小津産業の年収696万円と評判|1653年創業・従業員86名の不織布商社の実像
※本記事にはプロモーションを含みます。
この記事の結論
- 正体:1653年創業の和紙問屋が源流。今は売上の97.6%が不織布の専門商社
- 年収:有報696.9万円は単体86名の平均。子会社245名には当てはまらない
- 直近業績:2026年5月期は営業利益+36.5%。AI・データセンター需要が寄与
- 注意点:自己資本比率74.5%と堅牢な一方、ROE3.2%・PBR0.79倍と市場評価は低い
小津産業(証券コード7487・東証スタンダード)を検索すると、上位に並ぶのは株価・株主優待・配当といった投資家向けの話題です。しかしこの記事が扱うのは、投資判断ではなく転職・就職の判断材料です。1653年(承応2年)創業という370年超の歴史を持ちながら、従業員は提出会社(単体)でわずか86名。半導体工場やデータセンター、製薬の現場で使われる不織布ワイパーを扱い、2026年5月期には営業利益が前期比+36.5%と大きく伸びました。この記事では、第115期(2026年5月期)有価証券報告書の実額を軸に、「小さいのに堅い会社」の中身と、転職先として見たときの確認ポイントを整理します。なお、三重県松阪市の「紙小津産業」は当社とは別会社です。検索結果や口コミサイトで混在しやすいため、社名を最後まで確認してください。
小津産業とは何の会社か|江戸の和紙問屋が、半導体とデータセンターの現場に立つまで
結論から言えば、小津産業は「紙の会社」ではありません。半導体・電子部品・製薬・食品などの工場で使われる不織布ワイパーやクリーン用品を、企画・調達・加工・販売する専門商社です。転職検討者がまず押さえるべきは、社名や創業年から受ける「和紙・老舗」のイメージと、実際の売上構成がまったく違うという点です。
公式情報として整理すると、起源は1653年(承応2年)、伊勢松阪出身の商人が江戸・大伝馬町で開いた和紙問屋「小津屋」にさかのぼります。現在の株式会社としては1939年に和洋紙貿易部門を分離して設立されました。本社は東京都中央区日本橋本町三丁目6番2号で、創業地である大伝馬町のすぐ近く。ほかに大阪支店(大阪市中央区瓦町)、埼玉第一物流センターなどを構えています。
事業は用途別に4分野へ整理されています。
- クリーン分野:半導体・電子・食品・製薬工場向けのクリーンルームワイパー等。同社の中核領域
- ウェルネスケア分野:医療・介護・化粧品向けのOEM。子会社ディプロ(愛媛)がウェット製品を製造
- エコプロダクツ分野:鉄鋼・電力・建設向けの除染布「五大力」や油吸着材オイルテイカー
- コンシューマー分野:除菌ウェット・マスク・メガネクリーナーなど一般消費者向け商品
売上の97.6%が不織布事業という単一セグメント型
第115期(2026年5月期)有価証券報告書によると、連結売上高107億39百万円のうち不織布事業が104億81百万円を占め、残る「その他」(過酢酸製剤・不動産賃貸)は2億58百万円にとどまります。比率にすると約97.6%で、実質的な単一セグメント企業です。
ここは転職判断で効いてくるポイントです。事業が1本に絞られている会社は、意思決定が速く専門性が深まりやすい一方、その市場が冷えたときの逃げ場が少なくなります。同社はこの数年、家庭紙・日用雑貨卸のアズフィットをセンコーグループホールディングスへ段階譲渡(2021年に80%、2026年5月に残る全株式)し、不織布への「選択と集中」を完了させました。推定情報ですが、入社後に関わる仕事の幅は「複数事業をまたぐ」のではなく「不織布という一つの素材を深く掘る」方向になると考えられます。
また、単なる仲介型の卸ではなく加工機能を持つ点も特徴です。旭化成との合弁会社「旭小津」(1973年設立、2024年1月に66%を取得して連結子会社化)が加工を担い、ほかに日本プラントシーダー(種子テープなどの農業資材)、小津(上海)貿易、エンビロテックジャパン(過酢酸製剤)がグループに属します。
「紙小津産業」(三重県松阪市)は別会社です
検索・口コミ確認の際に最も事故が起きやすいのがここです。公式情報として、東証スタンダード上場の当社(小津産業株式会社・EDINETコードE02842)と、三重県松阪市の「紙小津産業」はまったくの別法人です。OpenWorkでも両社は別ページとして存在し、口コミ件数もスコアも異なります。求人票・口コミ・平均年収データを見るときは、必ず所在地と証券コード7487を確認してください。
小津産業の公式データ一覧(第115期・2026年5月期 有価証券報告書ベース)
本記事で扱う公式数値を一覧で確認できます。公式情報として、最新の正確な数値は公式IRページで再確認してください。同社の決算期は5月末で、他の卸売業各社(多くは3月期)と比べる際は対象期のずれに注意が必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商号 | 小津産業株式会社(OZU CORPORATION) |
| 証券コード/市場 | 7487/東証スタンダード(2023年10月にプライムから自主移行) |
| 本社 | 東京都中央区日本橋本町三丁目6番2号 |
| 創業/設立 | 1653年(承応2年)創業/1939年設立 |
| 対象決算期 | 第115期(2025年6月1日〜2026年5月31日=2026年5月期) |
| 平均年間給与 | 696万9千円(提出会社・前期比+2.9%) |
| 平均年齢 | 42.3歳 |
| 平均勤続年数 | 14.5年 |
| 従業員数 | 提出会社(単体)86名〔外、臨時雇用者12名〕/連結245名〔外、臨時93名〕 |
| 売上高 | 連結107億39百万円(前期比+5.1%)/提出会社単体81億10百万円 |
| 営業利益 | 連結5億87百万円(前期比+36.5%/売上高営業利益率5.5%) |
| 経常利益・純利益 | 経常8億08百万円(+44.5%)/親会社株主帰属当期純利益6億10百万円(+49.4%) |
| 財務指標 | 自己資本比率74.5%/現預金約96億円/有利子負債約25.7億円/ROE3.20% |
| 配当 | 1株30円(普通27円+上場30周年記念配当3円)、配当性向62.5% |
| 労働組合 | 有価証券報告書上、労働組合は結成されていない |
| 離職率・職種別年収 | 有価証券報告書では開示されていない |
| 出典 | 第115期 有価証券報告書(2026年8月25日提出・EDINET)/公式IR |
従業員86名で単体売上81億円|「連結245名」との差が転職判断に効く
この会社を理解する最短の切り口は、86名と245名という2つの数字の差です。ここを混同すると、年収も働き方も読み違えます。
公式情報として、第115期有価証券報告書の「従業員の状況」には、提出会社(単体)86名〔外、臨時雇用者12名〕、連結245名〔外、臨時93名〕と記載されています。つまりグループ245名のうち、本体で働くのは86名だけです。残りの約160名は、愛媛でウェット製品を製造するディプロ、種子テープの日本プラントシーダー、加工を担う旭小津などの子会社に属します。
この構造から言えることは3つです。
- 年収の解釈:有報の平均年間給与696.9万円は提出会社86名の平均であり、製造子会社の従業員には当てはまりません(詳細は次章)
- 仕事の性質:単体売上81億10百万円を86名で回している計算になり、1人当たりの取扱高は大きくなります。商社型ビジネスでは在庫・物流・加工を外部やグループに委ねられるため、この比率自体は珍しくありませんが、推定情報として、1人が担当する顧客・商材の範囲は広くなりやすいと考えられます
- 応募先の確認:求人が「小津産業株式会社」なのか「グループ会社」なのかで、給与テーブルも勤務地も変わります。応募時に必ず雇用主体を確認してください
勤務地についても、本体は日本橋の本社と大阪支店、埼玉第一物流センターなどに限られます。全国数十拠点を持つ卸売業と違い、推定情報ですが広域転勤の頻度は相対的に低いと考えられます。ただし転勤の有無・範囲は募集職種ごとに異なるため、労働条件通知書での確認が前提です。
小津産業の年収|有報696.9万円は「単体86名の平均」と理解する
年収は「いくらか」より「誰の平均か」を押さえたほうが判断を誤りません。順を追って整理します。
まず公式情報です。第115期有価証券報告書によると、提出会社の平均年間給与は696万9千円(前事業年度比+2.9%)。この数字は税込の支払給与額で、基準外賃金(残業代等)と賞与を含みます。あわせて平均年齢42.3歳、平均勤続年数14.5年と記載されています。
平均勤続14.5年という数字は、この規模の企業としては長い部類です。推定情報として、696.9万円という平均は「40代前半・勤続15年前後の社員が中心の集団の平均」であり、20代・30代前半の実額はこれより低い水準になると考えられます。転職時の提示額を平均値と同一視しないことが重要です。
前期との比較|97名・677万円から86名・696.9万円へ
年収の伸びを読むうえで、母集団の変化も見ておく必要があります。二次ソースの情報となりますが、企業情報データベース(Yahoo!ファイナンス企業情報)に掲載された前期・第114期(2025年5月期)の数値は、従業員97名・平均年齢42.9歳・平均年収677万円でした。これに対し第115期は86名・42.3歳・696.9万円です。
ここから読み取れるのは、+2.9%という増加率が、単純な一律ベースアップだけを意味しているとは限らないということです。従業員区分の変更(次章参照)によって母集団の構成が変われば、平均値も動きます。推定情報として、実際の昇給幅は個人の等級・コースによって差があると考えるのが自然です。面接段階では「平均年収」ではなく、自分が就く等級のレンジと賞与実績を確認してください。
口コミに出てくる年収傾向|そもそも件数が非常に少ない
ここは正直に書きます。小津産業は口コミの絶対数が極めて少ない企業です。口コミ傾向として確認できる範囲は次のとおりです。
- OpenWork:総合評価2.88/19件(同名の別会社「紙小津産業」のページと混同しないよう注意)
- 転職会議:総合3.54/15件。面接の質問内容に関する投稿が中心で、年収に関する記述は乏しい
- 就活会議:退職理由・離職率カテゴリに2件、総合3.5(年収・評価3.5/スキルアップ1.8/福利厚生5.0/ワークライフバランス3.5)
3サイト合計でも数十件規模で、1件の投稿が平均点を大きく動かす水準です。したがって、これらのスコアを「会社の実態」として一般化するのは適切ではありません。本記事では口コミを傾向の参考にとどめ、判断の主軸は有価証券報告書の実額に置いています。
転職時に確認しておきたい5つの給与関連ポイント
公式に開示されていない部分は、選考の場で自分で埋めるしかありません。推定情報を含みますが、以下を確認しておくと入社後のギャップを減らせます。
- 2025年6月に導入された4コース制のうち、自分がどのコースに位置づけられるか
- 賞与の算定方式(業績連動の比率と、直近数期の支給月数の実績)
- 役職定年制の適用年齢と、その後の給与の考え方
- 在宅勤務制度の運用実態(対象職種・週あたり日数)
- グループ会社への出向・転籍の可能性と、その場合の処遇の扱い
2026年5月期は営業利益+36.5%|AI・データセンター需要と製薬が効いた
直近期の業績は、この会社の見え方を変えるほどの伸びでした。公式情報として、第115期(2026年5月期)の連結業績は次のとおりです。
- 売上高:107億39百万円(前期比+5.1%)
- 営業利益:5億87百万円(前期比+36.5%、売上高営業利益率5.5%)
- 経常利益:8億08百万円(+44.5%)
- 親会社株主に帰属する当期純利益:6億10百万円(+49.4%)
有価証券報告書には、クリーン分野で国内のAI・データセンター関連需要の取り込みと製薬向け需要が寄与したことが記載されています。半導体の後工程やデータセンター設備の建設・保守の現場では、クリーンルーム用ワイパーのような消耗品が継続的に必要になります。推定情報ですが、生成AI投資による国内の設備新設・増設局面が、同社の主力商材にそのまま追い風となった構図と考えられます。
売上5期推移|「横ばい圏からの回復」であって急成長ではない
一期の増益率だけで判断しないために、連結売上高の推移を並べます。
- 2022年5月期:約105.5億円
- 2023年5月期:約103.7億円
- 2024年5月期:約101.3億円
- 2025年5月期:約102.2億円
- 2026年5月期:107.4億円
5期を通して見ると、売上は100億円台前半で緩やかに減少し、直近期に回復して過去5期で最高水準に戻った、という動きです。つまりトップラインの成長率よりも、利益率の改善幅のほうが大きいのがこの期の特徴でした。推定情報として、採算の良いクリーン分野の構成比が上がったこと、および2026年5月に完了した家庭紙卸事業の譲渡による事業構成の整理が、利益率に効いていると考えられます。
セグメント別と中期計画の上方修正
セグメント利益では、不織布事業が5億10百万円(+41.1%)、その他が74百万円(+12.5%)。利益の伸びも不織布が牽引しています。なお経常利益(8億08百万円)が営業利益(5億87百万円)を上回っており、本業以外の収益が加わる構造になっています。内訳は有価証券報告書の損益計算書で確認してください。
この業績を受け、同社は2026年7月に第一次中期経営計画2027の数値目標を売上105億円→108億円、営業利益3億円→5.5億円へ上方修正しています。推定情報ですが、会社側が直近の需要環境を一過性ではないと判断した動きと読めます。一方で、半導体・データセンター関連の設備需要は循環性があるため、次の下降局面でどう推移するかは今後の開示で確認が必要です。
単体97名→86名の減少をどう読むか|2025年6月の新人事制度と働き方
従業員数の推移を見ると、単体は第111期97名→112期97名→113期99名→114期97名→115期86名と、直近期に11名減っています。連結でも285名から245名へと減少しました。ここは応募前に必ず理由を確認したい箇所です。
公式情報として、第115期有価証券報告書の注記には、この増減の主因が人事制度変更に伴う従業員区分の変更であると記載されています。実際、正社員が減った一方で臨時雇用者は単体で11名、連結で38名増えています。あわせて、同有報の「訴訟」欄には「該当事項はありません」と記載されており、人員削減施策に関する記載も見当たりません。つまり、この11名減を人員整理と結びつける根拠は開示資料上にはない、というのが現時点で言えることです。

従業員が1割減っているのは不安なのですが、どう見ればいいですか?
読み方としては、2025年6月に導入された新人事制度の中身とセットで見るのが妥当です。定年の段階的な65歳への引き上げと60歳以降の選択制が同時に始まっており、シニア層の雇用区分が変わると正社員カウントは動きます。推定情報ですが、区分変更の実態(どの層が、どの雇用形態に移ったか)は開示範囲では特定できないため、面接時に「新人事制度導入後の要員計画」として質問するのが現実的です。
新人事制度の中身|総合職・一般職を廃し4コース制へ
2025年6月導入の制度は、老舗としてはかなり踏み込んだ内容です。公式情報として確認できる主な変更点は次のとおりです。
- 総合職・一般職の区分を統合し、4コース制(ジェネラリスト/マネジメント/スペシャリスト/イノベーション)へ再編
- 定年を段階的に65歳へ引き上げ、60歳以降は選択制を導入
- 役職定年制の導入
- 在宅勤務制度(在宅デイワーク/ターンワーク)の整備
中途入社者にとって重要なのは、スペシャリストやイノベーションといったコースが制度として用意された点です。推定情報として、マネジメントラインに乗らなくても専門性で処遇される道が明文化された、と読めます。ただし各コースの定員・昇格要件・給与レンジは公開されていないため、制度の名称ではなく運用実態を確認する必要があります。
数字で見る働きやすさ|有給78.2%・男性育休75.0%・研修費は約1.8倍に
有価証券報告書に記載された人的資本関連の指標は、次のとおりです。
- 年次有給休暇取得率:78.2%(会社目標は90%)
- 男性育児休業取得率:75.0%
- 女性管理職比率:5.9%(17名中1名)
- 1人当たり研修費:2023年5月期2,591円 → 2026年5月期4,584円
- 労働組合:結成されていない
有給取得率78.2%と男性育休75.0%は、企業規模を考えると低い水準ではありません。一方、女性管理職比率5.9%は管理職17名中1名という母数の小ささを含んだ数字であり、1名の増減で比率が大きく動きます。研修費は3期で約1.8倍に増えていますが、絶対額としては1人当たり年間4,584円で、推定情報として、体系的な外部研修よりOJT中心の育成が想定されます。「教育制度が整っているか」を重視する人は、この点を面接で具体的に確認しておくべきです。
評判・口コミの傾向|「穏やかな職場」と「番頭と丁稚」が同居する理由
先に前提を置きます。前述のとおり、小津産業の口コミは3サイト合計でも数十件規模しかありません。以下は口コミ傾向としての紹介であり、会社全体の実態を示すものではないことをご理解ください。
肯定的な投稿としては、「職場の雰囲気が穏やかで働きやすい」という趣旨の評価が見られます。就活会議の項目別評価でも福利厚生5.0、ワークライフバランス3.5と、生活面の評価は相対的に高めです。
一方、否定的な投稿としては、「閉鎖的で番頭と丁稚の関係が旧態依然」「有給申請すら難しい」といった、老舗特有の保守性を指摘する退職者コメントがあります。ただしこれらは各1件程度の投稿であり、そのまま社風の断定に用いることはできません。
興味深いのは、この「旧態依然」という体感と、有報の客観データが逆方向を向いている点です。
- 「有給申請すら難しい」という投稿 ↔ 有報記載の年次有給休暇取得率78.2%
- 「閉鎖的」という指摘 ↔ 2025年6月の4コース制導入・在宅勤務制度整備・定年65歳化
- 「旧態依然」という評価 ↔ 男性育休取得率75.0%、研修費の3期で約1.8倍への増額
この差をどう解釈するかが、この会社を判断する肝になります。推定情報として、考えられる読み方は次の3つです。第一に、口コミの投稿時期が新人事制度導入(2025年6月)より前である可能性。第二に、86名という小さな組織では部署・上司によって運用が大きく異なり、全社平均と個人の体感が乖離しやすいこと。第三に、労働組合がないため、制度運用への異議が個人ベースでしか上がらず、部署間のばらつきが是正されにくい構造があること。
いずれにせよ、平均勤続年数14.5年という定着の長さは事実です。推定情報ですが、合う人には長く働ける環境であり、合わない人は早期に離れる二極化が起きやすい組織像が浮かびます。面接では「配属予定部署の直近3年の人員の出入り」を具体的に聞くことをおすすめします。
資本関係とリスク|「小津商店28.9%」という前提を理解しておく
転職判断で見落とされがちなのが、株主構成です。公式情報として、第115期有価証券報告書の「大株主の状況」によれば、筆頭株主は株式会社小津商店で議決権比率28.89%。次いで小津取引先持株会3.38%、日本製紙クレシア1.03%と続きます。小津商店は有価証券報告書上「その他の関係会社」に区分される、創業家系の会社です。今も「小津和紙」を販売しており、370年の歴史がそのまま資本関係に残っている形です。
注目すべきは、同社が自ら「事業等のリスク」にこの資本関係を明記している点です。有価証券報告書には、小津商店の基本方針が変更された場合に事業・業績に影響を及ぼす可能性がある旨が記載されています。推定情報として、上場企業でありながら実質的に安定株主が約3割を握る構造は、短期的な株主圧力を受けにくい安定性と、経営方針の転換が特定株主の意向に左右されうる不透明さの両面を持つと考えられます。
あわせて、有価証券報告書に記載されている主な事業リスクを整理しておきます。
- 顧客市況への依存:主力顧客が半導体・電子・医療・化粧品業界のため、各業界の市況変動の影響を受ける
- 季節性:子会社・日本プラントシーダーの利益が6〜8月に集中する構造
- 調達・品質:素材調達および製品品質に関するリスク
- 海外協力工場:中国・台湾・東南アジアの協力工場に関するカントリーリスク、および為替変動
- 計画未達領域:エコプロダクツ分野の除染布の受注が計画に届いていない
なお、不祥事・行政処分・リコールについては、第115期有価証券報告書の「訴訟」欄に「該当事項はありません」と記載されています。公開情報の範囲では、係争・処分に関する記載は見当たりませんでした。
東証「卸売業」10社比較|規模は最小、利益率と年収は中位という位置
小津産業の立ち位置を、同時期に有価証券報告書を提出した東証33業種「卸売業」10社と並べて確認します。公式情報(各社有価証券報告書の実額)ベースですが、決算期が各社で異なる点に注意してください。
| 企業名(コード) | 連結売上高 | 営業利益(利益率) | 有報 平均年間給与 | 従業員(連結/提出会社) | 対象期・特記 |
|---|---|---|---|---|---|
| 小津産業(7487) | 107.39億円(+5.1%) | 5.87億円(5.5%) | 696.9万円 | 245名/86名 | 2026年5月期・1653年創業・ROE3.2% |
| アズワン(7476) | 1,106.98億円(+6.7%) | 128.38億円(11.6%) | 712.3万円 | 758名/576名 | 2026年3月期・16期連続増収・利益率10社中最高 |
| ドウシシャ(7483) | 1,205.33億円(+5.8%) | 119.33億円(9.9%) | 706.1万円 | 1,237名/826名 | 2026年3月期・過去最高売上・自己資本比率85.7% |
| 尾家産業(7481) | 1,293.21億円(+8.4%) | 38.15億円(3.0%) | 755.9万円 | 873名/832名 | 2026年3月期・年収は10社中最高 |
| シモジマ(7482) | 648.29億円(+6.8%) | 34.56億円(5.3%) | 625.3万円 | 867名/655名 | 2026年3月期・6期連続増収・自己資本比率81.4% |
| スズデン(7480) | 459.02億円(▲1.6%) | 20.72億円(4.5%) | 658.2万円 | 336名/307名 | 2026年3月期・3期連続減収減益 |
| サンリン(7486) | 305.29億円(▲1.0%) | 7.21億円(2.4%) | 526.2万円 | 552名/411名 | 2026年3月期・純利益▲38.8%(減損) |
| 鳥羽洋行(7472) | 290.61億円(▲7.9%) | 14.94億円(5.1%) | 568.0万円 | 261名/224名 | 2026年3月期・創業120年 |
| ムラキ(7477) | 78.25億円(+3.7%) | 1.37億円(1.8%) | 429.1万円 | 137名/128名 | 2026年3月期・年収は10社中最低 |
| 萩原電気ホールディングス(7467) | 2,587.42億円(+14.9%) | 71.12億円(2.7%) | 671.4万円 | 808名/115名 | 2025年3月期(統合前最後の有報)・現在は非上場(MIRAINIホールディングス傘下) |
表の読み方として、次の注記を必ず添えます。
- 決算期の違い:小津産業のみ5月期(2026年5月期)。萩原電気ホールディングスは経営統合前の最後の有報(2025年3月期)の数値で、同社は2026年3月に上場廃止となり、現在はMIRAINIホールディングスの完全子会社(中間持株会社)です。他の8社は2026年3月期
- 単体と連結の乖離:小津産業は連結245名に対し提出会社86名と、事業会社でありながら差が大きい部類です。持株会社である萩原電気ホールディングス(連結808名/提出会社115名)は事業会社の給与が非開示で、平均給与の比較可能性という点では劣ります
- 利益率の幅:アズワン11.6%・ドウシシャ9.9%からムラキ1.8%・サンリン2.4%まで、同じ「卸売業」でも約6倍の開きがあります。小津産業の5.5%は中位です
- 年収の幅:尾家産業755.9万円とムラキ429.1万円で約1.8倍の差。いずれの企業でも口コミ上の年収と有報平均には乖離が生じやすく、有報値は「その会社の平均年齢の社員の平均」であることを前提に読む必要があります
この表から見える小津産業の特徴は明確です。売上規模は10社中2番目に小さく、従業員数(提出会社86名)は最小。それでいて平均年収696.9万円は上位グループに位置するという組み合わせです。推定情報として、少人数で付加価値の高い商材を扱う構造が、1人当たりの処遇に反映されていると考えられます。
将来性|「OZU Innovation2034」と、ROE3.2%・PBR0.79倍という宿題
将来性を考えるうえで、この会社には明確な光と影があります。両方を並べます。
まず光の側。公式情報として、同社は長期ビジョン「OZU Innovation2034」を掲げ、連結売上150億円(直近実績107.4億円の約1.5倍)と、「自ら製品を企画・開発・生産する機能を備えた商社」への転換を目標としています。第一次中期経営計画2027(2024年6月〜2027年5月)はその土台づくり期と位置づけられ、前述のとおり2026年7月に数値目標が上方修正されました。財務面では自己資本比率74.5%、現預金約96億円、有利子負債約25.7億円と、売上規模を大きく上回る手元資金を持ちます。
次に影の側。ROE3.20%、PBR0.79倍という指標は、この潤沢な資本が十分に使われていないことを示しています。実際、同社は2023年10月に東証プライムからスタンダードへ自主的に市場区分を移行しました。配当は1株30円・配当性向62.5%と株主還元は厚めですが、成長投資による資本効率の改善は依然として課題として残ります。
転職検討者にとって、この構図はどう効くのでしょうか。推定情報として、3つの読み方ができます。
- 雇用の安定性という観点:現預金96億円は年間売上の9割近くに相当し、短期的な資金繰りリスクは小さいと考えられます
- 成長機会という観点:150億円という目標と現状の差(約43億円)を埋めるには、既存商流の深耕だけでは足りません。製品開発、M&A、新規領域への投資が必要になる可能性が高く、事業開発・商品企画の経験者にとっては入り込む余地があると考えられます
- 市況変動という観点:直近の増益はAI・データセンター関連需要が牽引しました。半導体・設備投資関連の需要は循環するため、次の下降局面での業績推移は、応募前に直近の四半期開示で確認しておくべきです
なお業界文脈として、クリーンルーム消耗品は「生産設備が動いている限り消費され続ける」性質を持ちます。設備投資そのものより変動が緩やかになりやすいという特性は、推定情報ですが、この会社の収益の底堅さを支えている要素と考えられます。
小津産業への転職が向いている人・慎重に検討したい人
ここまでの公式情報・口コミ傾向をふまえ、適性を整理します(推定情報を含みます)。
| 向いている人 | 慎重に検討したい人 |
|---|---|
| 半導体・製薬・食品などの製造現場を相手に、専門商材を深く掘り下げたい人 | 複数事業をまたぐ異動でキャリアの幅を広げたい人(売上の97.6%が不織布事業) |
| 86名規模の組織で、担当範囲の広さと裁量を求める人 | 役割分担が明確な大組織で、分業しながら専門を磨きたい人 |
| 手元資金が厚く借入依存の小さい会社で、腰を据えて長く働きたい人(平均勤続14.5年) | 短期の急成長・ストックオプション等のアップサイドを重視する人(ROE3.2%・PBR0.79倍) |
| 制度の変わり目(2025年6月の4コース制導入)に入り、新しい枠組みで評価されたい人 | 体系的な研修・教育投資を重視する人(1人当たり研修費は年間4,584円) |
| 商品企画・開発の経験を活かし「メーカー機能を持つ商社」への転換に関わりたい人 | 労働組合を通じた労使交渉の枠組みを重視する人(労働組合は結成されていない) |
編集部の見解として総合すると、小津産業は「安定を土台に、専門性で長く働く」タイプの人と相性が良い会社だと考えられます。370年超の歴史、自己資本比率74.5%、平均勤続14.5年という要素は、腰を据えたい人にとって具体的な安心材料です。同時に、2026年5月期の営業利益+36.5%と中計の上方修正は、単なる守りの会社ではないことも示しています。
一方で、口コミには老舗特有の保守性を指摘する声があり、86名という組織規模ゆえに部署・上司による運用差が出やすいことも想定されます。有報の数字(有給78.2%、男性育休75.0%)が示す姿と現場の体感が一致するかは、面接での確認が欠かせません。「制度は整いつつあるが、運用が追いついているかは配属先次第」——これが現時点の公開情報から言える、もっとも誠実な整理だと考えます。
小津産業に関するよくある質問(FAQ)
小津産業への転職・就職を検討する人からよくある質問と回答をまとめました。
小津産業の読み方は?
「おづさんぎょう」です。公式サイトの英文社名は「OZU CORPORATION」と表記されています。証券コードは7487、上場市場は東証スタンダードです(公式情報)。
小津産業は何を売っている会社ですか?
不織布製品が中核です。第115期有価証券報告書によると、連結売上高107億39百万円のうち不織布事業が104億81百万円(約97.6%)を占めます。半導体・電子・食品・製薬工場向けのクリーンルームワイパー、医療・介護・化粧品向けのOEM製品、鉄鋼・電力・建設向けの除染布や油吸着材、一般消費者向けの除菌ウェットやメガネクリーナーなどを扱っています(公式情報)。
平均年収と従業員数はどのくらいですか?
第115期(2026年5月期)有価証券報告書によると、提出会社の平均年間給与は696万9千円、平均年齢42.3歳、平均勤続年数14.5年です。従業員数は提出会社86名〔外、臨時雇用者12名〕、連結245名〔外、臨時93名〕。平均年収は提出会社86名の平均であり、製造子会社を含む連結245名全体の水準ではない点にご注意ください(公式情報)。
勤務地はどこですか。転勤はありますか?
本社は東京都中央区日本橋本町三丁目6番2号です。ほかに大阪支店(大阪市中央区瓦町)、埼玉第一物流センターなどがあります。全国に数十拠点を持つ卸売企業と比べれば拠点数は限られますが、転勤の有無・範囲は募集職種ごとに異なるため、求人票と労働条件通知書で必ず確認してください(公式情報+推定情報)。
中途採用は行っていますか?
公式採用サイトにはキャリア採用のページが設けられていますが、掲載は問い合わせ窓口が中心で、具体的な募集要項が常時掲載されているわけではありません(公式情報)。推定情報として、86名規模の会社では欠員・増員が生じたタイミングでの限定的な募集になりやすいと考えられます。転職エージェント経由の非公開求人も含めて情報を集めるのが現実的です。
小津産業への転職判断まとめ
ここまでの内容を、判断軸ごとに整理します。最終的な判断は、求人票だけでなく自分の経験・適性も含めて確認しましょう。
| 判断軸 | 評価と根拠 |
|---|---|
| 年収水準 | 有報696.9万円(第115期・提出会社86名の平均、平均年齢42.3歳)。卸売業10社の中では上位グループ。ただし子会社勤務には当てはまらない |
| 直近の業績 | 2026年5月期は営業利益+36.5%・純利益+49.4%。AI・データセンター関連需要と製薬需要が寄与(有報記載) |
| 財務の安定性 | 自己資本比率74.5%、現預金約96億円、有利子負債約25.7億円。短期的な財務リスクは小さいと考えられる |
| 成長性 | 長期ビジョンは連結売上150億円。ただし5期の売上は100億円台前半で推移しており、達成には新たな成長手段が必要(推定情報) |
| 資本効率・市場評価 | ROE3.20%・PBR0.79倍。2023年10月にプライムからスタンダードへ自主移行 |
| 組織・働き方 | 提出会社86名の少数組織。有給取得率78.2%、男性育休75.0%、平均勤続14.5年。2025年6月に4コース制・定年65歳化・在宅勤務制度を導入。労働組合はなし |
| 評判 | 口コミ総数が3サイト合計で数十件と少なく、一般化は困難。「穏やかで働きやすい」と「老舗の保守性」が併存(口コミ傾向) |
| ガバナンス | 筆頭株主の小津商店が議決権28.89%。同社自身が有報の事業等のリスクに、その方針変更が業績に影響する可能性を記載 |
| 係争・処分 | 第115期有価証券報告書の「訴訟」欄は「該当事項はありません」 |
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本記事の出典・参考情報
本記事で参照した一次情報・口コミ情報の出典は以下の通りです。最新の正確な数値は各リンク先で確認してください。売上高・営業利益・平均年間給与・平均年齢・平均勤続年数・従業員数は、いずれも第115期(2026年5月期)有価証券報告書の記載値です。
公式情報源
口コミ・評判の参照元
免責事項:本記事の数値・評価は公式情報・口コミ集計・市場推定の3分類で示しており、口コミ傾向や推定情報は断定ではなく傾向・可能性として表現しています。最終判断は読者自身で公式IRおよび内定時の労働条件通知書で確認してください。
この記事の編集方針・情報の確認について
この記事は、公式公開情報(有価証券報告書・IR資料)、求人情報、口コミ傾向をそれぞれ分けて整理し、転職・就職判断に役立つよう編集しています。年収・平均年齢・平均勤続年数・従業員数などの中核データは第115期(2026年5月期)有価証券報告書「従業員の状況」を一次情報として確認し、口コミ・推定情報とは明確に区別しています。前期比較に用いた第114期の従業員数・平均年収は二次ソース(企業情報データベース)の掲載値である旨を本文中に明記しました。記載内容は最終更新時点の公開情報にもとづきます。最新の正確な数値は各公式IRページでご確認ください。
