サイフューズの評判と年収935万円|社員23名・東証と福証に重複上場の実像
※本記事にはプロモーションを含みます。
この記事の結論
- 正体:社員23名で細胞だけを積み上げる再生医療ベンチャー
- 年収:有報の平均935万円は母数23名・高度専門人材中心の数値
- 勤務地:本社は東京都港区三田、別に福岡ラボ。二次サイトは旧住所
- 財務:営業損失8.28億円だがGC注記はなく自己資本比率62.3%
株式会社サイフューズ(証券コード4892)を検索すると、上位に並ぶのは株価情報と掲示板ばかりです。実際、社名まわりの検索の大半は投資家によるもので、転職・就職の観点でまとまった情報にたどり着くのは容易ではありません。この記事は投資判断のための記事ではなく、転職判断のための記事です。株価の見通しには踏み込まず、第16期(2025年12月期)有価証券報告書という一次情報を軸に、「この会社は誰が、どこで、どんな条件で働いている会社なのか」を分解します。従業員はわずか23名。主要な口コミサイトの投稿はほぼゼロ件。だからこそ、公開情報の読み方を知っているかどうかで、見える景色がまったく変わる会社です。
サイフューズはどんな会社か|細胞だけを積み上げる「剣山メソッド」の再生医療ベンチャー
結論から言えば、サイフューズは「医薬品」に分類されながら、まだ薬も再生医療等製品も売っていない開発ステージの会社です。東証33業種の分類は医薬品ですが、実態は再生医療等製品を開発するベンチャーと、研究機器メーカーが同居した複合体に近い形をしています。ここを取り違えたまま「製薬メーカーへの転職」と考えて応募すると、入社後に見える景色が想像と大きく食い違います。まずは事業の中身から押さえてください。
技術の核は生け花の剣山に由来する「剣山メソッド」
公式情報として、同社の基盤技術は三次元細胞積層技術です。細胞を集めた小さな塊(スフェロイド)を、生け花の剣山のように並んだ微細な針に一つずつ刺して融合させ、人工の足場材料を使わずに細胞だけで立体的な組織をつくります。この技術の源流は中山功一氏(現・佐賀大学医学部附属再生医学研究センター長、当時は九州大学に在籍)で、2011年に九州大学との間で基本特許の独占ライセンス契約を締結しています。会社紹介の場面によって「九州大学発」と書かれたり「佐賀大学発」と書かれたりするのは、この経緯によるものです。
技術を装置として形にしたのがバイオ3Dプリンタで、2012年12月に「regenova®(レジェノバ)」、2019年1月に「S-PIKE®(スパイク)」の販売を開始し、regenova®は2015年9月に北米展開も始めています。設立は2010年8月11日、東京都新宿区でのスタートでした。
再生医療・創薬支援・デバイスの3領域
有価証券報告書によると事業は単一セグメントですが、内訳は次の3領域に整理できます。
- 再生医療領域:末梢神経再生(細胞製神経導管)、骨軟骨再生(細胞製骨軟骨)、血管再生(小口径細胞製人工血管)の再生医療等製品パイプライン開発
- 創薬支援領域:2023年10月販売開始の「ヒト3Dミニ肝臓®」など3D細胞製品の開発・販売。MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)疾患モデル版も追加
- デバイス領域:バイオ3Dプリンタ「regenova®」「S-PIKE®」および消耗品の販売
臨床開発は京都大学・佐賀大学・慶應義塾大学・広島大学・東京女子医科大学などと共同で進められています。重要なのは、16期目・上場4年目の時点で製造販売承認を取得した再生医療等製品はまだ無いという事実です。売上の実体は機器・消耗品の販売、受託研究、提携に伴う契約金などで構成されており、製品の上市による収益ではありません。
少人数で大企業アライアンスを回す事業モデル
提携先の顔ぶれは、社員23名という規模からは想像しにくいものです。富士フイルム(2017年・血管再生)、積水化学工業(2018年・肝臓構造体)、太陽ホールディングス(2019年に資本業務提携、2020年に包括的パートナーシップへ)、岩谷産業(2020年)、藤森工業=現ZACROS(2020年)、メディパルホールディングス(2021年・流通)、福岡地所(2022年)、PHC(2023年)、そして2025年にクラレと業務資本提携を結んでいます。
受賞歴も、アジア・アントレプレナーシップ・アワード2015優勝、大学発ベンチャー表彰2017 科学技術振興機構理事長賞、Japan Venture Awards 2019 中小機構理事長賞、令和6年度知財功労賞 経済産業大臣表彰などが並び、2019年には経済産業省「J-Startup」にも選定されています。推定情報ですが、転職者の日常業務は「自社だけで完結する開発」ではなく、大学と大企業の間に立って研究とアライアンスを同時に回す仕事になる可能性が高いと考えられます。
サイフューズの公式データ一覧(有価証券報告書ベース)
本記事で扱う公式数値を一覧で確認できます。公式情報として、すべて第16期(2025年12月期)有価証券報告書の実額です。最新の正確な数値は公式IRページで再確認してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社サイフューズ(Cyfuse Biomedical K.K.) |
| 証券コード・市場 | 4892/東京証券取引所グロース市場(2022年12月1日上場)+福岡証券取引所Q-Board(2025年12月 重複上場) |
| 本社所在地 | 東京都港区三田三丁目5番27号 住友不動産東京三田サウスタワー |
| 設立 | 2010年8月11日(東京都新宿区で設立) |
| 代表者 | 代表取締役社長執行役員 秋枝 静香 |
| 資本金 | 1,828,543千円(2025年12月31日現在) |
| 平均年間給与 | 9,351千円(約935万円)/賞与・基準外賃金を含む |
| 平均年齢 | 42.8歳 |
| 平均勤続年数 | 5.8年 |
| 従業員数 | 23名(提出会社・就業人員。外、平均臨時雇用者3名。連結子会社なし) |
| 売上高 | 230,999千円(約2.31億円/前期比324.3%増) |
| 営業利益 | 営業損失828,179千円(△8.28億円/前期は営業損失896,133千円) |
| 経常損益・純損益 | 経常損失761,301千円/当期純損失763,843千円 |
| 研究開発費 | 416,548千円 |
| 純資産・自己資本比率 | 2,757,627千円/62.3%(総資産4,266,026千円) |
| 継続企業の前提(GC) | 注記なし。『継続企業の前提に関する重要な事象等』の記載もなし |
| 労働組合 | 結成されていない |
| 配当 | 創業以来無配(繰越欠損金を計上中) |
| 出典 | 第16期(2025年1月1日〜2025年12月31日)有価証券報告書(2026年3月27日提出)/公式IR資料 |
社員23名の部門別内訳から見るサイフューズの働き方
転職判断で最も効くのは、実はこの章です。サイフューズは有価証券報告書に部門別の従業員数まで開示しているため、「どの部署に何人いるか」が数字で分かります。求人票では見えない組織の密度が、ここから逆算できます。
1部門4〜7人という組織の実像
公式情報として、第16期有価証券報告書「従業員の状況」の内訳は次のとおりです。
- 経営管理部:7名
- 研究開発部:6名(ほか臨時雇用者3名)
- 事業推進部:6名
- システム開発部:4名
合計23名。従業員数の推移は第12期22名→第13期21名→第14期21名→第15期21名→第16期23名で、5期にわたって20名台前半から動いていません。連結子会社はないため、この23名がグループ全体の人数でもあります。労働組合は結成されていません。
数字が示すのは、研究職として入っても同じ部署のメンバーは5〜6人という現実です。上場企業でありながら、経営管理部7名でIR・開示・経理・人事・法務をすべて担っている計算になります。推定情報ですが、職種の境界は緩く、専門外の業務を兼務する場面が相応にあると考えられます。バイオベンチャー全般で共通する懸念として「研究職でも契約実務・IR対応・知財対応を兼務することになるのではないか」という声がありますが、サイフューズの規模ではその懸念は現実的な想定として持っておくべきでしょう。
勤務地は東京・港区三田と福岡市中央区の2拠点
勤務地は転職判断を左右する要素なので、ここは正確に押さえてください。公式情報として、第16期有価証券報告書の表紙【本店の所在の場所】は東京都港区三田三丁目5番27号 住友不動産東京三田サウスタワーです。【最寄りの連絡場所】も同一で、登記上の本店と実際の業務場所が異なる旨の注記はありません。
沿革をたどると、新宿区で設立→千代田区→文京区(東京大学アントレプレナープラザ内の「東京ラボ」)と移り、2022年4月に本店・東京ラボとも港区へ移転しています。加えて福岡市中央区に「福岡ラボ」を置いており(2022年9月移転)、株主に福岡地所が名を連ね、2025年12月には福岡証券取引所Q-Boardへ重複上場するなど、九州との縁が深い会社です。
ここで注意が必要なのが二次サイトの記載です。OpenWorkの企業ページは所在地を旧本社の「文京区本郷2-27-17 ICNビル5A」のまま表示しており、irbankは「住友不動産三田ツインビル西館」と表示しています。いずれも有価証券報告書の表紙とは一致しません(有報が正しい情報です)。口コミサイトや株式情報サイトの会社概要は更新が遅れることがあるため、勤務地のような重要事項は必ず有価証券報告書か公式サイトで確認してください。

面接の案内が来る前に、通勤圏かどうかだけ先に知りたいのですが。
この会社に関しては、口コミサイトの住所を信じると1駅どころか区をまたいで間違えます。有価証券報告書の表紙は数十秒で確認できるので、そこを一次情報として使うのが確実です。
有報が自己開示する「少数の事業推進者への依存」
同社は「事業等のリスク」の中で、小規模組織および少数の事業推進者への依存をリスクとして自ら挙げています。23名という規模を会社自身が認め、キーパーソンが抜けた場合の影響を開示しているわけです。これは隠しているわけではなく、正直な開示と受け取るべき情報です。
人的資本の取り組みとしては、役職員自らが環境を構築する独自の『まほろばプロジェクト』を通じて男性役職員の育児休業取得を促進すると有価証券報告書に明記されています。2019年には東京都「TOKYO働き方改革宣言企業」の認定も受けています。一方で、女性管理職比率・男性育児休業取得率・男女の賃金差異は法定の公表義務対象外にあたるため、有価証券報告書では開示されていません。役員8名のうち女性は1名(代表取締役社長の秋枝静香氏)です。制度の存在は確認できても、実際の取得率のような運用実績は外部から数値で追えないため、面接での確認事項に入れておくとよいでしょう。
サイフューズの平均年収935万円をどう読むか
先に結論を述べます。サイフューズの平均年間給与935万円は事実ですが、「入社すれば935万円もらえる」という意味ではありません。母数がわずか23名だからです。ここを丁寧に分解できるかどうかが、この会社の年収情報を扱う分かれ目になります。
有報実額と、母数23名という前提
公式情報として、第16期有価証券報告書「従業員の状況」に記載された平均年間給与は9,351千円(約935万円/2025年12月31日現在)です。注記には「平均年間給与には、賞与及び基準外賃金を含んでおります」とあります。あわせて平均年齢42.8歳、平均勤続年数5.8年も同じ表に記載された実額です。
この935万円を読むうえで外せない前提は3つあります。
- 母数23名:1人の高額報酬者が全体平均を大きく押し上げる規模です。経営管理部7名・研究開発部6名・事業推進部6名・システム開発部4名という構成は、研究者やCFOクラスの高度専門人材に強く偏っています。
- 平均年齢42.8歳:新卒〜若手が平均を下げる構造になっていません。20代中心の組織における平均値とは意味が違います。
- 使用人兼務取締役の扱い:役員報酬の注記に「取締役の報酬等の額には、使用人兼務取締役の使用人分給与は含まれておりません」とあり、使用人兼務取締役が存在することは分かります。ただし「従業員の状況」の注記には使用人兼務役員を含むか否かの明記がなく、有価証券報告書からは判別できませんでした。この不確実性は正直にお伝えしておきます。
つまり935万円は「一般社員の相場」ではなく、上位職の給与に強く引っ張られた平均値と理解するのが妥当です(推定情報)。
転職会議の450万円と、有報実額の倍以上の乖離
口コミ傾向として、転職会議には投稿ベースの年収450万円・平均年齢27歳という数値が表示されています。しかし有価証券報告書の実額は935万円・42.8歳です。年収で倍以上、平均年齢で約16歳の開きがあります。
これは、どちらかが虚偽という話ではありません。転職会議のサイフューズの口コミは全体で2件しかなく、しかも内訳は「面接・選考」カテゴリの2件です。年収データは投稿1〜2件規模の極小サンプルにもとづくもので、統計的な意味はほとんど持ちません。二次情報の年収表示を鵜呑みにできないことを、これほど分かりやすく示す例は多くありません。上場企業の平均年間給与は必ず有価証券報告書「従業員の状況」に開示されるので、転職検討時はそちらを主として使ってください。
オファー面談で確認すべき3点
平均値が使えない以上、確認は個別に行うしかありません。推定情報を含みますが、次の3点は最低限押さえておきたいところです。
- 基本給と賞与の構成比:935万円には賞与と基準外賃金が含まれています。業績連動の割合が大きいほど、赤字継続下では変動幅が読みにくくなります。
- ストックオプションの有無と条件:役職員向けストックオプション由来の潜在株式は533,800株(発行済株式総数に対し5.35%)が存在します。付与対象・行使条件は個別確認が必要です。
- 昇給の原資:同社の売上は年ごとに大きく変動し、営業損失が続いています。昇給がどの指標に連動するのかを、労働条件通知書と併せて確認しておくと安全です。
サイフューズの評判・口コミが「ほぼゼロ件」である理由
「サイフューズ 評判」で検索した人が最初に直面するのは、読むべき口コミがほとんど存在しないという事実です。これは調査不足ではなく、主要サイトを一つずつ当たった結果です。そして、この「ゼロ」自体が読み取れる情報でもあります。
主要4サイトの掲載状況(実測)
口コミ傾向を確認するため、代表的な口コミサイトの掲載状況を実際に確認したところ、次のとおりでした。
- OpenWork:社員クチコミ0件・回答者0人・企業評価スコアは「–」表示。企業フォローが19人、掲載社員数レンジは「10〜29人」。所在地は旧本社の文京区本郷のまま。
- エン カイシャの評判:口コミ0件・年収給与0件・質問0件。正社員回答者0名でスコアは非表示。
- キャリコネ:レポート数0件、総合評価は「?.?」で「現在口コミがありません」と表示。
- 転職会議:口コミ計2件のみ。内訳は「面接・選考」カテゴリの2件で、働き方や年収に関する投稿は実質的にありません。
つまり4サイト合計でも投稿は2件です。社風・残業・評価制度・人間関係といった、通常なら評判記事の中心になる情報は、公開された口コミからは組み立てられません。本記事では、出典を特定できない断片的なネット上の書き込みは一切引用していません。匿名掲示板も同様に扱いません。根拠が追えない記述を評判として提示することは、読者の判断を歪めるだけだと考えるためです。
口コミが無い会社をどう見極めるか
口コミがゼロである理由は、推定情報として次のように整理できます。
- 母集団が小さすぎる:在籍23名・平均勤続5.8年で、退職者も極めて少ないと見られます。投稿の絶対数が物理的に増えません。
- 匿名性が担保されない:部署ごとの人数が4〜7人しかいないため、部署と職種を書いた時点で個人が特定されかねません。書ける人ほど書きにくい構造です。
- 新卒の大量採用がない:就活生による投稿も溜まりません。
では何を代わりに見るか。答えは、この記事全体でやっているとおり一次情報の読み替えです。平均勤続5.8年という数字は、設立2010年・上場2022年という若い会社としては長い部類で、創業期からのメンバーが中核に残っていることを示唆します(推定情報)。従業員数が21名から23名へ増えている一方で急拡大していないことは、採用が慎重に行われている可能性を示します。有価証券報告書に「小規模組織および少数の事業推進者への依存」がリスクとして書かれていることは、組織の脆弱性を会社自身が認識している証拠です。口コミが無い会社は、有報の数字が口コミの代わりになります。
決算から読むサイフューズ|売上は5期で乱高下、赤字は継続
この章がサイフューズという会社の輪郭を最も鮮明にします。結論を先に言えば、「前期比4.2倍」という見出し数字だけを見て成長企業と判断するのは誤読です。この会社の売上は、提携一時金等の有無で年ごとに大きく振れます。
売上高5期推移と、第4四半期に73.1%が集中する構造
公式情報として、有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」の売上高は次のとおりです。
- 2021年12月期:708,245千円(約7.08億円)
- 2022年12月期:374,477千円(約3.74億円)
- 2023年12月期:61,112千円(約0.61億円)
- 2024年12月期:54,446千円(約0.54億円)
- 2025年12月期:230,999千円(約2.31億円/前期比324.3%増)
5期で7.08億円→0.54億円→2.31億円と一桁単位で上下しています。直近の「約4.2倍」は、前期が0.54億円と極端に小さかったことの裏返しでもあります。地域別内訳は日本228,110千円/米国2,315千円/欧州573千円でほぼ国内、主要取引先には太陽ファルマテック株式会社11,657千円(5.0%)などが挙がっています。
さらに特徴的なのが、第4四半期に年間売上の73.1%(169,039千円)が集中している点です。この偏りを受けて、監査法人(太陽有限責任監査法人)は「一時点で認識している売上高に関する収益認識の適切性」をKAM(監査上の主要な検討事項)に指定しています。KAMは不正の指摘ではなく、監査人が特に重点を置いた論点の開示です。会計上の論点として正確に理解しておいてください。なお監査法人は第16期から東邦監査法人より交代しています。2026年12月期の会社予想は売上高278百万円(前期比20.4%増)です。
損益と研究開発費|黒字は16期で1度だけ
2025年12月期の営業損失は828,179千円(△8.28億円)。前期の営業損失896,133千円からは赤字幅がやや縮小しています。経常損失は761,301千円、当期純損失は763,843千円でした。研究開発費は416,548千円で、営業損失のおよそ半分が研究開発投資に相当します。
経常損益の推移は、2021年12月期+144,914千円→2022年12月期△433,165千円→2023年12月期△586,187千円→2024年12月期△869,747千円→2025年12月期△761,301千円。創業以来ほぼ一貫して赤字で、黒字は2021年12月期の1期のみです。しかもこの黒字は提携一時金による一過性のもので、再現性のある収益基盤とは言えません。
そして重要なのが先行きです。2026年12月期の会社予想は営業損失1,081百万円・経常損失1,056百万円・当期純損失1,059百万円と、赤字が拡大する見通しになっています(2026年上期時点で経常損失433百万円)。繰越欠損金を計上中で、配当は創業以来ありません。給与の原資が製品売上ではなく資金調達と提携収入である構造は、入社前に理解しておくべき前提です。
財務体質と手元資金|GC注記はなく、自己資本比率62.3%
赤字が続いていると聞くと不安になりますが、財務の見え方は別です。公式情報として、第16期有価証券報告書に継続企業の前提(GC)に関する注記はなく、『継続企業の前提に関する重要な事象等』の記載もありません。監査報告書にも該当する記述はなく、KAMは前述の収益認識のみです。純資産は2,757,627千円、総資産4,266,026千円で自己資本比率62.3%。債務超過ではありません。
手元資金は、2025年12月期末の現金及び預金3,726,535千円(うち3か月超・担保の定期預金1,350,000千円)、現金及び現金同等物2,376,535千円です。2025年度の営業キャッシュ・フローは△534,793千円で、推定情報として単純に割ると現預金ベースで約7.0年分、現金同等物ベースで約4.4年分にあたります。ただし2026年12月期は営業損失10.81億円予想と支出が倍増する見通しで、同水準の資金流出が続けば現預金ベースでは約3.5年分に縮む計算です。前提の置き方で答えが変わるため、「残り何年」という一つの数字を鵜呑みにしないでください。
なお長期借入金は642,336千円(前期327,000千円)で、有価証券報告書のリスク情報には「借入金に関する契約の一部には財務制限条項が付されており、各決算期末における純資産の維持や経常損益の一定水準以上の保持に関する条項が含まれる」「抵触した場合は期限の利益を喪失し早期返済を求められる可能性がある」と自己開示されています。赤字であることと財務が危険であることは別の論点で、この会社は一次情報でそれを確認できる好例です。
サイフューズの将来性|転職先としてどこを見るべきか
「サイフューズ 将来性」は、この会社に関する検索語の中で転職検討者が唯一まとまって調べているテーマです。ただし将来性という言葉は曖昧なので、転職判断に使える2つの軸に分解します。①開発パイプラインが前に進んでいるか、②その開発を続ける資金と株式の構造がどうなっているか。この2軸で見るのが実用的です。
パイプラインは進んでいるが、スケジュールは後ろ倒し
公式情報として、開発の状況は次のとおりです。
- 末梢神経再生(細胞製神経導管):京都大学医学部附属病院での医師主導治験が2023年6月に完了。太陽ホールディングス/太陽ファルマテックと企業治験開始の準備段階にあります。さらに2026年1月から、同種(他家)臍帯由来間葉系細胞版の医師主導治験を京都大学・東京大学と開始しています。
- 骨軟骨再生(細胞製骨軟骨):慶應義塾大学病院・藤田医科大学と治験準備。川崎市殿町・大田区羽田のコンソーシアムにも参画しています。
- 血管再生(小口径細胞製人工血管):佐賀大学と臨床試験を継続。
- 次世代領域:広島大学と歯周組織再生、東京女子医科大学・東京医科大学と顔面神経再生。
一方で、上場時に調達した資金の充当計画を2025年12月期までから2028年12月期までへ延長し、未充当額800,360千円が残っていることも有価証券報告書から読み取れます。これは開発スケジュールが当初計画より後ろ倒しになっている事実を示します。再生医療等製品は承認までの道のりが長く、計画変更自体は業界で珍しくありませんが、入社後のキャリア設計に直結するため把握しておく価値があります。
希薄化と上場維持基準|制度の事実と、会社の開示状況を分けて見る
資金面の構造には、正しく理解しておくべき論点が2つあります。
1つ目は株式の希薄化です。同社は行使価額修正条項付新株予約権(いわゆるMSワラント型)を発行しています。有価証券報告書提出日前月末(2026年2月末)の発行済株式総数9,970,400株に対し、MSワラント由来の潜在株式は500,000株(5.01%)、役職員ストックオプション由来は533,800株(5.35%)です。発行済株式総数の推移は7,773,300株(2022年末)→7,894,300株(2023年末)→8,184,800株(2024年末)→9,611,800株(2025年末)→9,970,400株(2026年2月末)。2025年度の財務キャッシュ・フロー+1,256,323千円のうち816,671千円が新株予約権行使による株式発行収入でした。希薄化と引き換えに開発資金を確保する、開発ステージ企業の典型的な資本政策と言えます。
2つ目は東証グロース市場の上場維持基準です。日本取引所グループが2025年9月26日に公表した見直しにより、2030年3月1日以後最初に到来する事業年度末の時点で時価総額100億円未満の場合、1年の改善期間を経て上場廃止となる枠組みが示されています。同社は12月決算のため、判定基準日は2030年12月期末となる見込みです。同社の時価総額は約56.2億円(2026年8月24日終値557円)です。
ここは書き分けが必要な部分です。上記はあくまで制度側の事実と、現時点の時価総額という事実であり、本記事の調査時点で、同社が「上場維持基準の適合に向けた計画書」等を開示した事実は見当たりませんでした(第16期有価証券報告書にも「上場維持基準」への言及はありません)。制度の存在から会社の見通しを断定することはできません。転職検討者としては、今後のIR開示でこのテーマにどう言及するかを継続的に見ておくのが現実的な対応です。
参考として、株主構成は親会社・支配株主が存在しない独立系です。2025年12月31日現在の上位はSBI証券535,100株(5.56%)、代表取締役の秋枝静香氏511,200株(5.31%)、SBI Ventures Two 462,700株(4.81%)、取締役CFOの三條真弘氏383,900株(3.99%)と続き、事業会社ではPHC株式会社185,100株(1.92%)、福岡地所株式会社175,200株(1.82%)が名を連ねます。上位10位合計は33.49%です。
再生医療・創薬ベンチャー5社の比較|サイフューズの立ち位置
サイフューズを単体で見ても水準感はつかめません。同じ東証グロースの研究開発型バイオベンチャー4社と、有価証券報告書ベースの数値で並べます。公式情報ですが、決算期が各社で異なるため必ず年度とセットで読んでください(クオリプスのみ3月期、他4社は12月期)。
| 企業名(コード) | 対象決算期 | 売上高・事業収益 | 営業損益 | 従業員数 | 有報の平均年間給与 |
|---|---|---|---|---|---|
| サイフューズ(4892) | 2025年12月期 | 2.31億円(前期比+324.3%) | 営業損失8.28億円 | 23名 | 約935万円 |
| クオリプス(4894) | 2026年3月期 | 2.12億円 | 営業損失10.81億円 | 51名(連結) | 約621万円 |
| ケイファーマ(4896) | 2025年12月期 | 売上ゼロ(2期連続) | 営業損失9.16億円 | 20名 | 約909.1万円 |
| Veritas In Silico(130A) | 2025年12月期 | 事業収益0.91億円 | 営業損失3.96億円 | 19名 | 約837.4万円 |
| ノイルイミューン・バイオテック(4893) | 2025年12月期 | 事業収益500万円 | 営業損失7.97億円 | 23名 | 約707.5万円 |
この表から読み取れることは3つあります。
- 年収はこの5社で最も高い:935万円は5社中トップです。ただし母数23名という条件は他社も似ており、唯一母数50名超のクオリプス(51名・621万円)だけが数値の信頼性で一段上にあります。少人数企業の平均給与は横比較の材料として弱いと理解してください(推定情報)。
- 売上を計上できている点は相対的な強み:ケイファーマは2期連続で売上ゼロ、ノイルイミューンは事業収益500万円です。サイフューズはバイオ3Dプリンタと3D細胞製品という「売れる商材」を持っており、金額は小さくとも継続的な収益源がある点は構造的な違いです。
- 赤字幅は中位:営業損失8.28億円は5社の中で中位。研究開発投資の規模と手元資金のバランスは、各社の自己資本比率と併せて見る必要があります。
加えてサイフューズには、この5社にない特徴が1つあります。東証グロースと福岡証券取引所Q-Boardの両方に上場していることです。有価証券報告書の【縦覧に供する場所】に東証(東京都中央区日本橋兜町)と福証(福岡市中央区天神)の両方が記載されており、2025年12月に福証へ重複上場しました。福岡ラボの存在、株主である福岡地所との関係を含め、九州との結び付きが会社の輪郭に組み込まれています。なお再生医療関連には受託加工などで収益化している企業(セルソースなど)も存在し、同じ「再生医療」でもビジネスモデルはまったく異なります。応募先を検討する際は、業界名ではなく収益構造で比較してください。
サイフューズへの転職が向いている人・向いていない人
ここまでの公式情報・口コミ状況をふまえ、適性を整理します(推定情報を含みます)。判断のポイントは「23名という規模を強みと感じるか、不安と感じるか」に集約されます。
| 向いている人 | 向いていない人 |
|---|---|
| 再生医療・細胞加工・組織工学の専門性を、承認前の段階から積み上げたい人 | 承認済み製品の販売や量産フェーズに関わりたい人(同社に承認済み製品はまだありません) |
| 大学(京大・佐賀大・慶應・広島大など)との共同研究や医師主導治験の現場に立ちたい人 | 役割分担が明確な大企業型の組織で、自分の専門領域に集中したい人 |
| 研究と並行して、契約・知財・IR・アライアンスなど専門外の業務も引き受けられる人 | 体系化された研修制度・明確な昇進ルートを重視する人(1部門4〜7名の組織です) |
| 有価証券報告書を自分で読み、資金の残余年数まで確認したうえで納得して入社できる人 | 安定した業績と毎年の昇給を前提にライフプランを立てたい人 |
| 東京・港区三田または福岡市中央区で腰を据えて働ける人 | 全国転勤や多拠点でのキャリア形成を望む人(拠点は実質2か所です) |
バイオベンチャー全般で語られるキャリアパスとしては、共同研究の担当研究者からプロジェクトリーダーへ進む道、研究職から事業開発・知財・IR・経営企画へ横展開する道、そして製薬企業やCRO/CDMOの研究部門へ転じる道があります。サイフューズの場合、23名の組織で大企業アライアンスを回す経験は、推定情報ですが「技術が分かるビジネス人材」としての市場価値につながりやすいと考えられます。一方で、剣山メソッドという同社固有の技術に深く特化しすぎると、次の転職先で経験がそのまま評価される場面は限られる可能性もあります。汎用性のあるスキル(細胞培養、品質管理、薬事、治験実務など)を並行して積む意識が有効です。
サイフューズに関するよくある質問(FAQ)
サイフューズへの転職・就職を検討する人から想定される質問と、公開情報にもとづく回答をまとめました。
サイフューズの本社はどこですか。勤務地は何か所ありますか。
第16期有価証券報告書の表紙【本店の所在の場所】は東京都港区三田三丁目5番27号 住友不動産東京三田サウスタワーです。【最寄りの連絡場所】も同一で、登記上の本店と実際の業務場所が異なる旨の注記はありません。加えて福岡市中央区に「福岡ラボ」があり、拠点は実質2か所です。OpenWorkは旧本社の文京区本郷、irbankは「住友不動産三田ツインビル西館」と表示していますが、いずれも有価証券報告書とは一致しません(有報が正しい情報です)。
サイフューズの平均年収は本当に935万円ですか。
第16期有価証券報告書「従業員の状況」に記載された平均年間給与は9,351千円(約935万円)で、賞与および基準外賃金を含む実額です。ただし対象は従業員23名(臨時従業員3名は外数)、平均年齢42.8歳で、研究者やCFOクラスの高度専門人材に偏った構成です。推定情報として、この数値は上位職に強く引っ張られており、一般社員の相場としてそのまま当てはめるのは適切ではありません。実際の提示額は個別のオファーで確認してください。
口コミがほとんど無いのはなぜですか。
OpenWork・エン カイシャの評判・キャリコネはいずれも口コミ0件、転職会議も2件(面接・選考カテゴリのみ)です。推定情報として、在籍23名・平均勤続5.8年で退職者が少なく、部署ごとの人数も4〜7名のため匿名性が保ちにくく、投稿が物理的に集まりにくい構造と考えられます。口コミの少なさそのものが会社の評価を意味するわけではありません。
サイフューズは東証と福証の両方に上場しているのですか。
はい。2022年12月1日に東京証券取引所グロース市場へ上場し、2025年12月に福岡証券取引所Q-Boardへ重複上場しています。有価証券報告書の【縦覧に供する場所】に東証(東京都中央区日本橋兜町)と福証(福岡市中央区天神)の両方が記載されています。福岡ラボの設置や株主に福岡地所が名を連ねることを含め、九州との縁が深い会社です。
サイフューズの求人・中途採用はどのような職種がありますか。
採用情報は公式サイトの採用ページで公開されています。組織構成は研究開発部6名・システム開発部4名・事業推進部6名・経営管理部7名で、募集は各部門の欠員・増員に応じた中途採用が中心と考えられます(推定情報)。従業員数は第15期21名から第16期23名へ増えていますが、大量採用は行われていません。応募前に、配属部門・裁量範囲・兼務の有無を具体的に確認しておくことをおすすめします。
サイフューズの製品はすでに承認されているのですか。
いいえ。第16期(2025年12月期)時点で、製造販売承認を取得した再生医療等製品はありません。現在の売上は、バイオ3Dプリンタ「regenova®」「S-PIKE®」と消耗品、創薬支援用の「ヒト3Dミニ肝臓®」、受託研究や提携に伴う収入が中心です。末梢神経再生の細胞製神経導管は京都大学医学部附属病院での医師主導治験が2023年6月に完了し、企業治験の準備段階にあります。
サイフューズへの転職判断まとめ|編集部の見解
ここまでの内容を判断軸ごとに整理します。最終的な判断は、求人票と労働条件通知書、そして公式IRの最新開示を必ず併せて確認したうえで行ってください。
| 判断軸 | 評価(公式情報にもとづく整理) |
|---|---|
| 年収水準 | 有報の平均年間給与935万円は同業5社中トップ。ただし母数23名・平均年齢42.8歳で高度専門人材に偏る。二次サイトの450万円表示とは倍以上の乖離があり、個別確認が必須 |
| 働き方・勤務地 | 本社は東京都港区三田、ほかに福岡ラボ。1部門4〜7名で兼務が想定される。『まほろばプロジェクト』等の制度はあるが取得実績の数値は有報未開示 |
| 財務の安定性 | 営業損失8.28億円・16期でほぼ一貫して赤字だが、GC注記はなく自己資本比率62.3%・純資産27.6億円。債務超過ではない |
| 事業の進捗 | 承認済みの再生医療等製品はまだ無い。医師主導治験は完了・企業治験準備段階まで進む一方、上場時調達資金の充当期限は2028年12月期まで延長 |
| 構造的な論点 | MSワラント等による希薄化(潜在株式5.01%+SO5.35%)と、東証グロースの上場維持基準見直し(制度側の事実)を継続的に確認する必要がある |
| 情報の得やすさ | 主要口コミサイトは実質ゼロ件。判断材料は有価証券報告書・決算資料・公式IRに限られる |
編集部の見解として、サイフューズは「安定した上場企業に転職したい人」向けの会社ではありません。一方で、再生医療という長期テーマに、承認前の段階から23名の一員として関わりたい人にとっては、ほかで得がたい経験が積める環境だと考えられます。判断を分けるのは待遇の絶対額ではなく、「製品の上市が数年単位で後ろにずれても納得して働き続けられるか」という時間軸の相性です。
そのうえで、応募前に自分で確認しておきたいのは次の3点です。第一に、直近の四半期開示で資金の状況と赤字幅の推移を確認すること。第二に、配属予定部門の人数と兼務範囲を面接で具体的に聞くこと。第三に、平均935万円ではなく自分に提示される条件を書面で押さえること。口コミが無い会社ほど、一次情報を自分で読む力が意思決定の質を決めます。この記事の数字は、そのための出発点として使ってください。

結局、応募していい会社なのかどうかが知りたいです。
その問いに一律の答えはありません。ただ、判断に必要な材料はほぼすべて有価証券報告書に開示されている会社です。迷いが残るなら、自分の経歴と照らして第三者に整理してもらうのが最短です。
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本記事の出典・参考情報
本記事で参照した一次情報・口コミ情報の出典は以下の通りです。最新の正確な数値は各リンク先で確認してください。中核データはすべて第16期(2025年12月期)有価証券報告書の実額です。
公式情報源
口コミ・評判の参照元
免責事項:本記事の数値・評価は公式情報・口コミ集計・市場推定の3分類で示しており、口コミ傾向や推定情報は断定ではなく傾向・可能性として表現しています。株価・時価総額および同業他社の一部数値は二次情報にもとづく参考値です。最終判断は読者自身で公式IRおよび内定時の労働条件通知書で確認してください。
この記事の編集方針・情報の確認について
この記事は、公式公開情報(有価証券報告書・IR資料)、求人情報、口コミ傾向をそれぞれ分けて整理し、転職・就職判断に役立つよう編集しています。年収・平均年齢・平均勤続年数・従業員数などの中核データは第16期有価証券報告書「従業員の状況」を一次情報として確認し、口コミ・推定情報とは明確に区別しています。出典を特定できないネット上の書き込みや匿名掲示板の内容は、評判として引用していません。記載内容は最終更新時点の公開情報にもとづきます。最新の正確な数値は各公式IRページでご確認ください。
