稲畑産業の年収1,005.8万円と評判|有報5期の推移と口コミの乖離
※本記事にはプロモーションを含みます。
この記事の結論
- 年収:有価証券報告書の平均年間給与は1,005.8万円。3年で約90万円増
- 前提:この金額は単体678名の数字。連結4,719名の平均ではない
- 業績:営業利益・経常利益とも過去最高。ただし情報電子事業は減益
- 評判:待遇満足度4.2に対し人材の長期育成2.5と、評価が割れる
稲畑産業の求人票や口コミサイトを見ていると、年収の数字がサイトごとにまったく違うことに気づくはずです。有価証券報告書には平均年間給与1,005.8万円と書かれている一方、口コミサイトの自己申告平均は712万〜787万円。約300万円の開きがあります。この記事では、この差がどこから生まれるのかを一次情報で分解したうえで、業績・働き方・選考・過去の開示事案まで、転職や就職の判断に必要な材料を整理します。数字はすべて第165期(2026年3月期)有価証券報告書と決算短信の実額にもとづき、口コミ・推定と明確に分けて記載します。
稲畑産業の公式データ一覧(有価証券報告書ベース)
まず、判断の土台になる公式情報を一覧にします。以下はすべて第165期(2025年4月1日〜2026年3月31日)有価証券報告書および2026年3月期決算短信の実額です。最新の正確な数値は公式IRページで再確認してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商号 | 稲畑産業株式会社(Inabata & Co., Ltd.) |
| 証券コード・市場 | 8098/東京証券取引所プライム市場 |
| 本社 | 大阪本社(登記上の本店)大阪市中央区南船場一丁目15番14号/東京本社 東京都中央区日本橋本町二丁目8番2号 |
| 創業・設立 | 創業1890年10月1日/設立1918年6月10日/1943年4月に現商号へ変更 |
| 資本金 | 93億6,400万円 |
| 平均年間給与 | 約1,005.8万円(10,058千円・提出会社/前事業年度比+2.2%) |
| 平均年齢 | 40歳11か月(提出会社) |
| 平均勤続年数 | 13年0か月(提出会社) |
| 従業員数 | 提出会社678名(ほか臨時22名)/連結4,719名(ほか臨時597名) |
| 売上高 | 8,327億45百万円(連結・前期比0.6%減) |
| 営業利益 | 261億64百万円(連結・前期比1.3%増/過去最高) |
| 経常利益 | 277億48百万円(連結・前期比6.2%増/過去最高) |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 206億32百万円(前期比4.0%増) |
| 自己資本比率・ROE | 47.3%/9.3% |
| 労働組合 | 本社・東京本社・名古屋支店の3支部からなる単一組合(有価証券報告書に「労使関係は円満に推移」と記載) |
| 出典 | 第165期(2026年3月期)有価証券報告書(2026年6月15日提出)/2026年3月期決算短信(2026年5月11日)/公式会社概要 |
注意点として、平均年間給与には注記があり、「賞与及び基準外賃金を含んでおります」と明記されています。つまり残業代と賞与を含んだ総支給ベースであり、月給表の水準そのものではありません。
稲畑産業とはどんな会社か|住友化学と135年の縁を持つ化学品専門商社
年収や評判の話に入る前に、この会社の輪郭を押さえておくと、あとの数字がすべて読みやすくなります。結論から言えば、稲畑産業は「住友化学と深い関係を持つ、独立系の化学品専門商社」です。
創業は1890年10月1日、京都で染料店として始まりました。1918年に株式会社化、1943年4月に現在の商号となり、1944年に住友化学工業が日本染料製造を合併したことに伴って同社の染料・化学品・医薬品の特約販売店となりました。ここから80年以上にわたる住友化学との取引関係が続いています。
ただし、公式情報として押さえておくべきは資本関係の実態です。有価証券報告書の大株主状況(2026年3月31日現在)では、筆頭株主が日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で13.04%、第2位が住友化学で10.42%。有価証券報告書に親会社の記載はなく、稲畑産業は住友化学の子会社でも持分法適用関連会社でもありません。「住友グループの一員」というイメージで語られやすい会社ですが、待遇や人事制度は住友化学のものではなく、稲畑産業独自のものである点は転職検討時に区別しておくべきポイントです。
4つのセグメントと、その規模差
事業は「合成樹脂」「情報電子」「化学品」「生活産業」の4セグメントです。第165期の連結売上高構成は次の通りで、合成樹脂だけで全体の約49%を占めます。
| セグメント | 売上高(第165期) | 前期比 | セグメント利益 | 前期比 |
|---|---|---|---|---|
| 合成樹脂 | 4,079億74百万円 | +1.6% | 132億21百万円 | +1.0% |
| 情報電子 | 2,393億36百万円 | △9.4% | 70億42百万円 | △16.9% |
| 化学品 | 1,251億37百万円 | +5.8% | 35億48百万円 | +20.3% |
| 生活産業 | 601億15百万円 | +11.8% | 22億15百万円 | +88.5% |
合成樹脂は汎用・高機能樹脂、自動車関連、コンパウンド製造、リサイクル原料まで扱い、情報電子は半導体材料・フォトマスク関連・FPD材料などを取り扱います。生活産業では冷凍野菜・水産加工品・医薬品原料といった食品・ヘルスケア領域も担当します。国内外19カ国・約70拠点を持ち、海外売上比率が高いことも特徴です。
「本社はどっち?」に一次情報で答える
検索でよく見かける疑問が「大阪と東京、どちらが本社なのか」です。有価証券報告書には、大阪本社の住所が「登記上の本店所在地であり、実際の経理業務は主に東京本社で行っている」と明記されています。1983年から大阪・東京の両本社制を採っており、ほかに名古屋支店があります。どちらか一方が「格上の本社」という構造ではなく、機能で分かれている点が実態です(公式情報)。
稲畑産業の年収1,005.8万円を分解する|5期推移と口コミとの300万円差
ここが本記事の核です。結論を先に言うと、有価証券報告書の1,005.8万円も、口コミの712万〜787万円も、どちらも嘘ではありません。母集団が違うだけです。この構造を理解すると、内定時の年収提示が想定と違ったという事態を避けやすくなります。
有報5期の推移|3年で約90万円の上昇
公式情報として、有価証券報告書「従業員の状況」の平均年間給与は次のように推移しています。
| 決算期 | 平均年間給与(提出会社) | 連結売上高 | 経常利益 |
|---|---|---|---|
| 第161期(2022年3月期) | 約860万円 | 6,809億62百万円 | 216億48百万円 |
| 第162期(2023年3月期) | 約913万円 | 7,356億20百万円 | 191億10百万円 |
| 第163期(2024年3月期) | 約928万円 | 7,660億22百万円 | 213億93百万円 |
| 第164期(2025年3月期) | 約984万円 | 8,378億38百万円 | 261億34百万円 |
| 第165期(2026年3月期) | 約1,005.8万円 | 8,327億45百万円 | 277億48百万円 |
この表から読み取れることは3つあります。第一に、第163期の928万円から第165期の1,005.8万円まで、直近3年で約90万円(約8.4%)増えていること。第二に、上昇は業績の伸びと概ね連動しており、経常利益が213億円→277億円へ拡大した局面で給与も上がっていること。第三に、第162期は経常利益が前期比で減ったにもかかわらず給与は913万円へ上がっており、単年の業績だけで給与が決まる構造ではないことです。
賞与を含む総支給ベースであることを踏まえると、業績連動賞与の比重が一定程度あると推定情報として考えられますが、その配分ルールは有価証券報告書では開示されていません。面接や条件提示の場で、賞与の支給実績(月数・変動幅)を必ず確認しておくことをおすすめします。
なぜ口コミの712万〜787万円と300万円も違うのか

有報だと1,000万円超なのに、口コミサイトだと700万円台。どっちを信じればいいの?
この差は、次の4つの要因で説明できます(要因の切り分けは推定情報を含みます)。
- 母集団の違い:有価証券報告書の数値は提出会社(稲畑産業単体)678名の平均です。一方、連結従業員は4,719名で、そのうち約6割にあたる2,909名が合成樹脂セグメント(海外のコンパウンド製造拠点等)に所属します。国内商社本体の社員と、海外製造子会社の社員では給与体系がまったく異なります。
- 回答者数の違い:口コミ傾向として、OpenWorkの自己申告平均787万円は正社員46人の回答、エン カイシャの評判の712万円も40名規模の回答にもとづきます。678名の母集団に対して数十人のサンプルであり、若手が回答しやすいという偏りが生じやすいと考えられます。
- 年齢構成の違い:有報の平均年齢は40歳11か月です。20代・30代前半の回答が多い口コミサイトの平均が、40歳台の平均を下回るのは自然です。
- 職掌の違い:有価証券報告書の人的資本開示から、同社には少なくとも「プロフェッショナル職」「スタッフ・チャレンジ職」「アシスタント職」という複数の職掌が存在することが読み取れます。1,005.8万円はこれらを合算した平均であり、職掌によって実額は大きく異なります。
したがって、「稲畑産業に転職すれば1,005.8万円がもらえる」という読み方は誤りです。正しくは「単体総合職として40歳前後まで在籍した社員の、賞与込み平均が約1,005.8万円」と理解するのが実態に近いと考えられます(推定情報)。
職掌構成から見える年収レンジの目安
第165期有価証券報告書の男女賃金差異の開示は、職掌別の年収差を推し量る手がかりになります。公式情報として開示されているのは以下です。
- 男女の賃金の差異:全従業員61.3%/正規雇用61.6%/非正規雇用100.0%
- 職掌別:プロフェッショナル職86.2%/スタッフ・チャレンジ職110.7%/アシスタント職63.3%
- 管理職に占める女性従業員の割合:7.3%
- 男性従業員の育児休業取得率:126.7%(3歳まで取得可能な制度設計により過年度出産分を含むため100%超)
会社側は、全社の男女差61.3%という数値について、性別による処遇差ではなく職掌構成(アシスタント職に女性が偏在していること)が要因であると説明しています。この説明を前提にすると、同じ職掌の中では男女差が小さい(プロフェッショナル職86.2%、スタッフ・チャレンジ職では女性が上回る110.7%)一方で、職掌そのものの間に大きな水準差があることになります。転職時に確認すべき最重要事項は「どの職掌での採用か」です。ここを確認せずに1,005.8万円という平均だけを見ると、想定と実額がずれる可能性があります。
なお、年代別・役職別の年収レンジは有価証券報告書では開示されていません。口コミ傾向としてはOpenWorkの自己申告レンジが400万〜1,500万円(正社員46人回答)と幅広く、若手層と管理職層で大きく開くことがうかがえます。内定時には労働条件通知書で基本給・賞与算定方法・住宅関連手当・海外赴任時の処遇を個別に確認してください。
稲畑産業の評判・口コミ傾向|「待遇には満足、育成と評価に不満」の二極構造
結論から言うと、稲畑産業の口コミは評価が高い項目と低い項目がはっきり分かれるタイプです。総合点だけを見ても実態はつかめません。
評点の内訳が示すもの
口コミ傾向として、OpenWorkの総合評価は3.33/5.0、社員クチコミ455件(回答者85人)と、中堅商社としては十分な件数が集まっています。項目別の内訳は次の通りです。
| 評価項目(OpenWork) | スコア | 読み取り |
|---|---|---|
| 待遇面の満足度 | 4.2 | 突出して高い。有報の給与水準と整合的 |
| 社員の士気 | 3.6 | 平均より上 |
| 法令順守意識 | 3.3 | 中位 |
| 風通しの良さ | 3.2 | 中位 |
| 20代成長環境 | 3.2 | 中位 |
| 社員の相互尊重 | 3.1 | やや低い |
| 人事評価の適正感 | 2.7 | 低い |
| 人材の長期育成 | 2.5 | 最も低い |
待遇4.2と人材の長期育成2.5では、実に1.7ポイントの開きがあります。これは「報酬には満足しているが、育て方と評価のされ方には納得していない」という構図を示しています。エン カイシャの評判でも総合3.3点(正社員40名回答・口コミ172件)で、「会社の成長性・将来性」3.5、「事業の優位性・独自性」3.5、「20代成長環境」3.5が高く、「イノベーションへの挑戦」2.8が最低という結果でした。2サイトで別々に集計された数値が「事業基盤と待遇は評価、変革と育成は不満」という同じ方向を指している点は、傾向として一定の信頼性があると考えられます(推定情報)。
残業と有給の実データ
口コミ傾向として集計されている労働時間関連の数値は以下です。
- OpenWork:平均残業24.5時間/月、有給消化率55.8%
- エン カイシャの評判:現職者の残業月23時間に対し、退職者は月37時間
- エン カイシャの評判:年収納得度78%、休日休暇納得度76%、職場人間関係満足度74%
注目すべきは、現職23時間に対して退職者37時間という差です。これは「辞めた人ほど忙しかった」ことを示唆しており、全社平均の残業時間だけでは配属先ごとの実態が見えないことを意味します(推定情報)。有給消化率55.8%は、近年の大手企業水準と比べると高いとは言いにくい数字です。
定性的な声に共通するテーマ
口コミ傾向として繰り返し出てくるテーマは、おおむね次の4つに整理できます。
- 営業職は残業が長めで、平日に自分の時間を取りにくいという声
- 体育会系の雰囲気が残っているという指摘
- 部署によって忙しさの差が大きいという声
- 賞与が良く、自己成長の機会は豊富だという肯定的な評価
これらはいずれも投稿者個人の体験であり、会社全体の状況を断定するものではありません。ただし「待遇と安定性への満足」と「保守的な社風・配属による差」という二極構造は、評点データと定性コメントの両方から一貫して読み取れます。
「稲畑産業はやばい・激務」と検索される理由をデータで検証する
社名と一緒に「やばい」「激務」「残業」「離職率」「ホワイト」といった語が検索されることがあります。結論から言えば、稲畑産業が経営面で危険な状態にあると判断できる材料は、公開情報の範囲では見当たりませんでした。営業利益・経常利益はいずれも過去最高、自己資本比率47.3%、実質的な財務不安を示す指標も見当たりません。では何が「やばい」「激務」という検索を生んでいるのか、要素を分けて検証します。
「激務」「残業」という検索への回答
前章の通り、口コミ傾向としての平均残業は月23〜24.5時間で、これ自体は突出して長い水準ではありません。一方で退職者の残業は月37時間と現職より14時間長く、投稿には「営業職は残業が長い」「部署によって忙しさの差が大きい」という声が実在します。つまり、全社平均が穏やかであることと、特定部署が繁忙であることは両立します。「会社としての激務」ではなく「配属先による差」として理解するのが、データと整合的な読み方だと考えられます(推定情報)。
商社の営業職は、海外拠点との時差対応、船積み・通関スケジュール、相場変動への即応といった業務特性を持ちます。同社は19カ国・約70拠点を展開し海外売上比率が高いため、担当地域によって稼働時間帯が広がりやすい構造的な要因があると考えられます。
「離職率」「ホワイト」という検索への回答
公式情報として、離職率は有価証券報告書では開示されていません。ただし代替指標として、平均勤続年数13年0か月が使えます。同社の平均勤続は過去10年にわたって13〜14年台で安定しており、短期離職が常態化している企業に見られる勤続年数の低下は起きていません。平均年齢は前期41.0歳から40歳11か月へわずかに下がっており、これは採用増による若返りと整合します。労働組合についても、有価証券報告書に「労使関係は円満に推移」と記載があり、3支部からなる単一組合が存在します。
これらを総合すると、定着面ではむしろ安定した部類に入ると考えられます(推定情報)。一方で有給消化率55.8%は改善余地のある水準であり、「完全にホワイト」と言い切れる材料もありません。
「将来性」という不安への回答は次章で
不安系の検索語のなかで最も検索されているのが「将来性」です。これは業績・事業構造・リスク要因を通しで見ないと答えられないため、次の章でセグメント別の明暗と中期経営計画とのギャップを含めて検証します。
稲畑産業の業績と将来性|過去最高益の裏で情報電子は16.9%減益
結論を先に述べます。稲畑産業の直近業績は営業利益・経常利益ともに過去最高であり、短期的な業績不安は見当たりません。ただし、増益は全事業が伸びた結果ではなく、事業ごとに明暗が分かれています。転職先として見るときは「会社の将来性」ではなく「配属候補セグメントの将来性」で見るべきです。
セグメント別の明暗
公式情報として、第165期の実績を整理すると次の通りです。
- 合成樹脂:売上4,079億74百万円(+1.6%)、利益132億21百万円(+1.0%)。売上・利益とも最大の柱で、連結従業員4,719名のうち2,909名が所属します。
- 情報電子:売上2,393億36百万円(△9.4%)、利益70億42百万円(△16.9%)。4セグメントで唯一の減益で、前期の大型装置販売の反動減が要因とされています。
- 化学品:売上1,251億37百万円(+5.8%)、利益35億48百万円(+20.3%)。増収率以上に利益が伸びており、採算改善が進んだ形です。
- 生活産業:売上601億15百万円(+11.8%)、利益22億15百万円(+88.5%)。規模は最小ながら伸び率は最大です。
情報電子は半導体・FPD関連の装置や材料を扱うため、大型案件の有無で業績が振れやすい性質があります。単体従業員のセグメント別内訳では情報電子141名、合成樹脂142名、化学品72名、生活産業36名、全社共通287名。単体では合成樹脂と情報電子がほぼ同規模の人員を抱えており、この2部門の景気感が本体社員の体感を左右しやすい構造です(推定情報)。
中期経営計画とのギャップ
同社は長期ビジョン「IK Vision 2030」の第3ステージとして中期経営計画「New Challenge 2026」を推進しています。公式情報として、最終年度(2027年3月期)の目標は売上高9,500億円・営業利益270億円です。
これに対し、第165期の実績は売上8,327億45百万円・営業利益261億64百万円。会社が公表している2027年3月期予想は売上高8,900億円・営業利益275億円・純利益210億円(為替前提1USD=155円)です。つまり営業利益は中計目標をほぼ射程に捉えている一方、売上高は目標9,500億円に対し予想8,900億円と約600億円のギャップが残る構図です。
この読み方は転職判断に直結します。売上未達だが利益は達成見込みという状態は、量の拡大より採算重視に舵を切っている可能性を示します(推定情報)。数量拡大型の営業スタイルより、採算管理・機能提供型の営業が評価されやすい環境になっていくと考えられます。
有価証券報告書に書かれたリスク
将来性を語るうえで、会社自身が挙げているリスクは無視できません。公式情報として、第165期有価証券報告書には次の記載があります。
- 地政学リスク:中東情勢の影響について「合理的な影響度合いや影響額の見積もりは困難」との記載があり、特に合成樹脂・化学品事業への影響が大きいと想定されています。
- 通商政策リスク:米国の関税率引き上げにより、製紙用薬剤の対米売上が大幅に減少した実績があります。
- 為替リスク:2027年3月期予想は1USD=155円が前提であり、海外売上比率の高さから為替感応度が高い構造です。
- 事業の振れやすさ:情報電子事業は大型装置販売の有無で業績が変動します。
化学品専門商社に共通する論点として、中国を中心とした汎用樹脂・基礎化学品の供給過剰による価格下落、経済安全保障を背景とした輸出管理の強化、メーカー直販やデジタル調達の広がりによる商社機能の見直しといったテーマがあります。稲畑産業もこれらの影響を受ける位置にありますが、合成樹脂事業でコンパウンド製造やリサイクル原料まで手掛けている点は、単純な仲介機能にとどまらない付加価値を持つ材料と評価できます(推定情報)。
あわせて資本効率も押さえておくべきです。公式情報として、5期のROEは12.8%→11.0%→10.5%→9.7%→9.3%と、利益が増える一方で低下傾向にあります。同時期に自己資本比率は45.0%→47.3%へ上昇し、純資産は2,459億38百万円まで積み上がりました。利益成長より自己資本の積み上がりが速いことがROE低下の主因と考えられます(推定情報)。財務の安定性という意味では強みですが、資本効率の改善は今後の経営課題として残ります。転職者にとっては「財務的に潰れにくい会社」であると同時に、「資本効率改善のための構造改革が起こりうる会社」という両面で捉えるのが妥当です。
稲畑産業の「不祥事」を時系列で確認する|2007年の不適切取引と、その後
社名検索で「不祥事」という語が併記されることがあります。該当するのは2007年に会社自身が自主開示した不適切取引で、現在から19年前の事案です。事実関係を時系列で正確に整理します(すべて会社の開示資料にもとづく公式情報)。
| 時期 | 事実 |
|---|---|
| 2007年7〜10月 | 合成樹脂第二本部シート・塩ビグループの元営業マネージャーが、取引先の資金繰りのために、商品移動を伴わない架空仕入(7〜9月)と実態のない売上(7〜10月)を計上 |
| 2007年12月17日 | 「不適切な取引の発生について」を自主開示。同日付で社外取締役2名・弁護士1名を含む8名の調査委員会を設置 |
| 2007年12月26日 | 調査結果と業績への影響を開示。棚卸資産の過大計上額370百万円、実態のない売上計上額252百万円(+10月度28百万円)を確認 |
| 会計処理 | 特別損失として貸倒引当金繰入額1,080百万円を計上し、2008年3月期中間期の決算を修正 |
| その後 | 関係者の処分と再発防止策を公表 |
この事案を評価するうえで重要な点は3つあります。
- 行為者は元従業員個人であり、会社は自主開示・調査委員会設置・決算修正で対応した側である。会社ぐるみの粉飾として認定された事案ではありません。
- 発生から19年が経過しており、以降、同種の重大な開示は見当たりません。
- 第165期有価証券報告書には、係争中の重要な訴訟に関する記載は見当たらず、行政処分・課徴金納付命令の記録もWeb検索の範囲では見当たりませんでした。
なお、一部の個人ブログに2017年頃の欧州子会社関連の貸倒に言及した記述が見られますが、一次情報や報道での裏付けが取れなかったため、本記事では事実として扱いません。裏付けのない情報を判断材料にしないことが、企業評判を調べるうえで最も重要です。
コンプライアンス面の現在地を示す指標としては、口コミ傾向としてOpenWorkの「法令順守意識」が3.3と中位に位置しています。突出して高くも低くもない評価です。
稲畑産業の就職難易度・採用大学・選考フロー
「就職難易度」「採用大学」「学歴フィルター」「選考フロー」「倍率」「インターン」といった語は、社名と組み合わせて検索される量が最も多いテーマ群です。結論から言うと、公式な採用倍率・採用大学の一次データは今回の調査では見当たりませんでした。そこで、有価証券報告書から読み取れる構造的な事実をもとに、難易度の「理由」を分解します。以下は数値の性質上、推定情報を多く含みます。
門が狭い理由は「規模」で説明できる
難易度を左右する最大の要因は、採用枠の絶対数です。公式情報として、提出会社の従業員数は678名。これは東証プライム上場企業としては小規模な部類です。平均勤続13年0か月という定着の良さは、裏返せば退職による自然な空きが少ないことを意味します。仮に定常状態を単純計算すると、678名÷13年で年間約52名の入れ替わりが上限の目安となり、ここに新卒と中途の双方が収まる計算になります(推定情報)。
加えて、平均年間給与1,005.8万円という水準は、商社志望者にとって強い訴求力を持ちます。採用枠が小さく、待遇の訴求力が高いという組み合わせは、応募倍率が上がりやすい典型的な条件です。難易度が高めと語られる背景には、この構造があると考えられます。
「学歴フィルター」をどう考えるべきか
学歴による選考基準の存在について、会社が公表している情報は見当たりませんでした。したがって「学歴フィルターがある/ない」を断定することはできません。判断材料として提示できるのは以下の事実です。
- 採用枠が小規模であるため、選考プロセスの効率化圧力は構造的に働きやすい(推定情報)
- 海外売上比率が高く19カ国に展開しているため、語学力・海外志向が評価軸に入りやすい(推定情報)
- 平均年齢と平均勤続の差は約27.9歳(40歳11か月−13年0か月)。新卒一括採用のみであればこの差は22〜23歳前後になるはずで、中途入社者が一定数含まれていることを示唆する(推定情報)
3点目は転職検討者にとって重要な示唆です。中途採用の実績が構造的に存在すると読めるため、新卒プロパー一色の組織ではない可能性が高いと考えられます。
中途で評価されやすい経験
求人要件の詳細は募集時期によって変わるため断定はできませんが、事業構造から逆算すると、次のような経験が評価されやすいと考えられます(推定情報)。
- 樹脂・化学品・電子材料などの素材分野での法人営業・調達経験(合成樹脂・化学品・情報電子の各セグメントに直結)
- 中国語・英語を用いた海外取引実務、現地法人との折衝経験(19カ国・約70拠点の体制)
- 貿易実務、輸出管理・法規制対応の知識(経済安全保障を背景に希少価値が高まっている領域)
- 海外製造拠点の管理・PMI・出資先管理の経験(連結の6割が合成樹脂の製造系人員である構造と親和性が高い)
- 冷凍食品・水産加工・医薬品原料といった生活産業領域の商流知識(利益が前期比88.5%増と伸びている領域)
選考フローやインターンシップの実施有無・内容は年度によって変わるため、必ず公式採用サイトの最新募集要項で確認してください。本記事では公式に確認できた範囲を超える選考プロセスの記述は行いません。
稲畑産業と同業他社の比較|化学品専門商社の中での立ち位置
化学品専門商社は企業ごとに規模と主戦場が大きく異なります。読者が実際に併願・比較しそうな4社と並べて、稲畑産業の位置を確認します。数値は各社の公表資料および二次情報にもとづき、出典の種別を明記します。
| 企業名(コード) | 直近の連結売上高 | 平均年間給与 | 特徴・主戦場 |
|---|---|---|---|
| 稲畑産業(8098) | 8,327億45百万円(2026年3月期) | 約1,005.8万円(有報第165期・単体678名) | 住友化学系。合成樹脂が約49%、情報電子が約29%の4セグメント体制 |
| 長瀬産業(8012) | 本記事では実額を参照していない | 二次情報で約1,137万円(推定情報) | 化学専門商社の最大手。研究開発・製造機能も併せ持つ |
| 蝶理(8014) | 約3,115億円(2025年3月期) | 本記事では有報実額を参照していない | 東レグループ。繊維と化学品の二本柱 |
| 明和産業(8103) | 1,649億27百万円(2026年3月期) | 約935.5万円(有報・単体198名) | 三菱系の化学品専門商社。中国ビジネスの比重が高い |
| ソーダニッカ(8158) | 本記事では実額を参照していない | 本記事では有報実額を参照していない | 無機化学品中心の専門商社。上記4社より小規模 |
この比較から見える稲畑産業の立ち位置は次の通りです。
- 規模:売上8,327億円は、明和産業(1,649億円)の約5倍、蝶理(約3,115億円)の約2.7倍。最大手の長瀬産業には及ばないものの、化学品専門商社としては上位グループに入ります。
- 年収:有報実額同士で比較できる明和産業935.5万円に対し、稲畑産業は1,005.8万円で約70万円上回ります。ただし明和産業の母数は単体198名、稲畑産業は678名で、母集団の規模が3倍以上違う点は考慮が必要です。
- 資本関係の距離感:明和産業に対する三菱商事の出資は14.92%で20%未満であり、同社は子会社でも持分法適用関連会社でもありません。稲畑産業に対する住友化学の10.42%も同様の位置づけです。いずれも「系」と呼ばれつつ独立経営であり、親会社の待遇水準は適用されません。
- 事業の分散度:稲畑産業は最大セグメントの合成樹脂でも構成比約49%で、情報電子29%・化学品15%・生活産業7%と分散が効いています。単一商材への依存度が低いことは、景気変動への耐性として評価できます(推定情報)。
比較の際は、平均年収の数値がすべて「提出会社(単体)」の値である点に注意してください。単体従業員が連結に占める比率は稲畑産業で14.4%(678名/4,719名)です。単体比率が低いほど、有報の平均年収が企業グループ全体を代表する度合いは下がります。
稲畑産業への転職が向いている人・向いていない人
ここまでの公式情報と口コミ傾向をふまえ、適性を整理します(推定情報を含みます)。「良い会社かどうか」ではなく「自分の志向と噛み合うか」という観点で読んでください。
| 向いている人 | 向いていない人 |
|---|---|
| 素材・化学分野の商流知識を長期的に積み上げたい人。平均勤続13.0年という定着環境は、専門性の蓄積に向く | 数年で環境を変えながらキャリアを組み立てたい人。長期在籍が前提の設計と噛み合いにくい |
| 賞与を含めた総支給での年収水準を重視する人。有報1,005.8万円・OpenWork待遇満足度4.2はこの点を裏づける | 体系的な育成プログラムや納得感のある評価制度を最優先する人。長期育成2.5・評価適正感2.7は低めの評価 |
| 海外取引や現地法人との折衝に関心がある人。19カ国・約70拠点、海外売上比率の高さが活躍余地になる | 国内完結の業務のみを希望する人。為替・地政学の影響を日常的に受ける業態 |
| 財務の安定した企業で腰を据えたい人。自己資本比率47.3%、営業・経常とも過去最高 | 変革のスピード感を強く求める人。エンの「イノベーションへの挑戦」2.8は最低評価 |
| 配属部署の当たり外れを含めて受け止められる人 | 全社一律の働き方が保証されていることを求める人。退職者残業37時間と現職23時間の差が示す通り、部署差がある |
稲畑産業への転職|編集部の見解
編集部の見解として、稲畑産業は「業績と待遇の安定性を優先し、育成・評価制度への期待値を高く置きすぎない人」に適した会社だと考えられます。
根拠は3点です。第一に、営業利益・経常利益がともに過去最高で自己資本比率47.3%という財務基盤は、転職先の安定性という観点で明確な強みです。第二に、平均年間給与が3年で約90万円上昇しており、待遇の方向性が下向きではないことが一次情報で確認できます。第三に、平均勤続13.0年という定着の実績があり、長く働ける環境が実在することを示しています。
一方で、慎重に見るべき点も同じだけあります。1,005.8万円は単体678名の平均であり、職掌や配属によって実額は大きく異なります。人材の長期育成2.5・人事評価の適正感2.7という評価は、社内で育ててもらうことを期待する人には相性が良くない可能性を示します。また、中東情勢・米国の関税政策・為替という外部要因の影響を会社自身がリスクとして明記しており、業績が安定的に右肩上がりであることを前提にはできません。
総合すると、「自分で商材知識と海外案件の経験を取りに行けるタイプ」には投資対効果の高い環境である一方、制度に導かれてキャリアが形成されることを望むタイプには物足りなさが残る可能性がある、というのが妥当な評価だと考えられます。
稲畑産業に関するよくある質問
検索されやすい疑問に、一次情報と口コミ傾向を分けて回答します。
稲畑産業の平均年収は本当に1,000万円を超えているのですか。
第165期(2026年3月期)有価証券報告書によると、提出会社の平均年間給与は10,058千円(約1,005.8万円)で、前事業年度比+2.2%です。ただしこれは提出会社(単体)678名の平均であり、賞与および基準外賃金を含む総支給ベースです。連結従業員4,719名の平均ではありません。
口コミサイトの年収が700万円台なのはなぜですか。
口コミ傾向としてOpenWorkの自己申告平均は787万円(正社員46人回答)、エン カイシャの評判は712万円(40名規模の回答)です。回答者数が数十人と限られること、若手層の回答が集まりやすいこと、有報の平均年齢が40歳11か月であることを踏まえると、母集団の違いで説明できる範囲の差だと考えられます(推定情報)。
住友化学の子会社なのですか。
いいえ。第165期有価証券報告書の大株主状況では住友化学の持株比率は10.42%(第2位株主)で、親会社の記載はありません。1944年以来の特約販売店として深い取引関係がありますが、資本関係上は子会社でも持分法適用関連会社でもなく、独立して経営されています(公式情報)。
本社は大阪と東京のどちらですか。
1983年から両本社制です。登記上の本店は大阪市中央区南船場ですが、有価証券報告書には「実際の経理業務は主に東京本社で行っている」と明記されています。東京本社は中央区日本橋本町にあり、ほかに名古屋支店があります(公式情報)。
過去に不祥事があったと聞きましたが、現在も問題は続いていますか。
2007年12月に、元営業マネージャーによる架空仕入・実態のない売上計上が発覚し、会社が自主開示のうえ調査委員会を設置して決算を修正した事案があります。19年前の事案であり、以降、同種の重大な開示は見当たりません。第165期有価証券報告書に係争中の重要な訴訟の記載はなく、行政処分・課徴金納付命令の記録も公開情報の範囲では見当たりませんでした。
残業や休みの実態はどの程度ですか。
労働時間は有価証券報告書では開示されていません。口コミ傾向としては、OpenWorkで平均残業24.5時間/月・有給消化率55.8%、エン カイシャの評判で現職23時間・退職者37時間という集計が公開されています。全社平均は突出して長い水準ではない一方、部署による差があるという投稿が複数見られます。
就職・転職の難易度はどのくらいですか。
公式な採用倍率や採用大学のデータは今回の調査では見当たりませんでした。ただし、提出会社の従業員が678名と小規模で、平均勤続13.0年と定着が良いため、年間の採用枠は構造的に限られると考えられます(推定情報)。平均年齢と平均勤続の差から中途入社者が一定数含まれると読めるため、新卒プロパーのみの組織ではない可能性が高いと考えられます。
稲畑産業への転職判断まとめ
ここまでの内容を判断軸ごとに整理します。最終判断は、求人票と労働条件通知書で自分のケースを必ず確認してください。
| 判断軸 | 評価と根拠 |
|---|---|
| 年収水準 | 有報第165期1,005.8万円・3年で約90万円増と上昇基調。ただし単体678名の平均であり、職掌により実額差が大きい |
| 業績・財務の安定性 | 営業261億64百万円・経常277億48百万円とも過去最高。自己資本比率47.3%、純資産2,459億38百万円 |
| 事業の将来性 | 合成樹脂・化学品・生活産業は増益、情報電子のみ16.9%減益。中計売上目標9,500億円に対し予想8,900億円のギャップ |
| 働き方 | 口コミ傾向で残業月23〜24.5時間・有給消化率55.8%。退職者は月37時間と部署差を示唆 |
| 育成・評価制度 | OpenWorkで人材の長期育成2.5、人事評価の適正感2.7と低め。待遇4.2との落差が大きい |
| 定着性 | 平均勤続13年0か月が過去10年13〜14年台で安定。労使関係は円満と有報に記載 |
| コンプライアンス | 2007年の不適切取引は会社が自主開示・調査委員会設置・決算修正で対応。以降19年間、同種の重大開示は確認できなかった |
| 外部リスク | 中東情勢・米国関税・為替(1USD=155円前提)の影響を会社自身がリスクとして明記 |
| 選考 | 採用倍率・採用大学の公式データは確認できなかった。従業員678名という規模から枠は限定的と考えられる |
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本記事の出典・参考情報
本記事で参照した一次情報・口コミ情報の出典は以下の通りです。最新の正確な数値は各リンク先で確認してください。
公式情報源
口コミ・評判の参照元
免責事項:本記事の数値・評価は公式情報・口コミ集計・市場推定の3分類で示しており、口コミ傾向や推定情報は断定ではなく傾向・可能性として表現しています。最終判断は読者自身で公式IRおよび内定時の労働条件通知書で確認してください。
この記事の編集方針・情報の確認について
この記事は、公式公開情報(有価証券報告書・IR資料)、求人情報、口コミ傾向をそれぞれ分けて整理し、転職・就職判断に役立つよう編集しています。年収・平均年齢・平均勤続年数・従業員数などの中核データは第165期有価証券報告書「従業員の状況」を一次情報として確認し、口コミ・推定情報とは明確に区別しています。個人が特定される情報や、一次情報で裏付けの取れない噂は記載していません。記載内容は最終更新時点の公開情報にもとづきます。最新の正確な数値は各公式IRページでご確認ください。
