浅香工業は今「採用予定なし」|金象印を作る365年企業の年収559万円と評判
※本記事にはプロモーションを含みます。
この記事の結論
- 正体:ホームセンター定番「金象印」を作る1661年創業の堺の老舗
- 年収:有報第122期の平均年間給与は559万1千円(前期比+2.9%)
- 入口:公式採用ページは新卒・キャリアとも「実施予定なし」と明記
- 体質:自己資本比率65.6%と堅い一方、売上は5期ほぼ横ばい
ホームセンターのスコップ売場で、赤い象のマークが入った「金象印」を一度は見たことがある人は多いはずです。あの定番ブランドを作っているのが、大阪・堺の浅香工業株式会社(証券コード5962・東証スタンダード市場)です。創業は寛文元年=1661年、2026年時点で365年。しかも1893年5月に「わが国で初めてショベル・スコップを生産、企業化」した、いわば日本のスコップの元祖企業です。ところが会社名そのものの知名度は、ブランドの知名度に比べて驚くほど低い。この記事は、その「知られざる有名ブランドの作り手」を転職先として検討する人のために、第122期有価証券報告書(2026年3月期)の一次情報を軸に解剖したものです。製品の購入方法・カタログ・代理店の案内は扱いません。そして最初に伝えておくべき最重要の事実があります。2026年8月時点で、同社の公式採用ページは新卒・キャリアのいずれも「現在、採用の実施予定はございません。」と明記しています。つまり、入りたくても入口が常に開いている会社ではありません。この前提の上で、年収・事業構造・働き方・リスクを順に見ていきます。
「金象印」を作っているのが浅香工業|365年企業の正体
まず、この会社が何者なのかをはっきりさせます。転職を検討するうえで「自分が入る会社を一言で説明できるか」は意外と重要です。浅香工業はショベル・スコップ・スペードなど土工農具の国内草分けメーカーであり、同時に電動移動棚やラックなどの物流機器を仕入れて売る販売会社でもある、という二面性を持った企業です。
寛文元年(1661年)創業、1893年に日本初のスコップ国産化
公式情報として、同社の沿革は次の通りです。創業は寛文元年(1661年)。1893年5月に、わが国で初めてショベル・スコップを生産・企業化しました。会社組織への改組は1931年11月25日で、このとき「株式会社浅香本店」として設立され、1941年12月に浅香鍛工株式会社を吸収合併して現在の「浅香工業株式会社」となっています。会社概要ページ上の「設立」が昭和6年(1931年)11月25日と表記されているのはこのためで、創業年(1661年)と設立年(1931年)が別々に存在する点は、この会社を語るときに間違えやすいポイントです。
そして転職検討者にとって見逃せないのが、1897年1月に登録された商標「象印」=現在の「金象印」ブランドです。129年近く使われ続けている商標が、いまも量販店の棚で定番枠を確保している。土工農具のような成熟市場では、このブランドと販売チャネルこそが最大の資産になります。急成長を狙う会社ではなく、定番を守りながら新用途・新チャネルを開拓する会社だ、という理解が出発点になります。
本社は大阪府堺市|拠点と子会社の全体像
本社および主力工場は大阪府堺市堺区海山町2丁117番地。堺は古くから刃物・金属加工の集積地で、同社の製造拠点がここにあるのは歴史的な必然といえます。営業拠点は関東支店(さいたま市北区)、名古屋支店(愛知県春日井市)、北海道支店(江別市)、福岡支店(福岡市博多区)の4支店。公式情報として、子会社は国富産業株式会社(宮崎県東諸県郡国富町/ショベル柄・木製品の製造)1社のみで、有価証券報告書によると連結財務諸表は作成しておらず、開示は単体決算のみです。親会社・支配株主も存在しません。輸出は米国・中東・欧州・豪州・韓国・台湾など世界18ヵ国に及び、今後はドイツ・イギリスを中心とした欧州拡大とEC強化が経営戦略に掲げられています。
製品を探してこのページに来た方へ(+同名企業への注意)
「浅香工業 台車」「金象印 スコップ」「浅香工業 代理店」といった検索でこのページにたどり着いた方へ。本記事は製品の購入・カタログ請求・代理店の案内ではなく、浅香工業への転職を検討する人向けの企業分析記事です。製品情報は公式サイトをご確認ください。もう一点、注意事項があります。口コミサイトOpenWorkには「浅香工業株式会社(建築・土木・設備工事業界)」という別ページが存在しますが、こちらは口コミ0件・評価なしで、証券コード5962の当社とは別法人と考えられます。会社名が似ているため、口コミを調べる際は業界表記まで見て取り違えないようにしてください。なお、東証33業種上の分類については本記事の調査では特定できていません。実態としてはショベル・スコップの製造販売+物流機器の仕入販売を行う金属製品/生活関連用品メーカーと捉えるのが正確で、有価証券報告書の報告セグメントも「生活関連用品」「物流機器」の2つです。
浅香工業の公式データ一覧(有価証券報告書ベース)
本記事で扱う公式数値を一覧で確認できます。公式情報として、すべて第122期(2025年4月1日〜2026年3月31日)有価証券報告書の実額です。最新の正確な数値は公式IRページで再確認してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 浅香工業株式会社(ASAKA INDUSTRIAL CO.,LTD.) |
| 証券コード/市場 | 5962/東証スタンダード市場 |
| 本社 | 大阪府堺市堺区海山町2丁117番地 |
| 創業/設立 | 創業 寛文元年(1661年)/設立 1931年11月25日 |
| 代表者 | 代表取締役社長 岡田 実 |
| 平均年間給与 | 559万1千円(前事業年度比+2.9%/賞与・基準外賃金を含む) |
| 平均年齢 | 47歳7ヵ月 |
| 平均勤続年数 | 20年8ヵ月 |
| 従業員数 | 142名(ほか平均臨時雇用者9名を外書き/提出会社単体) |
| 売上高 | 83億5,798万円(前期比98.9%) |
| 営業利益 | 3億1,110万円(会社計画2億円に対し+55.6%) |
| 経常利益/当期純利益 | 3億4,675万円/4億1,022万円 |
| 自己資本比率/ROE | 65.6%/9.3% |
| 1株当たり配当 | 90円(普通50円+特別40円) |
| 労働組合 | JAM加盟・組合員94名・ユニオンショップ制 |
| 出典 | 第122期 有価証券報告書(2026年6月25日提出・EDINETコードE01391)/公式IR |
この表の中核4項目(平均年間給与・平均年齢・平均勤続年数・従業員数)は、いずれも有価証券報告書「従業員の状況」に記載された実額です。求人サイトや年収アグリゲータの推計値ではありません。
【最重要】2026年8月時点、浅香工業は「採用の実施予定なし」
この記事で最も伝えたい事実から書きます。浅香工業への転職を検討している人がまず知るべきなのは、年収でも評判でもなく「今、募集が出ていない」ということです。公式採用サイトによると、2026年8月時点で新卒採用・キャリア(中途)採用のいずれのページにも「現在、○○採用の実施予定はございません。」という趣旨の記載があります。他の転職系まとめサイトはこの点にほとんど触れていませんが、転職活動の実務では最も影響が大きい情報です。
従業員142名・3期連続減という規模から見た採用枠の現実味
なぜ募集が出ていないのか。有価証券報告書によると、従業員数の推移は次の通りです(提出会社単体・各期末)。
- 第118期:148名
- 第119期:148名
- 第120期:151名
- 第121期:145名
- 第122期:142名
第120期の151名をピークに、3期連続で微減しています。セグメント別内訳は生活関連用品98名(臨時6名)、物流機器31名(臨時2名)、報告セグメント計129名(臨時8名)、全社(共通・管理部門)13名(臨時1名)。推定情報として、この規模と減少トレンドから考えると、仮に募集が再開されたとしても採用枠は年数名レベルにとどまる可能性が高いと見るのが自然です。100名規模の単体企業では、1名の採用が全社の人員構成に与える影響が大きく、欠員補充型・ピンポイント型の採用になりやすいためです。
平均勤続20年8ヵ月が示す「辞めないが、空きも出ない」構造
採用が動きにくい理由をもう一段掘ると、人の入れ替わりの少なさに行き着きます。有価証券報告書によると、第122期の平均年齢は47歳7ヵ月、平均勤続年数は20年8ヵ月。上場企業全体で見てもかなり長い部類で、離職が少なく、社員が長く定着している組織であることを示しています。
これは働く側から見れば安心材料です。一方で、推定情報として裏返せば「若手層が薄く、ポストの空きが生まれにくい可能性が高い」とも読めます。ただしこれはあくまで平均値からの推測であり、年齢構成の内訳は有価証券報告書には記載がなく、実際の若手比率は特定できていません。断定は避けるべき領域です。参考として、口コミ傾向では、転職会議に掲載されている面接に関する投稿(掲載件数はごく少数)に、面接で「ここ数年若手をとっていない会社ですが今回の動機は?」と尋ねられたという趣旨の記述が見られます。投稿1件レベルの情報なので断定はできませんが、有報の数字と方向性は一致しています。
募集が出ていない会社を、どう追いかけるか
結論として、浅香工業を転職先の候補に入れたい場合、現実的な打ち手は次の3つに絞られます。
- 公式採用ページを定期的に確認する:欠員補充型の採用は突発的に出るため、求人媒体より公式が早いことがある
- 並行して同業・近接業界を本命として動かす:募集が出るかどうかは自分でコントロールできないため、ここ1社に賭けない
- 求められる経験を先に積んでおく:ホームセンター・農業資材ルートの営業経験、金属加工の生産技術・品質保証、物流機器の提案営業などが接点になり得る(推定情報)
浅香工業の平均年収は559万1千円|有報の一次情報で見る給与水準
年収については、推測を挟む必要がありません。公式情報として、有価証券報告書(第122期・2026年3月期)によると、浅香工業の平均年間給与は559万1千円、前事業年度比+2.9%です。注記には「平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります」と明記されており、賞与込み・時間外手当込みの数字です。
持株会社ではないため、現場を含む実態値として読める
上場企業の平均年収を見るときに注意すべきなのが、持株会社(ホールディングス)の有報は本社機能の社員だけの数字になりがちという点です。浅香工業は持株会社ではなく事業会社そのもので、連結財務諸表も作成していません。したがってこの559万1千円は、堺の本社・工場や各支店で実際に働く社員142名の平均として読むことができます。この点は、同じ「平均年収500万円台」でも数字の意味が大きく異なるところです。
ただし2点だけ留保があります。第一に、子会社・国富産業株式会社(宮崎)の従業員は含まれていません。第二に、前期の実額は本記事では特定していないため、比較には「+2.9%」という増減率のみを用いています。第122期は営業利益が会社計画比+55.6%、当期純利益が計画比+173.5%と好調でしたので、推定情報としては業績連動の賞与が押し上げに寄与した可能性が考えられます。
平均年齢47歳7ヵ月とセットで読むと水準感が変わる
年収は単独では評価できません。平均年齢47歳7ヵ月・平均勤続20年8ヵ月で559万1千円という組み合わせをどう読むか。ここが転職判断の核心です。
- プラス面:中小規模(142名)の地方メーカーとしては、賞与込み550万円台は決して見劣りしない水準です。しかも実質無借金に近い財務体質で、賞与原資が急に消える構造ではありません
- マイナス面:推定情報として、平均年齢が48歳近い集団の平均が559万円ということは、40代・50代のベテラン層でも大きく突き抜けた水準には届いていない可能性があります。つまり20代・30代で入社した場合、この平均値は「将来の到達点」に近い数字として読むほうが安全です
年功的な色合いが残る老舗企業では、若手のうちは平均を下回り、勤続とともに近づいていくカーブになりやすいのが一般的な傾向です(推定情報)。求人が出た際は、必ず年齢別・等級別の想定レンジを面接で確認してください。
二次情報サイトの年収表示との差をどう見るか
口コミ傾向および二次情報として、求人ボックス 給料ナビは同社の平均年収を「545万円」と表示しており、日本経済新聞の企業情報ページは「559万円」と、有価証券報告書の実額とほぼ一致する数字を掲載しています。二次アグリゲータの数値は集計時点や算出方法が異なるため、本記事では主値を有価証券報告書の559万1千円とし、二次情報はあくまで参考として扱います。なお、OpenWorkには同社の年収データは掲載されていません。初任給・諸手当・退職金制度・平均残業時間の具体値についても、公開情報からは特定できていません。これらは内定時の労働条件通知書で必ず確認すべき項目です。
事業構造を分解する|売上6割の主力より、物流機器のほうが利益を稼ぐ
ここからは、他のまとめサイトが踏み込んでいない収益構造の分析に入ります。転職後の給与原資がどこから出ているのかを理解するうえで、最も重要なパートです。
2セグメントの売上と利益(第122期)
公式情報として、有価証券報告書のセグメント情報は次の通りです。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | セグメント利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 生活関連用品 | 53億1,138万円(前期比105.3%) | 63.6% | 1億4,052万円 | 2.6% |
| 物流機器 | 30億4,659万円(前期比89.5%) | 36.4% | 3億7,533万円 | 12.3% |
| 全社費用調整 | — | — | △2億475万円 | — |
この表が示しているのは、売上の6割超を占める主力の「生活関連用品」より、販売中心の「物流機器」のほうが利益の稼ぎ頭という逆転構造です。セグメント利益の総額約5億1,500万円のうち、約73%を物流機器が稼いでいます。会社の顔である金象印のショベル・スコップは、売上の柱ではあっても利益の柱ではない——これが第122期時点の実像です。
自社製造は売上の1割|メーカーであり、商社でもある
もう一段分解します。生活関連用品53億1,138万円の内訳は、自社製造のショベル類製品が8億3,282万円、仕入商品が44億7,856万円。つまり全社売上83億円のうち、自社工場で作っているのは約1割にすぎません。園芸用具・土木建築工事用機器・農具・木工製品は国内外の協力工場から仕入れて販売しており、物流機器(電動移動棚・回転ラック・重中軽量ラック・搬送用具・店舗什器)に至っては製造ではなく販売主体です。
これはこの業界に共通する構造でもあります。土工農具・園芸用品/物流機器の領域では、主力の金属製品だけを国内工場で自社生産し、それ以外は仕入販売するハイブリッド型が一般的で、実態としてメーカー機能と商社・卸機能が一社に同居しています。転職検討者にとっての意味は明確です。
- 製造側の職種(生産技術・品質保証・生産管理)は、鍛造・プレス・熱処理などの金属加工の専門性が資産になる。ただし対象は売上の約1割にあたる自社製造領域
- 販売側の職種(ホームセンター・農業資材・建設資材向けルート営業、仕入バイヤー)は、仕入交渉力と在庫回転が評価軸になる。社内の人数比でもこちらが多数派
「メーカーに転職したい」という動機で入る場合、実際の仕事が卸・商社的な業務である可能性は事前に確認しておくべきです。
給与原資の伸びしろをどう読むか
推定情報として、給与原資という観点では慎重に見るのが妥当です。理由は2つあります。第一に、主力の生活関連用品セグメントの利益率が2.6%と極めて薄いこと。第二に、利益の7割超を稼ぐ物流機器が第122期に売上前期比89.5%と大幅減収したことです。前期(第121期)のセグメント利益は生活関連用品4,944万円/物流機器4億5,866万円でしたので、物流機器のセグメント利益は1年で約8,300万円減少している計算になります。生活関連用品が同期間に約9,100万円の利益改善を見せたことで全社の営業利益は3億471万円→3億1,110万円とほぼ横ばいを保ちましたが、稼ぎ頭が減速している構図は残ります。大幅な賃上げ原資が短期間で生まれる構造とは言いにくく、安定は期待できても急激な年収上昇は期待しにくいと見ておくのが現実的です。
業績5期推移と財務体質|横ばい〜微減でも自己資本比率65.6%
次に、会社の体力を見ます。結論から言えば「売上は伸びていないが、財務は極めて健全」という、成熟企業に典型的なプロフィールです。
売上・利益の5期推移
公式情報として、有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」によると、第118期からの5期は次の通りです。
| 期 | 売上高 | 経常利益 | 当期純利益 | 純資産 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第118期 | 85.5億円 | 3.19億円 | 2.14億円 | 33.2億円 | 48.1% |
| 第119期 | 85.6億円 | 2.95億円 | 1.95億円 | 35.0億円 | 50.5% |
| 第120期 | 85.8億円 | 3.70億円 | 3.03億円 | 40.2億円 | 54.8% |
| 第121期 | 84.5億円 | 3.37億円 | 2.28億円 | 42.2億円 | 61.7% |
| 第122期 | 83.6億円 | 3.47億円 | 4.10億円 | 46.0億円 | 65.6% |
読み取れることは3点です。
- 売上は5期で85.5億円→83.6億円とほぼ横ばい〜微減。成長企業ではありません。第122期は会社計画85億円に対して1億4,201万円の未達で、要因は有価証券報告書によると物流機器の引き合い減少です
- 利益は安定的に確保。経常利益は5期を通じて約3億円前後で推移し、赤字期はありません。第122期の当期純利益4億1,022万円は、投資有価証券売却益という特別利益が計上された結果で計画比+173.5%となっており、本業の実力そのものではない点は注意が必要です
- 自己資本比率が48.1%→65.6%へ着実に上昇。純資産も33.2億円→46.0億円と積み上がっています。倒れにくい会社であることは数字が示しています
資産バリュー小型株としての側面と買収防衛策
財務が健全な一方で、株式市場での評価は低位にあります。PBRは0.41倍、自己資本比率65.6%、現預金11.5億円という典型的な資産バリュー小型株で、時価総額は約20億円台(2026年8月時点・IR BANK参照)。第122期は普通配当50円+特別配当40円の計90円へ増配し、株主総利回りは139.3%となりました。
そして公式情報として押さえておきたいのが、同社が買収防衛策(大規模買付ルール)を継続導入していることです。有価証券報告書には、取締役会の評価期間60〜90日、特別委員会の設置などを定めた条項が十数ページにわたって記載されています。従業員142名・時価総額20億円規模の企業がここまでの記載を割いているのは特徴的です。なお、TOBや非公開化の具体的な動きは、有価証券報告書および公式開示の範囲では見当たりませんでした。推定情報として、資産価値に対して株価が低い企業では将来的な資本政策の変動が話題になり得ますが、現時点で断定できる材料はありません。株主構成を見ると、浅香工業取引先持株会10.66%、アサカ従業員持株会3.59%、創業家とみられる浅香姓の個人株主が複数といった分散保有で、親会社・支配株主は存在しません。
転職前に知っておくべきリスク|取引先集中・季節変動・市場成熟
両面を書くのがこの記事の方針です。ここではネガティブ側、つまり入社後に業績が振れる要因を、有価証券報告書の記載に沿って整理します。
上位2社で売上の31.4%という取引先集中
公式情報として、有価証券報告書の主要な販売先は次の通りです。
- 三菱ロジスネクスト株式会社:17億6,920万円(構成比21.2%)/同社は2026年4月30日付で株式会社ロジスネクストへ社名変更
- DCM株式会社:8億5,416万円(構成比10.2%)
上位2社だけで売上の31.4%を占めます。しかも有価証券報告書の「事業等のリスク」の筆頭に挙げられているのが、1社集中型の取引が多くなりつつあることによる不良債権発生リスクです。会社自身がこれを最大のリスクと認識している点は、転職検討者としても重く受け止めるべきでしょう。推定情報として、営業職で入社する場合、特定大口先の担当になるか、それ以外のチャネル開拓を担うかで仕事の性質が大きく変わる可能性があります。
除雪・園芸という季節商品への依存
もう一つの構造的な振れ要因が季節変動です。有価証券報告書によると、除雪関連用品・園芸用品など季節商品の比重が大きく、暖冬・小雪・長梅雨といった天候要因で業績が振れることが明記されています。これは業界共通の課題でもあり、除雪用品(雪かき・スノーダンプ等)は冬の降雪量、園芸用品は春先の天候、散水・清掃用品は夏場の気温に売上が左右されます。近年は気候変動による暖冬傾向と、災害に備えた防災備蓄需要の常態化という相反する動きが同時に進み、需給予測の難易度が上がっています。
裏を返せば、需給調整・在庫最適化・生産計画(SCM)の実務経験は、この業界内でも他業界でも通用する強みになります。天候リスクと向き合う経験を「振り回される」と捉えるか「専門性が育つ」と捉えるかは、人によって評価が分かれるところです。
成熟市場という前提
土工農具は生活・土木・農業のインフラ的な定番商品で、需要は住宅着工数、公共土木・防災工事、家庭菜園やDIY人口に連動します。人口減少も重なり、市場全体が大きく伸びる局面ではありません。加えて2025〜2026年は鋼材・樹脂などの原材料価格と物流費の上昇分をどこまで店頭価格に転嫁できるかが各社の収益を左右しています。量販店の統合・再編が進むほど帳合の集約とPB(プライベートブランド)との競合も強まります。一方の物流機器側は、ドライバーの労働時間規制以降の省人化投資という追い風がある領域ですが、浅香工業はここを仕入販売で手がけているため、マテハン専業メーカーとの競合では価格勝負になりやすい構図です(推定情報)。
働きやすさは「口コミ」ではなく有報の数字で見る
この会社の評判を調べようとすると、多くの人が壁にぶつかります。口コミがほとんど存在しないのです。この記事では、その事実を正面から扱ったうえで、代わりに一次情報で裏の取れる指標を提示します。
OpenWorkの口コミが実質1件しかないという現実
口コミ傾向として、OpenWorkには「浅香工業株式会社(日用品・化粧品業界)」のページが存在し、総合評価は3.13(全79,953社中の上位19%)と表示されています。しかし実際の回答者は1件(営業部・在籍5〜10年・退職済)のみで、サイト側にも「回答数が少ない為、スコアが低減化しています」という注釈が付いています。項目別スコアは待遇面の満足度3.2/社員の士気3.0/風通しの良さ3.2/社員の相互尊重3.2/20代成長環境3.0/人材の長期育成3.2/法令順守意識3.2/人事評価の適正感3.2と、ほぼ全項目が3.0〜3.2にフラットに張り付いており、統計的な意味を持つ水準ではありません。詳細クチコミも「組織体制」1件と「ワーク・ライフバランス」1件の2カテゴリのみです。
検索結果上は転職会議・就活会議・エン カイシャの評判などにも当社の企業ページが存在しますが、本記事では投稿内容を直接照合していないため、件数や傾向の断定は行いません。結論として、この会社は口コミを主役に据えて評価できる企業ではありません。そしてその理由自体が、この会社の特徴を語っています。従業員142名・平均勤続20年8ヵ月ということは、退職者由来の投稿がそもそも生まれにくいということです。口コミが少ないのは情報隠しではなく、人が辞めない小規模老舗という構造の帰結と考えるのが妥当です(推定情報)。
有給取得率82.3%・男性育休83%|一次情報で裏が取れる働き方指標
そこで、公式情報として有価証券報告書に記載された定量指標を見ます。ここは口コミより信頼度が高く、しかも他サイトがほとんど拾っていない情報です。
- 年次有給休暇取得率:第118期74.8%→第122期82.3%。5期連続で会社目標の70%を達成しています。参考までに、OpenWork側の記載は80.2%で、有報の数字とおおむね整合しており、ここは一次情報で裏が取れる数少ないポイントです
- 男性育児休業取得率:第120期100%・第121期100%・第122期83%と有価証券報告書に明記
- 労働組合:JAM(ものづくり産業労働組合)加盟、組合員94名、ユニオンショップ制。従業員142名に対して組合員94名という比率で、労使交渉の枠組みが機能している状態です
142名規模の企業で有給取得率8割超・男性育休8割超という数字を継続的に開示している点は、働き方の面ではポジティブに評価できる材料です。老舗メーカーというと硬い印象を持たれがちですが、少なくとも休暇取得の実績は数字で示されています。
開示されている限界と、女性比率という課題
一方で、開示には限界もあります。公式情報として、有価証券報告書には女性労働者比率15.4%と記載があり、さらに「そのほとんどが事務専従者」と会社自身が説明しています。女性管理職比率の目標数値については、「数年内に上げることは難しく」掲げていない旨が正直に書かれています。また、女性管理職比率・男女の賃金差異は「公表義務の対象ではないため記載を省略」とされており、数値は取得できません。残業時間・退職金制度・諸手当の具体値も公開情報からは特定できていません。これらは面接および内定時の労働条件通知書で確認すべき項目です。
浅香工業と近接企業の比較|規模と役割の違いを押さえる
比較の目的は優劣をつけることではなく、「同じ土俵に見えて、実は役割が違う」ことを理解することです。浅香工業を検討する人が併せて見ることの多い企業を、事業の重なりで整理します。年収については、各社の有価証券報告書の実額を本記事では参照していないため、推定値は置きません(各社IRでご確認ください)。
| 企業名 | 上場区分 | 事業の重なり | 規模感 | 転職先としての違い |
|---|---|---|---|---|
| 浅香工業 | 東証スタンダード(5962) | — | 従業員142名・売上83.6億円 | 金象印ブランドと定番棚を守る老舗。少人数で担当範囲が広い |
| 株式会社ダイフク | 東証プライム(6383) | 物流機器(搬送・保管システム) | マテリアルハンドリング世界首位級 | 自社開発・大規模システム構築が中心。浅香工業の物流機器は仕入販売主体で役割が異なる |
| 株式会社オカムラ | 東証プライム(7994) | 物流システム・店舗什器 | オフィス家具大手 | 什器・ラック領域で直接競合。転職市場での知名度と組織規模が大きく異なる |
| 藤原産業株式会社 | 非上場(兵庫県小野市) | 園芸用品・土農工具(「千吉」「SK11」) | 非上場のため有報ベースの比較不可 | ショベル・スコップ・園芸用具というコア商材で最も直接的に競合 |
| 金剛株式会社 | 熊本市(本記事では上場区分を特定していません) | 電動移動棚・スチール棚 | 移動棚の専業メーカー | 浅香工業の物流機器主力商材と真正面から競合。専業ゆえ専門性の深さが異なる |
推定情報として、「マテハン領域でキャリアを積みたい」ならダイフク・オカムラのような専業大手のほうが職務の専門性は深まりやすく、「土工農具・園芸というカテゴリでブランドと棚を守る仕事がしたい」なら浅香工業や藤原産業のような企業が近いでしょう。浅香工業の独自性は、365年の歴史と金象印という商標資産、そして142名という少人数ゆえの担当範囲の広さにあります。
浅香工業への転職が向いている人・向いていない人
これまでの公式情報・口コミ傾向をふまえ、適性を整理します(推定情報を含みます)。
| 向いている人 | 向いていない人 |
|---|---|
| 長く同じ会社で腰を据えて働きたい人(平均勤続20年8ヵ月) | 3〜5年で昇進・昇給を積み上げたい人(ポストの空きが出にくい可能性) |
| 生活・土木・農業を支える定番品に価値を感じる人 | 成長市場で事業を拡大する経験を積みたい人(売上は5期横ばい〜微減) |
| ホームセンター・農業資材・建設資材ルートの営業経験がある人 | 純粋な自社製品メーカーで働きたい人(自社製造は売上の約1割) |
| 大阪・堺勤務、または4支店エリアでの勤務を希望する人 | 全国転勤・海外駐在などダイナミックな異動を望む人 |
| 財務の安定性(自己資本比率65.6%)を重視する人 | ストックオプションや高い変動賞与を求める人 |
| 有給取得率82.3%など実績値のある働き方を重視する人 | すぐに入社したい人(現在は採用の実施予定なしと明記) |
浅香工業で得た経験は、その後どこで活きるか
転職判断では「入った後にどこへ行けるか」も重要です。推定情報として、同社および同業界で積める経験の汎用性を整理します。
- 社内の縦のキャリア:ホームセンター・農業資材・建設資材向けのルート営業から、主要得意先/エリアの担当マネジメント、さらに商品企画・仕入バイヤーや営業管理職へ進む道。142名規模ゆえ、担当範囲は自然と広くなります
- 製造側のキャリア:堺工場での生産技術・品質保証・生産管理から、鍛造・プレス・熱処理といった金属加工の専門性を軸に工場マネジメントや原価管理へ広がる道
- 社外への横移動(物流方面):物流機器・マテハンメーカーやマテハンSIer、物流施設向け設備商社の提案営業、3PL・メーカー物流子会社の物流企画・倉庫改善ポジション。倉庫レイアウト提案や保管効率改善の知見は評価されやすい領域です
- 社外への横移動(流通・EC方面):ホームセンター本部のバイヤー、園芸・農業資材や工具・DIY・アウトドア用品メーカーの営業/商品部、EC・D2C事業のチャネル担当。同社が経営戦略に掲げる欧州拡大とEC強化に関われば、海外営業・EC運営の経験も持ち出しやすくなります
まとめると、「ブランドと定番棚を守る営業力」「金属加工の製造知見」「季節商品の需給調整(SCM)」の3つが持ち出しやすい資産になります。逆に、最先端の技術開発や大規模プロジェクトマネジメントの経験は積みにくい環境と考えられます。
浅香工業への転職|編集部の見解
編集部の見解として、浅香工業は「転職先としての評価」以前に、まず入口が開いているかを確認すべき企業です。2026年8月時点で新卒・キャリアとも採用の実施予定なしと公式に明記されている以上、この会社を第一志望に据えて転職活動を組み立てるのは現実的ではありません。ここが他の企業記事と決定的に異なる点です。
そのうえで、仮に募集が出た場合の評価を条件つきで述べます。おすすめできるのは、「安定」と「長く働くこと」を最優先する人です。自己資本比率65.6%、5期連続黒字、有給取得率82.3%、平均勤続20年8ヵ月、JAM加盟の労働組合という組み合わせは、雇用の安定性という一点においては水準以上と言えます。365年続く企業の商標資産を預かる仕事には、数字に還元できない誇りもあるでしょう。
一方で、おすすめしにくいのは、年収と役職を短期間で引き上げたい人です。売上は5期横ばい〜微減、主力セグメントの利益率2.6%、利益の柱である物流機器は前期比89.5%と減速。この構造で、大幅な賃上げ原資が短期に生まれると期待するのは難しいと考えられます。平均年齢47歳7ヵ月の集団で平均559万1千円という数字は、20代・30代にとっては「到達点」に近いと読むほうが安全です。総合すると、「安定を買いに行く転職」としては成立するが、「年収を上げに行く転職」としては合致しにくい企業と考えられます。
浅香工業に関するよくある質問(FAQ)
浅香工業について検索する人からよくある質問と、公開情報にもとづく回答をまとめました。
「金象印」はどこの会社が作っているブランドですか?
大阪・堺の浅香工業株式会社(証券コード5962・東証スタンダード市場)です。公式情報として、1897年1月に登録された商標「象印」が起源で、現在の「金象印」ブランドとして、ショベル・スコップ・レーキ・園芸用具などに使われています。同社は1893年5月に日本で初めてショベル・スコップを生産・企業化した企業でもあります。
浅香工業は今、中途採用(キャリア採用)を募集していますか?
2026年8月時点では、公式採用サイトによると新卒採用・キャリア採用のいずれも「現在、採用の実施予定はございません。」という趣旨の記載があります。募集状況は変わり得るため、最新情報は必ず公式採用ページでご確認ください。推定情報として、従業員142名・3期連続微減という規模から、再開時も欠員補充型の少人数採用になる可能性が高いと考えられます。
浅香工業の平均年収はいくらですか?
公式情報として、第122期(2026年3月期)有価証券報告書によると平均年間給与は559万1千円で、前事業年度比+2.9%です。賞与および基準外賃金を含む金額です。同社は持株会社ではなく事業会社そのものなので、現場を含む従業員142名の実態値として読めます。ただし子会社・国富産業株式会社(宮崎)の従業員は含まれていません。
浅香工業の本社はどこにありますか?堺の会社なのですか?
本社および主力工場は大阪府堺市堺区海山町2丁117番地にあります。堺は刃物・金属加工の集積地として知られる地域です。ほかに関東支店(さいたま市北区)、名古屋支店(愛知県春日井市)、北海道支店(江別市)、福岡支店(福岡市博多区)の4支店があります。
浅香工業は上場企業ですか?株価や配当はどうなっていますか?
東京証券取引所スタンダード市場に上場しています(証券コード5962)。1949年5月に大阪証券取引所へ上場し、1963年10月に同市場第二部へ指定替、2013年7月の現物市場統合で東証市場第二部へ、2022年4月の市場区分見直しでスタンダード市場へ移行しました。公式情報として、第122期の1株当たり配当は90円(普通50円+特別40円)、株主総利回りは139.3%です。株価・時価総額は日々変動しますので、最新値は証券会社や公式IRでご確認ください。
浅香工業に親会社や子会社はありますか?
公式情報として、有価証券報告書によると親会社・支配株主は存在しません(「関係会社の状況」は該当事項なし)。子会社は国富産業株式会社(宮崎県東諸県郡国富町/ショベル柄・木製品の製造)1社のみで、連結財務諸表は作成しておらず単体決算のみを開示しています。株主構成は浅香工業取引先持株会10.66%、アサカ従業員持株会3.59%、創業家とみられる個人株主などに分散しています。
「株式会社浅香工業」という別の会社を見かけましたが同じ会社ですか?
口コミサイトOpenWorkには「株式会社浅香工業(建築・土木・設備工事業界)」という別ページが存在しますが、口コミ0件・評価なしで、証券コード5962の浅香工業株式会社とは別法人と考えられます。口コミや年収情報を調べる際は、業界表記(日用品・化粧品業界)と証券コードを確認して取り違えないようご注意ください。
浅香工業への転職判断まとめ
ここまでの内容を、判断軸ごとに整理します。最終的な判断は、求人票だけでなく自分の経験・適性も含めて確認しましょう。
| 判断軸 | 評価 |
|---|---|
| 入社機会 | 2026年8月時点で新卒・キャリアとも採用の実施予定なしと公式に明記。第一志望に据えるのは現実的でない |
| 年収水準 | 有報実額で559万1千円(前期比+2.9%)。142名規模の地方メーカーとしては水準以上だが、平均年齢47歳7ヵ月を踏まえると若手には「到達点」に近い |
| 雇用の安定性 | 自己資本比率65.6%・5期連続黒字・実質無借金に近い財務。倒れにくさは数字で確認できる |
| 成長余地 | 売上は5期で85.5億→83.6億円と横ばい〜微減。主力セグメント利益率2.6%で、賃上げ原資の伸びしろは限定的と見るのが妥当 |
| 働きやすさ | 有給取得率82.3%(5期連続で目標達成)、男性育休83%、JAM加盟の労働組合あり。口コミは実質1件のため傾向は語れない |
| キャリアの汎用性 | 量販店ルート営業・金属加工の生産技術・季節商品のSCMは他社でも通用。最先端技術や大規模PMの経験は積みにくい |
| 主なリスク | 上位2社で売上の31.4%という取引先集中(有報リスクの筆頭)、除雪・園芸の季節変動、市場の成熟 |
| この企業ならではの価値 | 創業1661年・365年の歴史と、1897年登録の「金象印」商標。日本のスコップの元祖企業という唯一性 |
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この記事の編集方針・情報の確認について
この記事は、公式公開情報(有価証券報告書・IR資料)、公式採用ページの記載、口コミ傾向をそれぞれ分けて整理し、転職・就職判断に役立つよう編集しています。平均年間給与・平均年齢・平均勤続年数・従業員数・売上高・営業利益などの中核データは、第122期有価証券報告書(2026年6月25日提出)を一次情報として確認し、口コミ・推定情報とは明確に区別しています。二次アグリゲータの推計年収は主値として使用していません。記載内容は最終更新時点の公開情報にもとづきます。最新の正確な数値は各公式IRページでご確認ください。

