頭に記載しています。1965年に旧国鉄向けの販売代理店となり、1983年に総合特約店へ昇格した長い取引関係が背景にあります。

これを転職者の視点に翻訳すると、次のようになります。

  • プラス面:巨大メーカーの商権を長年預かる立場は、簡単には代替されない。参入障壁が高く、営業が「ゼロから開拓する」性質の仕事ではない
  • マイナス面:仕入先の販売政策・製品戦略の変更が、そのまま自社の売上に直結する。自社でコントロールできない変数が事業の半分を占める

川下:JR3社で連結売上の約46%

販売側も同様です。第82期の連結売上に占める比率は、JR東日本18.2%、JR西日本13.9%、JR東海13.9%=3社で約46%です。仕入の半分が1社、売上の半分が3社という構造は、一般的な専門商社と比べても寡占度が高いといえます。

取引の位置集中度転職判断への意味
仕入(川上)日立製作所 51.6%商権の安定=参入障壁。同時にメーカー方針への依存
売上(川下)JR東日本18.2%・JR西日本13.9%・JR東海13.9%鉄道事業者の設備投資計画が業績を左右する
セグメント鉄道事業が売上の92.6%事業分散はほぼ効いていない

この構造で働くということは、「新規開拓の量」ではなく「既存の巨大取引先との関係の質」で評価される仕事に就くことを意味します(推定情報)。飛び込み営業や新規リード獲得を得意とする人には物足りず、逆に長期の信頼関係構築や複雑な調整を得意とする人には向く可能性が高い環境です。口コミで「実力主義2.6」という評価が出ているのも、この構造と無関係ではないと考えられます。

246名で売上338億円という高効率と、その裏側

提出会社の従業員は246名です。単体売上高33,443,161千円で割ると、1人あたり売上高は約1.4億円になります。在庫を持ちながら4,000点以上の商品を回す代理店型商社の典型的な効率です。

ただし、この効率は中期経営計画のKPIにそのまま織り込まれています。会社が掲げるKPIは「営業人員1人当たり売上総利益」(目標20百万円/人、第82期実績23.2百万円で達成率116%)と「営業人員比率」(目標66.6%、第82期実績64.0%)です。人数を増やさずに1人あたりの生産性を上げる方針が有価証券報告書に明記されているということは、裏返せば1人あたりの担当領域が広がり続ける前提でもあります。少数精鋭を魅力と取るか、負荷と取るかは人によって分かれるところです。

業績と将来性|V字回復の中身と、会社自身が示す翌期の反動減リスク

第82期は数字だけ見れば良い決算です。しかし「過去最高だから安泰」と読むのは適切ではありません。増収の要因のなかに、翌期の反動減につながるものが会社自身の説明として含まれているためです。

第82期はV字回復。ただし前期は最終赤字だった

有価証券報告書および決算開示によると、直近2期の比較は次のとおりです(公式情報)。

項目第81期(2025年3月期)第82期(2026年3月期)
連結売上高約290億円338億6,455万円(+16.6%)
営業利益4,401万円の営業損失7億2,764万円
経常利益5億1,197万円の経常損失7億5,856万円
当期純利益5億963万円の純損失5億238万円
1株配当25円(赤字でも維持)25円(配当性向14.3%)

売上の推移は、第78期283億円→第79期255億円→第80期277億円→第81期290億円→第82期338.6億円です。第79期に一度落ち込んだ後、3期連続で増収しています。

第81期が最終赤字となった主因は、営業ではなく海外案件の損失です。インドのパートナー企業向けスタンドバイLCに係る債務保証損失引当金繰入385,000千円と、貸倒引当金繰入226,081千円(いずれも営業外費用)が計上され、合弁向けの債務保証履行138百万円も発生しました。第82期末時点でも債務保証損失引当金376,200千円が残っています。ODAを含む鉄道インフラ案件で海外へ出るという戦略は、そのままリスクとして財務に跳ね返りうる——という鉄道商社の海外展開のリアルを示す事例です。

増収要因に含まれる「前倒し」を見落とさない

会社の説明によると、第82期の増収要因は主に2つです。

  • 大阪・関西万博やインバウンド需要で鉄道事業者の運輸収入が改善し、設備投資が増加したこと
  • 一部顧客の製造・修繕計画の前倒しにより、翌期以降に想定していた案件が当期に集中したこと

2つ目は、会社自身が翌期の反動減リスクを示唆していると読むべき記述です。前倒しで当期に積み上がった分は、翌期には存在しません。第82期の数字だけを見て将来性を評価すると、判断を誤る可能性があります。転職検討者としては、第83期(2027年3月期)の会社計画と四半期の進捗を確認したうえで判断するのが妥当です。

中期経営計画は目標を先行達成、財務は実質無借金に近い

中期経営計画(2024〜2026年度)の最終年度である2027年3月期の目標は、売上高320億円・営業利益6億円・経常利益7.1億円・純利益4.6億円・ROE5%超です。第82期時点で売上・利益とも目標を先行達成しています。目標を1年前倒しで超えたことは評価できる一方、次の目標がどこに置かれるかは今後の開示を待つ必要があります。

財務面は堅牢です。現金及び現金同等物の期末残高は94億7,005万円(総資産27,783,614千円の約34%)で、支払利息は年間18千円と、実質無借金に近い状態です。自己資本比率37.1%、ROE5.1%、1株当たり純資産3,583.56円。配当は過去5期連続で年25円を維持しており、最終赤字だった第81期も減配していません。雇用の継続性という観点では、手元資金の厚さは安心材料といえます。ただし裏を返せば、資本効率(ROE5.1%)は高いとはいえず、成長投資よりも安全性を優先した財務運営であるとも読めます(推定情報)。

同規模の卸売・専門商社上場企業との比較|同じ「商社」でも構造がまったく違う

年収や利益率の水準は、単体で見ても意味がありません。ここでは、同時期に有価証券報告書を提出している卸売・専門商社の上場企業と並べて、ヤシマキザイの位置を確認します。数値はいずれも各社の直近有価証券報告書・決算開示に基づく公式情報ですが、決算期が異なるため単純比較はできません。

企業名(コード)対象決算期売上高営業利益(利益率)平均年間給与従業員数
ヤシマキザイ(7677)2026年3月期338.65億円(+16.6%)7.28億円(約2.1%)636.6万円連結268名/単体246名
白銅(7637)2026年3月期681.00億円(+2.6%)28.72億円(4.2%)777.6万円連結401名/単体322名〔臨時364名〕
オーウエル(7670)2026年3月期682.68億円(▲1.7%)12.61億円(1.8%)685.7万円連結618名/単体370名
ダイコー通産(7673)2026年5月期219.84億円(+1.2%)12.65億円(5.8%)674.0万円140名(非連結)
杉田エース(7635)2025年3月期(上場最終期)756.61億円(+2.6%)8.30億円(1.1%)573.9万円連結623名/単体504名
アイスコ(7698)2026年3月期577.16億円(+5.5%)7.82億円(1.4%)442.1万円単体868名

比較表の注記(必ずお読みください)

  • 決算期が異なります。ダイコー通産は2026年5月期、杉田エースは2025年3月期の数値です。同じ年の景況を比較したものではありません。
  • 杉田エースは2026年3月24日をもって東証スタンダード市場を上場廃止し、非公開化しています。表の数値は上場中最後のフル開示である2025年3月期のもので、他社と基準が異なります。
  • 従業員規模が違えば口コミの母数も違います。ヤシマキザイの口コミは回答者20名台であり、大手企業の集計値と同じ精度では扱えません。

この並びで見ると、ヤシマキザイの位置づけがはっきりします。売上規模は6社中最小クラスながら、平均年間給与636.6万円は中位、営業利益率2.1%も中位です。売上高では白銅・オーウエルの半分程度ですが、従業員数はそれ以上に少ないため、1人あたりで見ると効率は高い部類に入ります。一方、増収率+16.6%は6社中で突出しており、これは前述の「前倒し要因」を含む数字である点を思い出す必要があります。

鉄道インフラという領域で転職先を並べるなら、日本信号(6741・東証プライム)や京三製作所(6742・東証プライム)といった鉄道信号・保安システムのメーカー、バス・鉄道向け機器のレシップホールディングス(7938・東証スタンダード)などが検討対象になりやすいでしょう。ただし、これらはメーカーであり、商社であるヤシマキザイとは職務内容が大きく異なります。「鉄道に関わりたい」のか「商社として調達・供給の要になりたい」のかで、選ぶべき会社は変わります(推定情報)。

働き方と職場環境|労働組合あり、残業は部署差が大きいという投稿傾向

労働環境については、公式情報と口コミの両方に手がかりがあります。まず公式情報として、有価証券報告書には「八洲器材労働組合」(1974年7月6日結成、組合員130名/2026年3月31日現在)が存在し、労使関係は良好である旨が記載されています。単体246名に対して組合員130名という比率は、管理職層を除けば多くの一般社員が組合に属していると読めます。労働条件の変更に組合という交渉チャネルが存在することは、待遇の安定性という観点で評価材料になります。

従業員の内訳は、連結268名(ほか平均臨時雇用人員17名)に対し、セグメント別で鉄道事業198名(臨時13名)、一般事業35名(臨時4名)、全社共通35名です。提出会社単体246名に対して連結268名という差の22名は、主に上海現地法人と物流子会社の従業員であり、公式データ欄の平均年間給与636.6万円の算定対象には含まれません。同社は持株会社ではなく事業会社本体であるため、単体246名の平均給与は現場社員の実態をかなり反映していると考えられます(推定情報)。持株会社形態の企業でよく起きる「本社だけ高い平均年収」という歪みは、この会社では相対的に小さいはずです。

労働時間について、口コミ傾向ではOpenWorkの月間残業17.6時間、エン カイシャの評判の月平均20時間という集計が示されています。有給消化率は77.6%(OpenWork集計)です。数字だけを見れば穏当ですが、投稿には「部署による残業量の差が大きい」「まったく残業がない部署と多い部署がある」という指摘が繰り返し登場します。平均値は部署差を均した結果であるため、配属先によって実感は大きく変わる可能性があります。

鉄道車両の部品供給という業務の性質上、車両の検査・修繕スケジュールや納期に業務量が左右されることは想像に難くありません。選考では「配属予定部署の繁忙期がいつで、その時期の実働がどの程度か」を具体的に確認することが、平均残業時間を聞くより有効です。また平均勤続15.2年という定着の長さは、少なくとも「短期間で人が辞め続ける職場ではない」ことを示す客観的な指標として読めます。

ヤシマキザイに関するよくある質問

検索で実際に調べられている内容に絞って回答します。公式に開示されていない項目については、推測ではなく「開示されていない」と明示します。

ヤシマキザイの平均年収はいくらですか?

第82期(2026年3月期)有価証券報告書によると、提出会社の平均年間給与は約636.6万円(6,366千円、前事業年度比+4.6%)です。賞与および基準外賃金を含みます。平均年齢43.7歳、平均勤続年数15.2年の集団の平均値であるため、若手層の実際の年収はこれより低い水準になる可能性が高い点にご留意ください(推定情報)。

「ヤシマ機材」「八洲機材」は同じ会社ですか?

はい、同一の企業を指します。同社は1948年10月に「八洲器材株式会社」として設立され、2013年12月に「株式会社ヤシマキザイ」へ商号を変更しました。検索候補に出る「ヤシマ機材」「八洲機材」は旧社名の表記ゆれです。なお社名の響きが似た別の企業とは資本関係がありません。

日立製作所との関係はどのようなものですか?

日立製作所の販売代理店です。1965年に旧国鉄向けの販売代理店となり、1983年に総合特約店へ昇格しました。有価証券報告書によると、第82期の連結仕入高に占める日立製作所の比率は51.6%で、会社はこれを特定仕入先への依存リスクとして開示しています。資本関係を示す記載はなく、あくまで取引上の関係です。

中途採用は行っていますか?初任給はいくらですか?

公式採用サイトに新卒・キャリア採用の案内があり、実際の募集要項は外部の採用管理システム上で公開されています。ただし初任給・給与レンジ・中途採用比率は有価証券報告書では開示されていない項目であり、本記事では推測値を示しません。募集要項および内定時の労働条件通知書で必ずご確認ください。従業員246名(提出会社)という規模から、採用枠は年間で多くない可能性があります(推定情報)。

過去の会計処理の問題は、いま転職するうえでどう考えればよいですか?

事実関係としては、2023年3月31日の調査報告書で「原価の付け替え」「売上の先行計上」という2類型の不適切な会計処理が認定され、2022年3月期から2024年3月期までの内部統制報告書で「開示すべき重要な不備」が記載されました。その後2025年6月26日提出の第81期内部統制報告書で「有効」へ復帰しています。行政処分(課徴金納付命令等)や上場廃止措置が公表された事実は見当たりません。転職判断としては、「問題が起きた事実」と「是正が完了したと報告されている事実」の両方を踏まえ、面接で承認プロセスや内部監査の運用がどう変わったかを確認するのが現実的です。

本社や拠点はどこにありますか?

本社は東京都中央区日本橋兜町6番5号です(2013年11月に現在地へ移転)。国内は全国11拠点に展開し、海外は中国(上海)、インド(デリー、ムンバイ、ベンガルールの合弁)、フィリピン、ベトナム、インドネシア等に拠点を持ちます。転勤の範囲や頻度については有価証券報告書では開示されていないため、募集要項で確認してください。

ヤシマキザイへの転職判断まとめ

ここまでの情報を判断軸ごとに整理します。公式情報と口コミ傾向、そして推定情報を分けて記載していますので、自分が重視する軸から読んでください。

判断軸評価と根拠
年収水準有価証券報告書の平均年間給与636.6万円は同規模の卸売上場企業のなかで中位。ただし平均年齢43.7歳の平均値であり、若手層の実額は口コミの484〜489万円に近い可能性がある
雇用の安定性現金94億7,005万円(総資産の34%)で実質無借金に近く、赤字期も減配なし。平均勤続15.2年という定着の長さも客観的な材料
社内の満足度会社開示のeNPSは△74.8(3年連続で改善中だが水準は低い)。口コミの総合評価2.85〜3.1とも整合する
ガバナンス2023年に不適切な会計処理を公表、3期分の内部統制報告書で「重要な不備」を記載。2025年6月に「有効」へ復帰。行政処分等が公表された事実は見当たらない
事業構造仕入の51.6%が日立製作所、売上の約46%がJR3社。参入障壁の高さと依存リスクが表裏一体
成長性第82期は+16.6%の増収でV字回復。ただし増収要因に案件の前倒しが含まれ、会社自身が翌期の反動を示唆している
働き方労働組合あり、有給消化率77.6%・月間残業17.6時間(いずれも口コミ集計)。ただし部署による残業差が大きいという投稿傾向がある
多様性・登用女性労働者28.9%に対し女性管理職2.4%(目標7.0%)、男性育休取得率50%(目標100%)。いずれも会社が未達として開示

これらを踏まえ、適性を整理すると次のようになります(推定情報を含みます)。

向いている可能性が高い人慎重に検討したほうがよい人
鉄道インフラという社会基盤に長期で関わりたい人短期で成果を出して昇給・昇格したい人(年功色が強いという投稿傾向がある)
既存の大口取引先との関係を深める調整型の営業が得意な人新規開拓の量で評価されたい人(仕入・販売とも取引先が絞られている)
少人数で1人あたりの裁量が大きい環境を望む人整備された育成プログラムを期待する人(人材の長期育成2.5という口コミ評価)
会社の課題が数値で開示されている透明性を評価する人eNPS△74.8という水準そのものに強い抵抗を感じる人
財務の安定性・雇用の継続性を重視する人急成長企業でストックオプション等の上振れを狙いたい人

編集部の見解として、ヤシマキザイは「静かに安定しているが、社員の満足度という点では課題を抱えており、しかもその課題を自ら数字で公表している会社」です。是正のプロセスが開示ベースで追える点は、同規模の非上場企業では得られない材料といえます。一方で、eNPS△74.8という水準、女性管理職2.4%、年功色の強い処遇といった論点は、入社前に自分の許容範囲かどうかを見極めるべき部分です。総合すると、会社の課題を理解したうえで長期の腰を据えられる人には検討価値があり、短期で環境と処遇を大きく変えたい人には他の選択肢と併せて比較することをおすすめします。

どのサービスを使えばいいか決められないとき

このサイトはアフィリエイトで収益を得ています。読者がサービスに登録すると当サイトに報酬が発生します。

自分の状況だとどのサービスが合うのか判断がつかない場合は、無料の相談を受け付けています。相談内容をうかがったうえで、条件に合いそうな転職サービスをご案内します。

登録や応募を急かすことはしません。 「いま動かないほうがいい」と考えた場合はそう伝えます。

→ 無料転職相談はこちら

※当サイトは職業紹介事業者ではありません。求人の紹介・あっせんは行わず、転職サービスのご案内までを行います。

本記事の出典・参考情報

本記事で参照した一次情報・口コミ情報の出典は以下の通りです。最新の正確な数値は各リンク先で確認してください。

公式情報源

口コミ・評判の参照元

免責事項:本記事の数値・評価は公式情報・口コミ集計・市場推定の3分類で示しており、口コミ傾向や推定情報は断定ではなく傾向・可能性として表現しています。最終判断は読者自身で公式IRおよび内定時の労働条件通知書で確認してください。

この記事の編集方針・情報の確認について

この記事は、公式公開情報(有価証券報告書・IR資料)、求人情報、口コミ傾向をそれぞれ分けて整理し、転職・就職判断に役立つよう編集しています。年収・平均年齢・平均勤続年数・従業員数などの中核データは第82期(2026年3月期)有価証券報告書「従業員の状況」を一次情報として確認し、口コミ・推定情報とは明確に区別しています。会計処理を巡る経緯については、会社の適時開示および有価証券報告書の記載に限って事実を記述し、公表資料に記載のない事柄や関係者個人の評価は扱っていません。記載内容は最終更新時点の公開情報にもとづきます。最新の正確な数値は各公式IRページでご確認ください。

著者紹介
コロ助
コロ助
企業と転職サービスを、有価証券報告書などの一次情報から読んでいます。
著者紹介
記事URLをコピーしました