Veritas In Silico(130A)とは|19名・年収837万円のmRNA創薬
※本記事にはプロモーションを含みます。
この記事の結論
- 正体:証券コード130A・東京都品川区のmRNA標的低分子創薬企業
- 年収:有報の平均年間給与837万4千円。ただし対象はわずか19名
- 財務:第10期は事業収益0.91億円・営業損失3.96億円で全社資産を減損
- 判断材料:口コミはOpenWork0件。有報の一次データで見極めるしかない
この記事は、株式を買うかどうかではなく、この会社に転職するかどうかを判断するために書いています。「Veritas In Silico」で検索すると株価・掲示板・IR関連のページが上位に並びますが、ここでは投資判断には一切踏み込まず、第10期有価証券報告書(2025年12月期)の一次データを軸に、働く場所としての実態だけを整理します。もう一点、検索前に切り分けておきたいことがあります。証券コード130Aの株式会社Veritas In Silicoは、東京都品川区西五反田に本社を置く創薬プラットフォーム企業です。不動産の「ヴェリタス・インベストメント」、データ保護ソフトの「ベリタステクノロジーズ」、その他「Veritas」を冠する企業とは、資本関係のない完全な別法人です。検索結果で混ざりやすいため、この記事で扱うのは証券コード130A・東京都品川区・従業員19名の創薬企業である、と最初に確定させておきます。
株式会社Veritas In Silicoとは|130Aの正体と同名企業との切り分け
最初に結論を書きます。株式会社Veritas In Silicoは、mRNA(メッセンジャーRNA)を標的とした低分子医薬品・核酸医薬品の「創薬プラットフォーム」を製薬会社に提供する研究開発型バイオベンチャーです。東証33業種の分類は「医薬品」ですが、自社で薬を製造して患者に届ける製薬会社ではありません。ここを取り違えると、期待する仕事内容と実態が大きくずれます。読者が最初に得るべき情報は、「規模」「事業モデル」「同名企業との違い」の3点です。
有価証券報告書によると、設立は2016年11月(当時の本店は東京都渋谷区)。2017年5月に三菱瓦斯化学およびベンチャーキャピタルの出資のもとmRNA標的の核酸医薬品創薬研究を開始し、2017年7月に新潟研究所(新潟薬科大学内)を開設、同年10月に本店を東京都品川区へ移転しました。2018年4月には主事業を核酸医薬品からmRNA標的低分子医薬品の創薬プラットフォーム事業へ転換し、同時に新川崎研究所を開設。2024年2月8日に東京証券取引所グロース市場へ上場しています。代表取締役社長は創業者の中村慎吾氏で、2025年12月31日現在の筆頭株主でもあります(1,400,000株・21.6%)。
「ヴェリタス」を名乗る別会社との見分け方
検索時の実務的な注意点として、社名の重複が挙げられます。日本語で「ヴェリタス」「ベリタス」と表記される企業は複数存在し、不動産投資の会社、外資系のデータ管理ソフトウェア企業、コンサルティング会社などがそれぞれ別に存在します。求人サイトや口コミサイトの検索結果でも、これらが混在して表示されることが珍しくありません。見分け方はシンプルで、証券コード「130A」、本社所在地「東京都品川区西五反田一丁目11番1号」、公式ドメイン「veritasinsilico.com」の3点を確認することです。有報上の正式商号もアルファベット表記の「株式会社Veritas In Silico」であり、この記事でもその表記に統一しています。
「薬を売らない医薬品企業」という収益モデル
この会社の収益は、製薬会社と結ぶ共同創薬研究契約の研究支援金・契約一時金・マイルストーン収入で構成されます。中核となるのが独自のAI創薬プラットフォーム「ibVIS」で、任意の遺伝子のmRNA上から創薬に適した部分構造を発見し、そこに結合する低分子化合物を探索する技術群をワンストップで提供するものです。公式サイトによると、2026年1月にはルールベースAIを大幅に改良した「aibVIS」へバージョンアップしています。
AI創薬・創薬プラットフォーム業界に共通する構造として、「売上=会社の実力」という一般的な物差しが通用しにくい点があります。製品を売っていない以上、事業収益の絶対額は契約の締結タイミングに左右されるためです。転職検討者としては、提携本数・マイルストーン達成・パイプライン進捗といった非財務KPIで会社と自分の成果を測る姿勢が求められる、と理解しておくのが実務的です(推定情報を含みます)。
株式会社Veritas In Silicoの公式データ一覧(有価証券報告書ベース)
本記事で扱う公式数値を一覧で確認できます。すべて公式情報として第10期有価証券報告書(事業年度2025年1月1日〜2025年12月31日、2026年3月23日提出)から取得したもので、二次アグリゲータの推定値ではありません。最新の正確な数値は公式IRページで再確認してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商号 | 株式会社Veritas In Silico(Veritas In Silico Inc.) |
| 証券コード/市場 | 130A/東京証券取引所グロース市場(2024年2月8日上場) |
| 本社所在地 | 東京都品川区西五反田一丁目11番1号 |
| 設立 | 2016年11月 |
| 代表者 | 代表取締役社長 中村 慎吾 |
| 平均年間給与 | 837万4千円(8,374千円) |
| 平均年齢 | 45.8歳 |
| 平均勤続年数 | 4.4年 |
| 従業員数 | 19名(提出会社単体・臨時従業員を除く) |
| 事業収益 | 9,114万円(前期比53.2%減) |
| 営業利益 | 営業損失 △3億9,675万円 |
| 経常損益 | 経常損失 △3億9,063万円 |
| 当期純損益 | 当期純損失 △4億2,567万円 |
| 研究開発費 | 2億1,562万円 |
| 純資産/自己資本比率 | 17億8,388万円/94.6% |
| 現金及び預金 | 18億2,521万円(うち3か月超の定期預金15億円) |
| 配当 | 設立以来無配 |
| 労働組合 | 結成されていない |
| 女性管理職比率・男性育休取得率・男女賃金差異 | 法定公表義務の対象外のため有価証券報告書では開示されていない |
| 出典 | 第10期 有価証券報告書(2025年12月期)/公式IR資料 |
この表を見て最初に目に付くのは、従業員19名という規模と、営業損失3.96億円という数字の組み合わせだと思います。以降の見出しで、この2つが働く側にとって何を意味するのかを順に分解します。
平均年収837万4千円の中身|19名・平均年齢45.8歳が示すもの
結論から書くと、この837万4千円は「45.8歳の中途経験者19名の平均」であって、若手のモデル年収ではありません。数字そのものは高い部類に入りますが、そのまま自分に当てはめると判断を誤ります。
公式情報として、第10期有価証券報告書「5 従業員の状況(1)提出会社の状況」(2025年12月31日現在)に記載された平均年間給与は8,374千円、すなわち837万4千円です。これはEDINETに提出された有報のPDF原文から直接取得した実額で、求人サイトや年収アグリゲータの推定値ではありません。注記のとおり基準外賃金(残業代等)を含み、対象は従業員19名(他社から当社への出向者を含み、臨時従業員〈パート職員〉を除く就業人員。派遣社員は含まない)です。役員報酬は含まれません。
同じ有報の同じ欄に、平均年齢45.8歳、平均勤続年数4.4年と記載されています。この3つの数字はセットで読む必要があります。平均年齢45.8歳という構成は、製薬企業やアカデミアで実績を積んだ研究者を中途で採用してきた結果と読むのが自然です(推定情報)。つまり837万4千円は「若くして高年収」ではなく、「経験者の年収をそのまま持ち込んだ集団の平均」に近いと考えられます。平均勤続4.4年についても、2016年11月設立の会社である以上、勤続年数の上限自体が約9年しかない点に留意が必要です。定着率の低さを示す数字と即断できるものではありません。
母数19名という数字の脆さ
この平均年収を扱ううえで最も重要な注意点が、母数がわずか19名であることです。一般的な上場企業の「平均年収」は数百人から数千人の平均ですが、19名の平均は1〜2名の入退社で数十万円単位で振れます。高給の管理職クラスが1名退職すれば平均は下がり、逆に1名入社すれば上がる、という水準の話です。したがって「837万円だから安泰」とも「翌期に下がったから待遇が悪化した」とも、単年の数字だけでは判断できません。転職検討時には、平均値ではなく自分に提示される個別のオファー条件を確認することが唯一の実務解になります。
口コミ・二次情報との関係
口コミ傾向としての年収情報は、この会社についてはほぼ存在しません。OpenWorkの企業ページは開設されているものの、社員クチコミは0件・回答者0名で、待遇面の満足度を含む8項目スコアはすべて「–」表示です。転職会議やエン カイシャの評判についても、証券コード130A名義での口コミ蓄積は見当たりませんでした。年収アグリゲータ系のサイトに数字が出ていたとしても、19名規模で統計的裏付けのある推定は困難です。年収に関しては、有報の837万4千円という一次データ以外に信頼できる情報源がないと考えて差し支えありません。
転職時に確認すべき報酬まわりのポイント
創薬ベンチャーの報酬は額面だけでは捉えきれません。内定時の労働条件通知書で以下を確認することを推奨します(推定情報を含む一般的な確認事項です)。
- 賞与の設計:年俸制か、業績連動賞与があるか。事業収益が契約タイミングで大きく振れる会社であるため、変動部分の比率は要確認
- ストックオプションの有無:有報にはストックオプション(第1回新株予約権〈2018年6月28日決議〉等)の記載がありますが、一般社員への付与実態までは有価証券報告書では開示されていません
- 勤務地:本社(品川)/新川崎研究所/新潟研究所で通勤環境がまったく異なるため、配属拠点と異動可能性
- 昇給の原資:営業赤字が続く局面での昇給運用の考え方
- 退職金制度・住宅補助等:これらは有価証券報告書では開示されていないため、面接段階で直接確認する必要があります
事業収益0.91億円・営業損失3.96億円|5期推移で読む収益構造
この会社の業績を1年分だけ見ても実態はつかめません。5期の推移を並べると、収益がプロジェクト単位で大きく上下する構造がはっきり見えます。転職判断に直結するのは「赤字かどうか」よりも「なぜ振れるのか」です。
有価証券報告書によると、事業収益の推移は次のとおりです。
| 期(決算期) | 事業収益 | 営業損益 | 従業員数 |
|---|---|---|---|
| 第6期(2021年12月期) | 5,933万円 | 赤字 | 14名 |
| 第7期(2022年12月期) | 1億7,880万円 | 赤字 | 14名 |
| 第8期(2023年12月期) | 3億6,036万円 | 黒字(経常利益3,590万円・純利益3,305万円) | 15名 |
| 第9期(2024年12月期) | 1億9,464万円 | 営業損失 △2億1,285万円 | 19名 |
| 第10期(2025年12月期) | 9,114万円 | 営業損失 △3億9,675万円 | 19名 |
読み取れることは3つあります。第一に、第8期をピークに2期連続の大幅減収で、第10期は前期比53.2%減。第二に、黒字化したのは第8期の1期のみで、第6期・第7期・第9期・第10期はいずれも赤字です。第三に、従業員数は14名→14名→15名→19名→19名と、収益の増減と連動していません。収益が3分の1になっても人は減っていないという点は、働く側にとっては重要な事実です。
収益の中身は研究支援金・契約一時金・マイルストーン
なぜここまで振れるのか。有価証券報告書によると、収益は共同創薬研究契約に基づく研究支援金、契約時の一時金、開発進捗に応じたマイルストーン収入で構成されます。単一セグメント(創薬プラットフォーム事業)のためセグメント別売上の開示はありません。大型契約が1本締結されれば収益が跳ね、翌期にその一時金がなければ落ちるという構造で、製品売上のように積み上がる性質のものではないのです。第10期の事業費用4億8,789万円のうち研究開発費が2億1,562万円を占めており、費用側は収益と無関係に一定水準で発生し続けます。この非対称性が赤字の主因です。
会社自身がKPI未達を開示している
特筆すべきは、会社が自らの未達を明示している点です。有価証券報告書によると、経営上の目標として掲げた新規契約締結数は年間目標4社に対して実績3社、事業収益についても未達成であると記載されています。目標を掲げたうえで未達を明記する開示姿勢は、投資家・求職者双方に対する誠実さの材料として評価できる部分です(推定情報としての解釈です)。転職面接では、この「4社に対して3社」という数字を起点に、契約獲得のボトルネックがどこにあるのかを質問すると、事業の実像が見えやすくなります。
第10期に全社の事業用資産を減損し、帳簿価額が0円になった事実
この記事で最も重い事実を、誇張せずそのまま書きます。第10期(2025年12月期)に、株式会社Veritas In Silicoは事業用資産を全社で1つの資産グループとして減損処理し、本社・新川崎研究所・新潟研究所すべての帳簿価額が0円になりました。特別損失に計上された減損損失は3,132万円です。
有価証券報告書によると、減損の理由は継続的に営業損失が発生し、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから、割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回ったためとされています。内訳は本社993万円、新川崎研究所173万円、新潟研究所1,967万円です。
会計上、これは「その資産が将来生み出すと見込まれるキャッシュが、帳簿に載っている価値に届かない」と判断されたことを意味します。金額そのものは3,132万円と小さいものの、3拠点すべての事業用資産を備忘価額まで落としたという事実は、事業の現時点での収益力について会社自身が保守的な見方を取ったことの表れです。転職検討者としては、この事実を過大にも過小にも評価せず、「今の収益水準では設備投資を資産として持ち続ける前提が置けなかった」という事実として受け止めるのが適切だと考えられます(推定情報)。
なお、減損はあくまで会計処理であり、拠点が閉鎖されたわけでも研究が止まったわけでもありません。有価証券報告書によると、川崎研究所の研究施設には投資予定額1億600万円(2025年11月着手・2026年3月完了予定)が計上されており、研究インフラへの投資は継続しています。
継続企業の前提に関する記載はない
もう一つ、事実として明確にしておきます。第10期有価証券報告書には、継続企業の前提に関する注記も、「継続企業の前提に関する重要事象等」の記載もありません。純資産は17億8,388万円で債務超過ではなく、自己資本比率は94.6%、負債合計は1億104万円と実質無借金の状態です。1株当たり純資産は274.99円、1株当たり当期純損失は△65.62円と記載されています。減損という事実と、財務基盤の厚さという事実は、どちらも同時に成立しています。片方だけを取り出して語らないことが重要です。
手元資金の読み方|現預金18.25億円と現金同等物3.25億円は別の数字
ここは誤読が起きやすい最重要ポイントなので、丁寧に書きます。転職検討者が最も知りたいのは「この会社はあと何年もつのか」という点だと思いますが、その計算に使う数字を間違えると結論が真逆になります。
有価証券報告書によると、第10期末の現金及び預金は18億2,521万円です。このうち15億円は預入期間が3か月を超える定期預金で、キャッシュ・フロー計算書上の「現金及び現金同等物」からは除かれます。その結果、キャッシュ・フロー計算書に載る現金及び現金同等物の期末残高は3億2,521万円となります。
つまり「現金が3億円しかない」という読み方は誤りです。定期預金15億円は満期時に引き出せる自社の資金であり、消えたわけではありません。数字が2つあるのは、会計上の定義の違いによるものです。この点を押さえたうえで、資金余力を単純計算すると次のようになります。
| 計算方法 | 前提 | 単純計算の資金余力 |
|---|---|---|
| 営業CF実績ベース | 現預金18億2,521万円 ÷ 第10期営業CF △2億9,927万円 | 約6年 |
| 2026年計画ベース | 現預金18億2,521万円 ÷ 2026年12月期会社計画の営業損失 △5億6,900万円 | 約3年強 |
いずれも推定情報としての単純割り算であり、追加の資金調達・新規契約の獲得・費用の増減をまったく織り込んでいません(2026年12月期の会社計画営業損失はIRBANKによる二次ソース値です)。ただし方向感として、数年単位の時間軸で事業を回せる手元資金がある一方、無限ではないということは言えます。第10期の財務キャッシュ・フローは0円で、この期に新規の資金調達は行われていません。投資キャッシュ・フローは+4億5,112万円で、これは定期預金の払戻20億円と預入15億円、有形固定資産の取得2,566万円などによるものです。
創薬ベンチャーへの転職を検討する際の実務的な自衛策として、業界共通で言えることがあります。入社検討時は事業内容だけでなく、直近の決算短信・有価証券報告書で手元資金と年間の資金消費ペース(ランウェイ)を自分で確認する習慣を持つことです。この会社の場合、公式IRページで最新の四半期開示(2026年8月5日に2026年12月期第2四半期決算短信・半期報告書を開示済み)を確認すれば、記事執筆時点より新しい数字にアクセスできます。
19名・3拠点の組織構造|品川10名・新川崎6名・新潟3名
働く場所としての実態を最も端的に表すのが、この拠点別の人数です。東証グロース上場企業でありながら、1拠点あたり3〜10名という規模で運営されています。
有価証券報告書によると、2025年12月31日現在の従業員19名の内訳は次のとおりです。
| 拠点 | 所在地 | 従業員数 | 性格 |
|---|---|---|---|
| 本社 | 東京都品川区西五反田一丁目11番1号 | 10名 | 事務所・管理・事業開発 |
| 新川崎研究所 | 神奈川県川崎市幸区(かわさき新産業創造センター内) | 6名 | 研究施設 |
| 新潟研究所 | 新潟県新潟市秋葉区(新潟薬科大学内) | 3名 | 研究施設 |
従業員数の推移は第6期14名→第7期14名→第8期15名→第9期19名→第10期19名で、直近1年は横ばいです。臨時従業員(パート職員)は総数が従業員数の10分の1未満であるため、平均臨時雇用者数の記載は省略されています。労働組合は結成されていません。連結子会社・関係会社は存在せず、有報の平均年間給与837万4千円がそのまま現場の実態を示す構造です(持株会社形態の企業でよく起きる「有報の給与=持株会社社員の給与」というズレが、この会社では生じません)。
大学・産業支援施設に研究拠点を置くという業界共通の型
新川崎研究所は「かわさき新産業創造センター」という産業支援施設内、新潟研究所は「新潟薬科大学」のキャンパス内にあります。これは同社に限った話ではなく、創薬ベンチャーが大学キャンパスや自治体の産業支援施設に研究拠点を構えるのは業界共通の型です。同じ業界の上場ベンチャーを見ても、大学キャンパス内や公的なライフサイエンス拠点に研究所を置く例が多数あります。理由は、自前で研究設備を建てる資本負担を避けつつ、アカデミアとの距離を近く保てるためと考えられます(推定情報)。
転職検討者にとっての実務的な意味は明確です。勤務地が「駅前のオフィスビル」ではなく、大学構内や産業支援施設になる可能性があるということ。通勤時間・周辺環境・研究設備の共用範囲は、面接時に必ず確認しておきたい項目です。年間賃借料は有報上、本社812万円、川崎研究所702万円と記載されており、拠点コストそのものは軽く抑えられています。
有報が明記する小規模組織リスクと特定人物への依存
会社自身が「事業等のリスク」で認めている項目の中に、働き方に直結するものが2つあります。有価証券報告書によると、(7)小規模組織であること、(8)特定人物への依存について(代表取締役社長 中村慎吾氏を実名で記載)が挙げられています。19名という規模を踏まえれば当然の開示ですが、これは転職検討者にとって次のような意味を持ちます(推定情報)。
- 研究職であっても、契約実務・知財対応・IR関連の周辺業務を兼務する場面が生じやすい
- 階層が浅く、明文化された昇進ルートや評価制度が大企業ほど整備されていない可能性がある
- 経営トップとの距離が近く、意思決定は速い一方、トップの方針転換が業務に直結しやすい
- 人員が薄いため、1名の欠員がプロジェクト進行に与える影響が大きい
これらは「悪い」という話ではなく、大手製薬の分業体制に慣れた人ほどギャップを感じやすいという性質の話です。逆に、少人数で裁量を持って動きたい人には適合しやすい構造でもあります。
口コミが存在しない会社をどう見極めるか
この会社について検索すると、多くの人が壁にぶつかります。転職口コミサイトに情報がほとんど蓄積されていないのです。ここでは、その事実自体を隠さず提示したうえで、代替の見極め方を示します。
口コミ傾向として提示できるものは、率直に言ってありません。OpenWorkには企業ページが存在しますが、「社員クチコミはまだ投稿されていません」と明記されており、社員クチコミ0件・回答者0名、総合評価および8項目スコア(待遇面の満足度/社員の士気/風通しの良さ/20代成長環境/人材の長期育成/法令順守意識/人事評価の適正感/社員の相互尊重)はすべて「–」表示です。従業員数の表示も「10〜29人」となっています。転職会議やエン カイシャの評判についても、証券コード130A名義の口コミページ・件数は見当たりませんでした。前述のとおり同名の別法人のページが多数存在するため、口コミを読む場合は取り違えに厳重な注意が必要です。
従業員19名という規模を考えれば、これは当然の結果です。口コミが0件であることは、会社の良し悪しを示す情報ではなく、単に母数が存在しないという事実にすぎません。「評判が悪いから書かれていない」のでも「隠しているから出てこない」のでもなく、書き手になり得る人が19名しかいないのです。

口コミが1件もない会社って、何を見て判断すればいいんですか?
答えは、一次情報に置き換えることです。口コミサイトが埋めていた情報を、開示資料から自分で取りに行きます。具体的には次の5点です。
- 有価証券報告書「従業員の状況」:平均年収・平均年齢・平均勤続年数・拠点別人数(この記事で扱った数字)
- 有価証券報告書「事業等のリスク」:会社が自ら認識している弱点。小規模組織・特定人物依存・収益の変動性など9項目が記載されている
- 決算説明資料・事業計画資料:2025年12月15日開示の「事業計画及び成長可能性に関する説明資料」など、事業の方向性が最も具体的に書かれている資料
- 公式採用ページの募集要項:2025年4月「研究員(インフォマティクス)」、2026年6月「研究員スタッフ(川崎研究所)」など、実際に募集された職種から組織が何を必要としているかが読める
- 面接での直接確認:残業時間・有給取得率・リモート可否・退職金制度は、いずれも有価証券報告書では開示されていないため、面接で聞くしかありません
なお求人露出そのものは、doda・パソナキャリアといった転職サービスおよび公式サイトの採用ページで確認できます。2026年6月にも川崎研究所の研究員スタッフを公式サイトで募集しており、採用活動は継続しています。従業員数も19名→19名で横ばいで、有価証券報告書には希望退職の募集・整理解雇に関する記載はありません。
提携先・パイプライン・知財から見る事業の方向性
19名という規模だけを見ると小さな会社に映りますが、提携相手の顔ぶれを見ると印象が変わります。転職判断の材料として、事業がどこに向かっているかを整理します。
国内外の大手と並走する提携ポートフォリオ
公式サイトによると、共同創薬研究等の提携先には東レ(2021年7月)、塩野義製薬(2021年11月)、ラクオリア創薬(2022年12月)、武田薬品工業(2023年6月)、三菱ガス化学、仏Oncodesign Services、英Liverpool ChiroChem/LCC Therapeutics、スイスSpiroChem(2026年1月覚書)などが並びます。19名の会社が、国内メガファーマや欧州の専門企業と並走している構図です。三菱瓦斯化学は株主でもあり(11.3%)、2025年6月には核酸医薬品の共同研究契約も締結しています。ラクオリア創薬のように、同じ低分子創薬領域の企業が提携先でもあるという関係性も特徴的です。
ただし、提携本数の多さが即座に収益に結びつくわけではない点は先述のとおりです。第10期のKPIは新規契約締結数が目標4社に対し3社。提携の「入口」を作る力と、それを収益として刈り取る力は別物として見る必要があります。
2025年に始まった自社パイプライン事業
もう一つの動きが、プラットフォーム型に加えて自社で医薬品候補を創出する「パイプライン型」の併走です。有価証券報告書によると、2025年から自社パイプライン事業を開始し、第1号テーマとして心臓血管手術後に惹起される虚血性の急性腎不全に対するASO(アンチセンス核酸)を設定、2025年12月に物質特許を出願しています。2025年11月には島根大学と原発性肺移植片機能不全に関する共同研究も開始。独自のカテーテル型ドラッグデリバリーシステム「Perfusio」の特許も2025年12月に日本で効力が発生しています。
知財面では、ビジネスモデル特許を日本(2020年10月)・欧州(2025年1月)・米国(2025年7月)の3極で取得済みです。基盤技術の権利を主要地域で押さえたうえで、プラットフォーム提供と自社創薬の二本柱に移行しつつあるのが現在地と整理できます。なお有価証券報告書には、中期経営計画(2025〜2027年度)にパイプライン導出による収益は織り込んでいないと明記されています。
会社自身が書いている事業環境の逆風
両面を書きます。有価証券報告書によると、会社は事業環境について、米国大手製薬が自社創薬を手控えてアセット導入へ移行しており、製薬会社の創薬を支援する契約そのものが世界的に減少傾向にあると記載しています。これは同社の収益源そのものに関わる構造的な逆風です。
一方で、業界全体の追い風もあります。RNA標的低分子は「アンドラッガブル(従来は薬にしにくい)標的」を攻略しうる領域として注目され、市場予測ではRNA標的低分子の創薬支援市場が年率20%超で伸びるとの見方もあります。AI創薬スタートアップへの世界的な資金流入も継続しており、大手製薬各社が自社AI創薬基盤の整備を急いでいます。モダリティとしての追い風と、支援契約市場としての逆風が同時に吹いているのが実情で、どちらか一方だけを見て判断するのは適切ではありません(推定情報としての整理です)。
創薬ベンチャー5社の規模・収益・年収比較
この会社の立ち位置は、単独では見えません。同じ東証グロースの創薬・再生医療ベンチャーと並べると、規模と赤字水準のポジションがはっきりします。以下はすべて各社の有価証券報告書に基づく公式情報ですが、決算期が異なるため年度を明記しています。
| 企業名(コード) | 対象決算期 | 売上・事業収益 | 営業損益 | 従業員数 | 有報の平均年間給与 |
|---|---|---|---|---|---|
| Veritas In Silico(130A) | 2025年12月期 | 0.91億円(前期比53.2%減) | △3.96億円 | 19名 | 837.4万円 |
| クオリプス(4894) | 2026年3月期 | 2.12億円 | △10.81億円 | 51名(連結) | 621万円 |
| サイフューズ(4892) | 2025年12月期 | 2.31億円 | △8.28億円 | 23名 | 935万円 |
| ケイファーマ(4896) | 2025年12月期 | 売上ゼロ | △9.16億円 | 20名 | 909.1万円 |
| ノイルイミューン・バイオテック(4893) | 2025年12月期 | 0.05億円 | △7.97億円 | 23名 | 707.5万円 |
この比較から読み取れることを3点にまとめます。
- 赤字幅は5社中で最も小さい:営業損失△3.96億円は、他4社の△7.97億円〜△10.81億円と比べて明確に小さく、年間の資金消費ペースが抑えられています。研究開発費2億1,562万円という水準が、そのまま組織規模に見合ったものになっている、と読めます
- 年収は中位:837.4万円はサイフューズ935万円・ケイファーマ909.1万円に次ぐ3番目。ただし5社中4社が母数20名前後で、この帯の数字はいずれも少数の平均である点に注意が必要です。母数51名のクオリプス621万円だけが相対的に統計的信頼性の高い数字といえます
- 収益が減少しているのは同社の特徴:クオリプスとサイフューズは増収局面にあり、この会社は2期連続の減収という点で他社と異なります。一方で売上ゼロのケイファーマ、事業収益500万円のノイルイミューンと比べれば、収益を上げ続けていること自体は事実です
総じて、「赤字幅は最小だが、収益トレンドは下向き」というのが5社の中でのポジションです。年収の高さだけで比較するのではなく、資金消費ペースと収益トレンドをセットで見るのが、この業界の企業を比較する際の実務的な視点になります(推定情報としての解釈です)。
Veritas In Silicoへの転職が向いている人・向いていない人
ここまでの公式情報・業界文脈をふまえ、適性を整理します(推定情報を含みます。実際の適合度は募集ポジションによって変わります)。
| 向いている人 | 向いていない人 |
|---|---|
| RNA生物学・有機合成・構造生物学・計算科学のいずれかで実務経験があり、mRNA標的という新しいモダリティに賭けたい人 | 確立された領域で、実績のある手法を深掘りしたい人 |
| ウェット(実験)とドライ(計算・データ解析)を橋渡しできる、または橋渡しできるようになりたい人 | 専門領域を1つに限定し、そこだけに集中したい人 |
| 19名規模の裁量と、研究以外の周辺業務の兼務を許容できる人 | 分業が明確で、専門外の業務が発生しない体制を求める人 |
| 売上や利益ではなく、提携本数・特許・パイプライン進捗といった非財務KPIで自分の成果を測れる人 | 売上・利益の伸びで会社と自分を評価したい人 |
| 有価証券報告書や決算資料を自分で読み、リスクを引き受けたうえで意思決定できる人 | 口コミサイトの評価や社員の声で会社を判断したい人 |
| 品川本社/新川崎研究所(産業支援施設内)/新潟研究所(大学構内)という勤務地の選択肢を許容できる人 | 都心のオフィス勤務を前提に働きたい人 |
転職検討時に確認したいポイント(編集部の見解)
編集部の見解として、この会社は「情報が少ないから判断できない会社」ではなく、「情報の取り方を変えれば判断できる会社」だと考えています。口コミが0件である以上、通常の転職検討プロセスは機能しません。しかし上場企業である以上、有価証券報告書という一次情報が毎年公開されており、19名という小規模さゆえに、その数字がほぼそのまま現場の実態を示します。むしろ、従業員数千人の大企業より実態がクリアに見える面すらあります。
総合すると、以下の条件が揃う人にはおすすめできると考えられます。①mRNA標的低分子・核酸医薬という領域に技術的な確信が持てる、②数年単位の事業ボラティリティを受け入れられる、③少人数組織で研究以外の役割も担う覚悟がある——この3つです。逆に、いずれか1つでも欠ける場合は、より規模の大きい製薬企業やCRO/CDMOを併願したうえで比較検討することを推奨します。
選考に進む場合、面接で必ず確認したい実務的な質問は次のとおりです。
- 新規契約締結数が目標4社に対し3社となった要因と、2026年に向けた打ち手
- 自社パイプライン(ASO)と共同創薬研究支援、自分が関わるのはどちらの業務が中心か
- 配属拠点(品川/新川崎/新潟)と、拠点間の異動の考え方
- 評価制度・昇給の運用実態と、賞与の変動幅
- 研究テーマの意思決定プロセスにおける、代表取締役社長の関与度合い
Veritas In Silicoに関するよくある質問(FAQ)
検索時に混同が起きやすい点、有報の数字の読み方に関する疑問をまとめました。
ヴェリタス・インベストメントやベリタステクノロジーズと同じ会社ですか?
いずれも別会社です。この記事で扱っているのは証券コード130A・東京都品川区西五反田・公式ドメインveritasinsilico.comの株式会社Veritas In Silicoで、mRNA標的低分子創薬のプラットフォーム企業です。「ヴェリタス」「ベリタス」を冠する不動産会社・ソフトウェア企業とは資本関係がありません。求人サイトや口コミサイトで検索する際は、証券コードまたは所在地で必ず確認してください。
平均年収837万4千円は、誰の平均ですか?
第10期有価証券報告書(2025年12月31日現在)に記載された、従業員19名の平均年間給与です。他社から当社への出向者を含み、臨時従業員(パート職員)と派遣社員は含まれません。役員報酬も含まれていません。基準外賃金(残業代等)を含む金額です。母数が19名と極めて少ないため、1〜2名の入退社で平均が大きく振れる点、および平均年齢45.8歳という高年齢構成を反映した水準である点に注意してください。
「全社の資産を減損して帳簿価額0円」というのは、経営が行き詰まったということですか?
そのようには読めません。減損は会計上の処理であり、継続企業の前提に関する注記も、重要事象等の記載も第10期有価証券報告書には存在しません。純資産17億8,388万円・自己資本比率94.6%で債務超過でもありません。減損損失の額も3,132万円と小さく、拠点の閉鎖や研究の停止を伴うものでもありません。事実としては「継続的な営業損失と営業キャッシュ・フローのマイナスにより、将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回ると判断された」というものです。
手元資金はあとどのくらい持ちますか?
単純計算では、営業キャッシュ・フロー実績ベースで約6年、2026年12月期の会社計画(営業損失△5億6,900万円/IRBANKによる二次ソース値)ベースで約3年強です。いずれも推定情報としての割り算であり、追加調達・新規契約・費用増減を織り込んでいません。なお現金及び預金18億2,521万円のうち15億円は3か月超の定期預金で、キャッシュ・フロー計算書上の「現金及び現金同等物」3億2,521万円とは別の概念です。後者だけを見て資金量を判断しないでください。
新卒採用や、残業・有給の実態は分かりますか?
新卒採用の有無・初任給・賞与水準・残業時間・有給取得率・リモート勤務可否・退職金制度は、いずれも有価証券報告書では開示されていません。女性管理職比率・男性育休取得率・男女賃金差異も、法定公表義務の対象外のため有報に記載がありません。口コミサイトにも情報が蓄積されていないため、これらは面接段階で直接確認する以外に方法がありません。求人自体はdoda・パソナキャリアおよび公式採用ページで確認でき、2026年6月にも川崎研究所の研究員スタッフ募集が出ています。
Veritas In Silicoへの転職判断まとめ
ここまでの内容を、判断軸ごとに整理します。最終的な判断は、求人票と内定時の労働条件通知書、そして最新の公式IR資料で必ず確認してください。
| 判断軸 | 評価 |
|---|---|
| 年収水準 | 有報の平均年間給与837万4千円は創薬ベンチャー5社中3番目。ただし母数19名・平均年齢45.8歳を前提とした数字(公式情報) |
| 財務の安定性 | 純資産17億8,388万円・自己資本比率94.6%・実質無借金。第10期の財務CFは0円で新規調達なし(公式情報) |
| 収益トレンド | 第8期をピークに2期連続の減収。第10期は前期比53.2%減。黒字は第8期の1期のみ(公式情報) |
| 資金余力 | 単純計算で約3年強〜約6年。前提の置き方で幅が出る(推定情報) |
| 組織規模と働き方 | 19名・3拠点。有報が小規模組織リスクと特定人物への依存を明記。周辺業務の兼務が生じやすい(公式情報+推定情報) |
| 評判・口コミ | OpenWorkの社員クチコミ0件・回答者0名。口コミ傾向としての判断材料は存在しない |
| 事業の方向性 | 東レ・塩野義製薬・武田薬品工業等との提携、日米欧3極でのビジネスモデル特許、2025年開始の自社ASOパイプライン(公式情報) |
| 業界環境 | RNA標的低分子は成長モダリティ。一方で会社自身が「製薬会社の創薬支援契約は世界的に減少傾向」と記載(公式情報) |
どのサービスを使えばいいか決められないとき
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本記事の出典・参考情報
本記事で参照した一次情報・口コミ情報の出典は以下の通りです。最新の正確な数値は各リンク先で確認してください。年収・平均年齢・平均勤続年数・従業員数・業績はすべて第10期有価証券報告書(2025年12月期)の実額です。
公式情報源
- 株式会社Veritas In Silico 公式サイト
- 株式会社Veritas In Silico IRページ
- 株式会社Veritas In Silico 採用情報
- EDINET(金融庁・有価証券報告書検索)
口コミ・評判の参照元
免責事項:本記事の数値・評価は公式情報・口コミ集計・市場推定の3分類で示しており、口コミ傾向や推定情報は断定ではなく傾向・可能性として表現しています。2026年12月期の会社計画値はIRBANKによる二次ソース値である旨を本文中に明記しています。最終判断は読者自身で公式IRおよび内定時の労働条件通知書で確認してください。
この記事の編集方針・情報の確認について
この記事は、公式公開情報(有価証券報告書・IR資料)、求人情報、口コミ傾向をそれぞれ分けて整理し、転職・就職判断に役立つよう編集しています。年収・平均年齢・平均勤続年数・従業員数などの中核データは、EDINETに提出された第10期有価証券報告書「従業員の状況」を一次情報として確認し、口コミ・推定情報とは明確に区別しています。同名の別法人との混同を避けるため、対象企業は証券コード130A・東京都品川区西五反田の株式会社Veritas In Silicoに限定しています。記載内容は最終更新時点の公開情報にもとづきます。最新の正確な数値は各公式IRページでご確認ください。
