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アンジェスはやばい?なぜ潰れないのか|継続企業注記4期連続と年収1,054万円の実像

コロ助

※本記事にはプロモーションを含みます。

この記事の結論

  • 最重要:継続企業の前提に関する注記が第24期から4期連続で付いています
  • なぜ潰れないか:新株予約権での資金調達と取引先の支払猶予でつないでいます
  • 年収:有報1,054万円は単体35名の値。募集要項は500〜650万円・賞与「無」
  • 求人の注意:「アンジェス 求人」の多くは同名の介護事業者で別会社です

「アンジェス なぜ潰れない」「アンジェス 上場廃止」「アンジェス やばい」。この会社について検索されている言葉は、他の上場企業とは明らかに毛色が違います。そして結論から言えば、その検索は的外れではありません。アンジェス株式会社(4563・東証グロース)には正式な「継続企業の前提に関する注記」が第24期から4期連続で付されており、2026年12月期の中間決算短信では会社自身が「時期を問わず資金が枯渇し支払いが困難となる可能性があります」と記載しています。この記事は、株価の話ではなく「この会社に入社するかどうかを判断する人」のために、開示されている事実だけを使って現状を整理するものです。煽ることも、逆に安心材料でまとめることもしません。転職検討者にとって必要なのは、資金状況という事実を正確に知ったうえで、自分の職種・年齢・資産状況に照らして判断できる材料です。

先に切り分け|「アンジェス 求人」で出てくる会社の多くは別会社です

本題に入る前に、検索結果で最も誤解が起きやすい点を先に整理します。結論として、「アンジェス 求人」「アンジェス 評判」で表示される求人情報の多くは、この記事で扱う上場企業のアンジェス株式会社(4563)とは無関係です。

実際の検索データを見ると、「アンジェス上溝 求人」「アンジェス 宇都宮砥上 求人」「アンジェス 宇都宮御幸本町 求人」「アンジェス 相模原 求人」「アンジェス 西焼津 求人」「アンジェス 姫路 求人」「アンジェス 介護 評判」といったキーワードが、それぞれ月間数十件規模で検索されています。これらは同名の介護事業者「アンジェス」に関する検索であり、遺伝子医薬の創薬バイオベンチャーである4563とは資本関係も事業内容もまったく別です。

  • 4563のアンジェス株式会社:遺伝子治療用製品・核酸医薬の研究開発。従業員は連結56名。勤務地は東京都港区(実務拠点)。介護・訪問看護事業は行っていません。
  • 同名の介護事業者:相模原・宇都宮・焼津・姫路などの地域名とセットで検索される求人。介護職・訪問介護の募集が中心です。

地域名がセットになっている求人・評判の情報は、まず別会社の可能性を疑ってください。この記事の以降の記述は、すべて上場企業である4563のアンジェス株式会社についてのものです。

アンジェス株式会社(4563)の公式データ一覧(有価証券報告書ベース)

本記事で扱う公式数値を一覧で確認できます。公式情報として、すべて有価証券報告書・決算短信の実額です。最新の正確な数値は公式IRページで再確認してください。

項目内容
商号・証券コードアンジェス株式会社(AnGes, Inc.)/4563・東京証券取引所グロース市場
設立1999年12月(大阪府和泉市に「株式会社メドジーン」として設立、2017年7月に現社名)
代表者代表取締役社長 山田英(2002年9月就任・在任約24年)
本店所在地大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目7番15号 彩都バイオインキュベータ(実際の管理業務は東京都港区芝四丁目13番3号 PMO田町東9階)
平均年間給与10,538,741円(約1,054万円)※提出会社35名・2025年12月31日現在
平均年齢53.7歳(提出会社)
平均勤続年数7.4年(提出会社)
従業員数連結56名(ほか平均臨時雇用者20名)/提出会社35名(ほか臨時19名)
事業収益(売上高)874百万円(第27期・2025年12月期連結/前期比+35.8%)
営業利益営業損失5,145百万円(同期・連結)
当期純利益親会社株主に帰属する当期純損失5,123百万円(同期・連結)
自己資本比率55.2%(2025年12月末)→ 3.5%(2026年6月末・中間期)
継続企業の前提「継続企業の前提に関する注記」あり(第24期〜第27期の4期連続、2026年12月期中間短信でも記載)
配当無配(2026年12月期予想も0.00円)
出典第27期有価証券報告書(2026年3月25日提出)/2025年12月期決算短信/2026年12月期第2四半期決算短信(2026年8月14日開示)

アンジェスは「やばい」のか|検索されている不安の中身を事実で分解する

結論を先に書きます。「やばい」という主観的な評価語で断じることはしませんが、転職判断において無視できない財務事実が、会社の開示資料に明記されているのは確かです。ここでは口コミや噂ではなく、有価証券報告書と決算短信に書かれていることだけを並べます。

継続企業の前提に関する注記が第24期から4期連続で付いている

公式情報として、第27期有価証券報告書の連結財務諸表【注記事項】には「(継続企業の前提に関する事項)」が明記されています。同趣旨の注記は第24期(2022年12月期)から第27期(2025年12月期)まで4期連続で付されており、さらに2026年12月期第2四半期(中間期)決算短信の中間連結財務諸表にも「(継続企業の前提に関する注記)」が記載されています。

ここは表現を厳密に区別する必要があります。上場企業の開示には、①正式な「継続企業の前提に関する注記」が付いている状態、②注記までは至らないが「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況」=いわゆる重要事象等の記載がある状態、③いずれの記載もない状態、の三段階があります。アンジェスは①に該当します。②の「重要事象等の記載のみ」ではありません。

有報の結論文言は「当社は継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在していると判断しております。なお、連結財務諸表は継続企業を前提としており、上記のような継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を連結財務諸表には反映しておりません。」というものです。なお同社は2019年3月26日に一度「継続企業の前提に関する注記の記載解消」を適時開示しており、その後ふたたび注記が付いた経緯があります。

2026年6月末で自己資本比率3.5%・現金及び預金2億81百万円

直近半年での財務指標の変化が、この会社を理解するうえで最も重要です。公式情報として決算短信の数値を並べます。

  • 2025年12月末(第27期末):純資産30億76百万円、自己資本比率55.2%、現金及び預金18億82百万円
  • 2026年6月末(中間期末):純資産2億05百万円、自己資本1億26百万円、自己資本比率3.5%、現金及び預金2億81百万円

半年で純資産が30億円台から2億円台へ、自己資本比率が55.2%から3.5%へ低下しています。2026年12月期の中間実績は売上高502百万円(前年同期比+21.2%)に対し、営業損失32億36百万円・中間純損失27億14百万円です。さらに会社は2026年12月期通期で約100億円の営業キャッシュ・アウトフロー(純額)を見込むと開示しています。手元の現金及び預金2億81百万円との差は、外部からの資金調達で埋める前提の構造だということです。

会社自身が「時期を問わず資金が枯渇し支払いが困難となる可能性」と記載している

これは推測でも第三者の評価でもなく、会社が自ら開示文書に書いている文言です。2026年12月期第2四半期(中間期)決算短信には、次の趣旨の記載があります。

  • 一部取引先との協議に基づき、約21億円の債務について支払の猶予を受けている(2026年7月末時点では約24億円)
  • 猶予を受けている債務のうち、約9億円が2026年8月末、約14億円が2026年11月末に支払期限を迎える
  • 「時期を問わず資金が枯渇し支払いが困難となる可能性があります」

取引先への支払いを猶予してもらっている状態、そしてその期限が数か月単位で迫っているという状態が、会社の言葉で開示されています。転職検討者にとっては、これは「入社後に会社の資金繰りが行き詰まるリスクが、無視できる水準ではない」という意味を持ちます。この点をぼかして伝えることは、読者を誤導することになるためしません。

「なぜ潰れないのか」への答え|資金をつないでいる3つの仕組み

この会社について最も多く検索されているのが「アンジェス なぜ潰れない」というキーワードです(合計で月間2,600件規模)。10期以上連続で営業赤字が続き、主力製品も失った会社が、なぜ事業を続けられているのか。答えは「本業の利益ではなく、資本市場からの調達・取引先の猶予・上場という三つの仕組みで資金をつないでいるから」です。以下、開示されている事実で説明します。

①新株予約権と転換社債による調達(5年で発行済株式が約2.6倍)

アンジェスの資金の出どころは、製品の売上ではなく新株の発行です。公式情報として、発行済株式総数は2021年12月末の153,072,400株から、2025年12月末389,026,550株、2026年6月末398,835,550株へと、5年弱で約2.6倍に増えています。資本金は402億28百万円まで積み上がる一方、純資産は2億円台まで縮小しました。つまり、調達した資金がそのまま研究開発費と損失で消えていく構造です。

調達手法は行使価額修正条項付新株予約権への依存が続いています。2026年8月14日には、Cantor Fitzgerald Europeを割当先とする第46回新株予約権を取得・消却したうえで、グロースパートナーズ株式会社のファンドを引受先とする第2回無担保転換社債型新株予約権付社債(20億円)・第47回新株予約権(40億円)・第48回新株予約権(25億円)へ、資金調達スキームを全面的に切り替えています。あわせて、子会社ACRLが手がける希少遺伝性疾患スクリーニング検査事業についても、他社との提携・組織再編による資金化を協議中と開示されています。

ここから読み取れるのは、推定情報として「資金調達の相手先が変わるたびに条件が組み替えられており、調達の安定性そのものが年単位で流動的である」という可能性です。5年間の株主総利回りは4.9%(比較指標の東証グロース市場250指数は56.4%)で、既存株主の価値は大きく希薄化しています。

②取引先による約24億円の支払猶予

二つ目が前章で触れた支払猶予です。通常の企業活動では、取引先への支払いは期日どおりに行われます。それが約21億円(2026年7月末時点で約24億円)にわたって猶予されているという事実は、取引先側の協力によって当面の資金流出が抑えられていることを意味します。裏を返せば、この猶予が続く前提が崩れれば、資金繰りは直ちに厳しくなります。約9億円が2026年8月末、約14億円が2026年11月末に期限を迎えると開示されている以上、状況は数か月単位で変わり得ます。

③上場を維持できていること(時価総額約155億円)

三つ目が上場企業であること自体です。株価39円・時価総額約155億円(2026年8月21日時点、発行済398,835,550株ベース)という水準は、東証グロース市場の上場維持基準(上場から10年超で時価総額40億円以上)を現時点で満たしています。上場を維持できているからこそ、新株予約権や転換社債による市場調達が成立します。推定情報ですが、この三つのうちどれか一つが機能しなくなった場合、残る二つへの依存度が高まる構造だと考えられます。「潰れない理由」は本業の収益力ではなく、この資金供給の連鎖が続いていることにある、というのが開示資料から読み取れる姿です。

主力製品はなぜ消えたのか|コラテジェンの失効とコロナDNAワクチンの中止

資金繰りの話の前提として、この会社が現在、国内で販売している自社製品を持っていないという事実を押さえる必要があります。転職検討者にとっては「入社後に何を作る会社なのか」に直結する論点です。

コラテジェン:2024年6月に条件・期限付承認が失効し販売終了

HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン」(米国名COLLATEGENE)は、2019年3月に国内初のHGF遺伝子治療用製品として条件及び期限付承認を取得し、同年9月から田辺三菱製薬が販売していました。しかし市販後調査で国内第Ⅲ相試験の成績を再現できず、2024年6月24日に本承認申請を取り下げ、条件・期限付承認は期限満了により失効。販売終了・市場回収となりました。2024年8月に田辺三菱製薬との国内独占販売権許諾契約が、11月には米国分の契約も終了しています。

この結果、国内での製品売上はゼロになりました。現在は米国での承認取得が最優先課題で、2024年9月にFDAからブレイクスルー・セラピー指定を受け、2026年7月にPre-BLA Meetingおよび生物学的製剤承認申請(BLA)に関する開示を行っています。推定情報ですが、米国での承認可否が今後の事業計画に与える影響は極めて大きいと考えられます。

新型コロナDNAワクチン:2022年9月7日に開発中止、補助金74.5億円は返還義務なし

一般の認知度が最も高いのが、新型コロナウイルス向けDNAワクチンの開発です。2020年3月に大阪大学と共同で開発を開始しましたが、2022年9月7日に開発中止を公表しています。理由は、高用量製剤の第Ⅰ/Ⅱ相試験で安全性に問題はなかったものの、免疫原性が期待した水準に至らなかったためと説明されています。この開発中止にあわせて、タカラバイオや米AGC Biologics等との共同研究も終了しました。

補助金については、AMED(日本医療研究開発機構)・厚生労働省から計74億5,000万円を受領したとされますが、これは報道ベース(日本経済新聞・日経バイオテク等)の情報である点を明記しておきます。返還義務はなく、会社も公式Q&Aで「開発結果の成否による補助金の扱いに変更はありません」「受領した補助金は、使用実績の監査を受け、適正と認められたワクチン開発費を補助金収入として計上できる仕組み」と回答しています。当時この経緯が社会的な議論の対象になった事実はありますが、本記事は転職判断を目的とするため、議論の内容そのものには踏み込みません。現在は米スタンフォード大学との経鼻投与型の改良版DNAワクチン研究(非臨床3年・約300万米ドル規模)へと大幅に規模を縮小しています。

現在の収益源とパイプライン

では今の売上は何で立っているのか。公式情報として、現在の事業収益874百万円(第27期)の内訳は、早老症治療薬「ゾキンヴィ」の商品売上、子会社ACRL(アンジェスクリニカルリサーチラボラトリー)による希少遺伝性疾患スクリーニング検査の手数料収入、そして提携先からの契約一時金・マイルストーン収入です。開発パイプラインとしては、椎間板性腰痛症を対象とするNF-κBデコイオリゴDNA(塩野義製薬が国内第Ⅱ相の費用を一部負担)、カナダVasomune Therapeutics社と共同開発するTie2受容体アゴニストAV-001、米国子会社EmendoBio Inc.のゲノム編集技術などがあります。

10期以上連続の営業赤字|業績5期推移と2026年12月期の会社予想

数字で見ると、この会社の収益構造の特徴がはっきりします。公式情報として、有価証券報告書・決算短信の実額を並べます。

決算期事業収益親会社株主に帰属する当期純損益
第23期(2021年12月期)64百万円△136億75百万円
第24期(2022年12月期)67百万円△147億14百万円
第25期(2023年12月期)152百万円△74億37百万円
第26期(2024年12月期)643百万円△281億28百万円
第27期(2025年12月期)874百万円△51億23百万円
2026年12月期(会社予想)1,330百万円△102億50百万円

読み取るべきポイントは3つあります。

  • 事業収益は増えているが桁が違う:64百万円→874百万円と5期で約13.7倍に伸びていますが、絶対額は8.7億円です。同期の営業損失51億45百万円と比べると、収益で費用をまかなえる規模には遠い状態です。
  • 「赤字が縮小したから改善」ではない:第27期の当期純損失51億23百万円は前期(△281億28百万円)から大きく縮小して見えますが、第26期の巨額損失はEmendoBio社に係るのれん減損という特別損失が主因です。そして2026年12月期の会社予想は営業損失102億30百万円・経常損失102億40百万円・当期純損失102億50百万円と再拡大の見込み(2026年8月14日開示)です。縮小は一時的なもので、トレンドとしての改善とは言えません。
  • 赤字は10期以上の常態:営業赤字は10期以上連続しており、単年度の不調ではなく、開発ステージのバイオベンチャーとして構造的に赤字が続いている状態です。

あわせて子会社の財政状態も押さえておく必要があります。米国EmendoBio Inc.(出資比率92.6%)は2025年12月末時点で1億2,096万米ドルの債務超過、イスラエルのEmendo Research and Development Ltd.(100%)も78.2万米ドルの債務超過です。イスラエルに研究拠点を持つことから、有価証券報告書は中東情勢に起因する地政学リスクも明示しています。

アンジェスの年収1,054万円は実態か|募集要項500〜650万円・賞与「無」との乖離

ここが求職者にとって最も誤解しやすい部分です。結論から言うと、有価証券報告書の平均年間給与1,054万円をそのまま入社後の想定年収と考えるのは適切ではありません。

有報の平均年間給与とその推移

公式情報として、第27期有価証券報告書「従業員の状況」に記載された平均年間給与は10,538,741円(2025年12月31日現在、賞与等を含む)です。4期の推移は以下のとおりで、緩やかに減少しています。

  • 第24期(2022年12月期):11,206,398円(約1,120万円)
  • 第25期(2023年12月期):10,933,205円(約1,093万円)
  • 第26期(2024年12月期):10,680,558円(約1,068万円)
  • 第27期(2025年12月期):10,538,741円(約1,054万円)

4期連続で微減していますが、水準としては上場企業のなかでも高い部類です。ただし、この数字の対象は提出会社(単体)の35名のみです。連結56名のうち21名は米国EmendoBio Inc.やイスラエルEmendo R&D等の海外子会社人員で、この平均には含まれていません。

平均年齢53.7歳・平均勤続7.4年という構成の偏り

金額の背景を理解する鍵が年齢構成です。公式情報として、第27期の平均年齢は53.7歳、平均勤続年数は7.4年です。推移は平均年齢が53.9歳→53.8歳→53.2歳→53.7歳、平均勤続年数が7.9年→7.4年→8.0年→7.4年と、いずれも安定しています。

上場企業全体の平均年齢がおおむね40歳前後であることを踏まえると、53.7歳という水準は著しく高いと言えます。35名という少人数で、かつ管理職・専門職層が中心の年齢構成であれば、平均年収が1,000万円を超えるのは自然です。推定情報として、この数値は「中途入社した現場担当者が受け取る金額」ではなく、「小規模・高年齢・上位職中心という組織構成が生んだ平均値」と読むのが妥当と考えられます。

公式募集要項に書かれている実際の条件

では実際のオファー水準はどうか。公式採用サイトによると、直近で掲載されていた募集要項(広報・IR担当グループリーダー)の条件は次のとおりです。

  • 想定年収:500〜650万円(グループリーダー/非管理職)
  • 賞与:無(年俸制。年収÷12で毎月支給)
  • 昇給:年1回(1月)
  • 年間休日126日、フレックスタイム制(コアタイム10:00〜15:00、標準労働8時間)
  • 平均残業時間:5〜15時間/月
  • 通勤手当上限5万円、退職金制度あり、定年60歳・65歳まで再雇用、英語学習補助等
  • 勤務地:東京都港区芝四丁目13番3号 PMO田町東9階(転勤なし)
  • 備考として「今回の募集は増員ではありません」と明記

有報の平均1,054万円と、募集要項の500〜650万円。この乖離こそが、求職者が知るべき最も実務的な情報です。加えて賞与が「無」である点は、年収の総額だけでなく収入の構造にも関わります。年俸制で賞与がない場合、業績連動の上振れが期待しにくい一方、月々の収入は平準化されます。

求職者
求職者

平均年収1,054万円と書いてあったのに、募集要項は500〜650万円。どちらを信じればいいの?

答えは「どちらも公式情報だが、対象が違う」です。有報の数字は在籍35名の平均、募集要項の数字はこれから入る人への提示額です。転職時に確認すべきポイントとしては、①内定時の労働条件通知書に記載された年俸額と支給方法、②賞与の有無と昇給の実績、③年俸改定の基準、④退職金制度の算定方法、の4点を必ず書面で確認することをおすすめします。加えて、2026年8月時点の公式採用情報ページには「中途採用:大変申し訳ありませんが、現在、求人募集は行っておりません」「新卒採用:当社は新卒採用は行っておりません」と記載されており、そもそも常時募集している状態ではない点も押さえておく必要があります。選考が行われる場合のフローは、書類選考→1次面接(各部門担当者・人事)→2次面接(代表との面談)→内定で、面接は2〜4回、性格判断検査ありとされています。

従業員56名の組織実態|2年前から90名減った理由と勤務地の二重構造

組織の輪郭を数字で押さえます。転職検討者にとっては、年収以上に「どういう人たちと、どこで働くのか」が判断材料になります。

公式情報として、連結従業員数の推移は次のとおりです。

  • 2021年12月:131名 → 2022年12月:138名 → 2023年12月:145名
  • 2024年12月:55名 → 2025年12月:56名

2023年12月期から2024年12月期にかけて、1年で90名減少しています。有価証券報告書はこの理由について「主な理由は、Emendo社の事業再編成の実施による従業員の退職によるもの」と明記しています。同期には提出会社(日本)も7名減少しています。希望退職の実施が公表されているわけではありませんが、この人員推移自体は開示された事実です。イスラエルのEmendo R&Dについては、中東情勢を理由に研究開発体制を見直し、AI活用に機能を集約したうえで段階的に米国へ移管する計画が示されています。

勤務地についても、この会社特有の構造があります。登記上の本店は大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目7番15号 彩都バイオインキュベータですが、第27期有価証券報告書の表紙には「上記は登記上の本店の所在地であり、実際の管理業務は『最寄りの連絡場所』で行っております」と明記されています。その最寄りの連絡場所が東京都港区芝四丁目13番3号 PMO田町東9階で、公式採用ページの勤務地も同じ住所です。つまり「大阪の会社」というイメージとは異なり、実質的な就業地は東京都港区です。求人票の勤務地を見る際は、本店住所と実際の勤務地を取り違えないよう注意してください。

経営体制については、代表取締役社長の山田英氏(1950年生まれ)が2002年9月から現任で、在任期間は約24年に及びます。AnGes USA, Inc. PresidentおよびEmendoBio Inc. CEOも兼務しています。有価証券報告書のリスク項目には「特定人物への依存」として同氏および創業に関わった森下竜一氏(現・メディカルアドバイザー)が実名で挙げられています。株主構成は上位10名の合計でも13.41%(筆頭はセントラル短資株式会社の2.57%)と極めて分散しており、親会社・支配株主・安定株主となる事業会社は存在しません。推定情報ですが、経営危機時に資本注入を行う親会社的な存在がいないという意味で、資金調達を市場に依存せざるを得ない構造につながっていると考えられます。

口コミが極端に少ない|OpenWork0件が示していること

結論として、アンジェスは口コミによる評価が成立しないほど投稿数が少ない企業です。そしてその「少なさ」自体が、組織の姿を語っています。

口コミ傾向を確認できる主要サイトの状況は次のとおりです。

  • OpenWork:企業ページは存在するものの社員クチコミは0件で、「社員クチコミはまだ投稿されていません」と表示されます。総合評価・各項目スコア・平均年収のいずれも非表示です。
  • 転職会議:口コミは全10件。「東証マザーズ上場の創薬バイオベンチャーで、難度の高い製品を開発途上にあり、比較的少人数での少数精鋭主義」といった趣旨の記述が見られます。
  • エン ライトハウス(エン カイシャの評判):総合評価3.2点(正社員3人の回答)、口コミ総数46件。会員登録前提で非公開部分が多い状態です。

ここで重要なのは、これらの母数では「評価が高い/低い」という判断が統計的に成立しないということです。正社員3人の回答による3.2点をもって働きやすさを論じることはできません。したがって本記事では、口コミスコアによる同業比較は行いません。

推定情報として言えるのは、提出会社35名・平均年齢53.7歳・平均勤続7.4年という組織で、投稿が集まらないのは構造的に自然だということです。退職者が出なければ口コミは書かれにくく、母集団が数十人規模であれば投稿者が特定されるリスクも意識されます。口コミが極端に少ないこと自体が、小規模・高年齢・人の出入りが少ない組織であることの傍証と読むのが妥当でしょう。逆に言えば、転職検討者は「ネットの評判で判断する」という手段がほぼ使えないため、面接での質問と開示資料の読み込みで代替する必要があります。

医薬品業界5社比較で見るアンジェスの立ち位置

同じ「医薬品」に分類される上場企業と並べると、アンジェスの特殊性が一目で分かります。公式情報として各社の有価証券報告書・決算短信の実額を比較します。決算期がそれぞれ異なるため、年度を必ず確認してください。

企業名(コード)対象決算期売上高・事業収益営業利益従業員数有報の平均年間給与
ゼリア新薬工業(4559)2026年3月期892億円124億円連結1,748名・単体872名約799万円
富士製薬工業(4554)2025年9月期517億円49.9億円連結1,760名・単体969名約694万円
中京医薬品(4558)2026年3月期65.7億円1.27億円(利益率1.9%)298名(非連結)約527万円
カイノス(旧4556)売上・利益は直近期/給与は2025年3月期54.8億円7.47億円157名(非連結)約722万円
アンジェス(4563)2025年12月期8.7億円営業損失51.5億円連結56名・単体35名約1,054万円

なおカイノスは2026年6月11日に上場廃止となり、現在はデンカ傘下の非上場会社です。表の数値は最新の開示時点のものとして参照してください。

この比較から読み取れることを整理します。

  • 事業規模が2桁違う:売上892億円のゼリア新薬工業に対し、アンジェスの事業収益は8.7億円。同じ業界分類でも、製薬メーカーと開発ステージのバイオベンチャーはビジネスモデルがまったく異なります。
  • 唯一の営業赤字企業:他4社が営業黒字であるのに対し、アンジェスは営業損失51.5億円。医薬品業界のなかでも例外的なポジションです。
  • 平均年収は最も高いが人数が最も少ない:約1,054万円は5社中最高ですが、対象は単体35名。1,748名の平均である799万円(ゼリア新薬工業)とは統計的な意味が異なります。

推定情報として、キャリアの観点で言えば、安定した給与と組織的な育成を求めるなら製薬メーカー側、遺伝子医薬・核酸医薬という先端領域の開発に直接関わりたいならバイオベンチャー側という選択になります。ただしアンジェスの場合、後者を選ぶ際に通常のバイオベンチャー以上に資金面の確認が必要になる、というのが本記事の要点です。

上場廃止の可能性はどう考えるべきか

「アンジェス 上場廃止」「上場廃止 理由」といった検索も一定数あります。まず事実として、2026年8月時点で上場廃止が決定した事実はなく、上場維持基準への不適合も開示されていません。

  • 東証グロース市場の上場維持基準(上場から10年超で時価総額40億円以上)に対し、時価総額は約155億円(2026年8月21日時点)で現時点では適合しています。
  • 有価証券報告書・決算短信に「上場維持基準の適合に向けた計画書」に関する記載はありません。
  • 一方で、東証の上場廃止基準には「債務超過となり1年以内に解消できない場合」という項目があります。2026年6月末の純資産は2億05百万円で、この水準から債務超過に転落した場合には、当該基準に抵触しうる構造にあります。

したがって、推定情報として「上場廃止が確定的である」とも「上場廃止のリスクは無視してよい」とも言えないのが実情です。転職検討者にとって重要なのは株式の帰趨そのものではなく、上場が維持されるかどうかが資金調達の前提になっているという点です。前述のとおり、この会社の資金は市場調達に依存しています。上場という前提が揺らげば、調達手段も連動して制約を受けます。なお本記事は転職・就職判断を目的としたものであり、株式投資に関する助言を行うものではありません。株式を保有する立場での判断は、証券会社や公式IRの開示情報でご確認ください。

アンジェスへの転職が向いている人・向いていない人

ここまでの公式情報・口コミ傾向をふまえ、適性を整理します(推定情報を含みます)。前提として、2026年8月時点では中途・新卒とも募集が行われていない状態です。

向いている人向いていない人
遺伝子治療・核酸医薬という先端領域に、少人数で直接関わりたい人収入の安定性を最優先し、家計に余裕がない人
開示資料を自分で読み込み、リスクを理解したうえで意思決定できる人会社の存続を前提に長期のライフプランを組みたい人
製薬・バイオ・IR・薬事などの専門性が既にあり、次の職に困らない人初めての転職で、失敗時のリカバリー手段が限られる人
賞与なしの年俸制でも納得でき、月次収入の平準化を許容できる人賞与・インセンティブによる収入の上振れを期待する人
50代中心の少人数組織で、自律的に動ける人体系的な研修・OJTや同年代の同僚との協働を重視する人
東京都港区勤務・年間休日126日・残業月5〜15時間という条件が合う人大阪本社の企業として関西勤務を想定している人

編集部の見解|入社を検討するなら「資金状況の確認」が最初の手順

編集部の見解として、アンジェスへの転職を検討する場合、他社では省略してよい手順が一つ増えると考えます。それが「入社前に最新の資金状況を自分で確認する」という手順です。

通常の転職では、決算が黒字か赤字かを一度確認すれば十分なことがほとんどです。しかしこの会社の場合、四半期ごと、場合によっては月次の適時開示で状況が変わり得ます。2025年12月末に自己資本比率55.2%だったものが、半年後の2026年6月末には3.5%になっている。この変化のスピードは、内定から入社までの数か月という期間が決して短くないことを意味します。

具体的に確認すべきものを挙げます。

  • 最新の四半期・中間決算短信:現金及び預金、純資産、自己資本比率、継続企業の前提に関する注記の有無
  • 適時開示(TDnet・公式IRページ):新株予約権・転換社債の発行状況、資金調達スキームの変更、事業譲渡や提携に関する開示
  • 取引先への支払猶予の状況:猶予額と期限がその後どう推移しているか
  • 面接での質問:入社予定ポジションの人件費の原資、直近の資金調達計画、雇用条件が変更される可能性の有無

そのうえで、両面から見ておきます。ポジティブに評価できる材料としては、①事業収益が5期で64百万円→874百万円と伸びており、2026年12月期も1,330百万円(+52.2%)を計画していること、②コラテジェンが2024年9月にFDAからブレイクスルー・セラピー指定を受け、2026年7月に米国BLA申請に関する開示を行っていること、③塩野義製薬・ベーリンガー・インゲルハイム等との提携が継続していること、④有価証券報告書に「訴訟を提起されておりません」と明記されており、訴訟・行政処分の事実は開示資料からは確認されていないこと、⑤年間休日126日・平均残業5〜15時間・フレックスタイム制と、労働時間面の条件は整っていること、が挙げられます。

一方のネガティブな材料は本文で述べたとおり、継続企業の前提に関する注記・自己資本比率3.5%・約24億円の支払猶予・会社自身による資金枯渇の可能性への言及・国内製品売上ゼロ・連結従業員の大幅減という事実群です。

総合すると、この会社は「専門性が既に確立していて、仮に会社の状況が変わっても次の選択肢がある人」であれば、先端領域に関わる機会として検討の余地があると考えられます。一方で、安定性を求める人、リカバリー手段が限られる人にとっては、リスクとリターンが釣り合わない可能性が高いと言わざるを得ません。この判断は、読者自身の職歴・年齢・家計状況によって変わるものです。

アンジェスに関するよくある質問(FAQ)

アンジェスへの転職・就職を検討する人からよくある質問と回答をまとめました。

アンジェスはなぜ潰れないのですか?

本業の利益ではなく、①新株予約権・転換社債による市場からの資金調達、②取引先による約24億円の支払猶予、③上場を維持していることによる調達手段の確保、という三つの仕組みで資金をつないでいるためです(いずれも決算短信・適時開示で開示された公式情報)。ただし会社自身が中間決算短信で「時期を問わず資金が枯渇し支払いが困難となる可能性があります」と記載しており、この状態が今後も続くと断定できる材料はありません。

継続企業の前提に関する注記が付いているとはどういう意味ですか?

企業が事業を継続していくうえで重要な不確実性があると会社・監査人が判断した場合に、財務諸表へ付される注記です。アンジェスの場合、第24期(2022年12月期)から第27期(2025年12月期)まで4期連続で付されており、2026年12月期中間短信にも記載があります。「重要事象等の記載のみ」の段階ではなく、正式な注記が付いている段階です。

アンジェスは上場廃止になるのですか?

2026年8月時点で上場廃止は決定しておらず、上場維持基準への不適合も開示されていません。時価総額約155億円で東証グロースの上場維持基準は満たしています。ただし東証の上場廃止基準には「債務超過を1年以内に解消できない場合」という項目があり、2026年6月末の純資産2億05百万円という水準からは、この基準に抵触しうる構造にあります(推定情報)。

アンジェスの平均年収1,054万円は本当にもらえますか?

有価証券報告書の10,538,741円は公式情報ですが、対象は提出会社35名・平均年齢53.7歳の平均値です。公式採用サイトの募集要項(広報・IR担当グループリーダー)では想定年収500〜650万円・賞与「無」・年俸制と記載されており、実際のオファー水準とは乖離があります。内定時の労働条件通知書で必ず確認してください。

アンジェスは現在採用を行っていますか?

2026年8月時点の公式採用情報ページには「中途採用:大変申し訳ありませんが、現在、求人募集は行っておりません」「新卒採用:当社は新卒採用は行っておりません」と記載されています。過去に掲載された募集要項では、選考フローは書類選考→1次面接(各部門担当者・人事)→2次面接(代表との面談)→内定、面接2〜4回・性格判断検査ありとされていました。

新型コロナワクチンの開発中止と補助金はどうなったのですか?

DNAワクチンの開発中止は2022年9月7日に公表されました。高用量製剤の第Ⅰ/Ⅱ相試験で安全性に問題はなかったものの、免疫原性が期待水準に至らなかったことが理由と説明されています。AMED・厚生労働省から計74億5,000万円の補助金を受領したとされますが、これは報道ベースの情報であり、返還義務はないと報じられています。会社も公式Q&Aで補助金の扱いに変更はない旨を回答しています。

勤務地は大阪ですか、東京ですか?

登記上の本店は大阪府茨木市彩都あさぎですが、第27期有価証券報告書の表紙に「実際の管理業務は最寄りの連絡場所で行っております」と明記されており、その住所は東京都港区芝四丁目13番3号 PMO田町東9階です。公式採用ページの勤務地も同所で、転勤なしとされています(公式情報)。

アンジェスへの転職判断まとめ

ここまでの内容を、判断軸ごとに整理します。最終的な判断は、求人票だけでなく自分の経験・適性、そして最新の開示情報も含めて確認しましょう。

判断軸評価
財務の安定性継続企業の前提に関する注記が4期連続。2026年6月末の自己資本比率3.5%、現金及び預金2億81百万円。約24億円の支払猶予を受けている状態
収益性事業収益874百万円に対し営業損失51億45百万円。営業赤字は10期以上連続。2026年12月期は当期純損失102億50百万円を会社予想
年収水準有報の平均1,054万円は単体35名・平均53.7歳の値。募集要項の想定年収は500〜650万円・賞与「無」
働き方年間休日126日、フレックスタイム制、平均残業5〜15時間/月、転勤なし、東京都港区勤務
事業の見通し国内製品売上はゼロ。米国でのコラテジェンBLA申請が最優先課題。事業収益自体は5期連続で増加
組織規模連結56名・単体35名。2023年12月期の145名から2年で大幅減。平均年齢53.7歳
採用状況2026年8月時点で中途・新卒とも募集は行われていない
情報の集めやすさ口コミ母数が極端に少なく、評判サイトによる判断は成立しにくい。IR開示の直接確認が必須

どのサービスを使えばいいか決められないとき

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本記事の出典・参考情報

本記事で参照した一次情報・口コミ情報の出典は以下の通りです。最新の正確な数値は各リンク先で確認してください。

公式情報源

数値の主たる出典は、第27期有価証券報告書(2026年3月25日提出)、第24期〜第26期有価証券報告書、2025年12月期決算短信(2026年2月10日)、2026年12月期第2四半期決算短信(2026年8月14日)、公式採用情報ページ、公式広報ブログです。新型コロナDNAワクチンの補助金額に関する記述は報道ベースの情報であり、その旨を本文中に明記しています。

口コミ・評判の参照元

免責事項:本記事の数値・評価は公式情報・口コミ傾向・推定情報の3分類で示しており、口コミ傾向や推定情報は断定ではなく傾向・可能性として表現しています。また本記事は転職・就職判断を目的としたものであり、株式投資に関する助言を行うものではありません。最終判断は読者自身で公式IRおよび内定時の労働条件通知書で確認してください。

この記事の編集方針・情報の確認について

この記事は、公式公開情報(有価証券報告書・IR資料)、求人情報、口コミ傾向をそれぞれ分けて整理し、転職・就職判断に役立つよう編集しています。年収・平均年齢・従業員数などの中核データは有価証券報告書「従業員の状況」を一次情報として確認し、口コミ・推定情報とは明確に区別しています。財務状況については、会社が開示した文言をそのまま引用する方針を取り、事実を弱めたり強めたりしないよう配慮しています。記載内容は最終更新時点の公開情報にもとづきます。最新の正確な数値は各公式IRページでご確認ください。

著者紹介
コロ助
コロ助
企業と転職サービスを、有価証券報告書などの一次情報から読んでいます。
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